- 著者
-
馬場 千恵
村山 洋史
田口 敦子
村嶋 幸代
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.12, pp.727-737, 2013 (Released:2014-01-15)
- 参考文献数
- 33
目的 社会とのつながりの欠如から孤独感を持ちやすい状況にある育児中の母親へ効果的な支援を行うため,ソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートの状況を把握し,それらと孤独感との関連を明らかにする。方法 2008年 8~11月に,東京都 A 区の 4 つの保健センターで行われた 3~4 か月児健康診査に来所した母親978人を対象に,無記名自記式質問紙を配布した。調査項目は,改訂版 UCLA 孤独感尺度,母親と子どもの基本属性,育児環境,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無,およびそれらとのソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートであった。接触頻度は,直接会うこととそれ以外に分けて測定した。分析は,まず,孤独感尺度を従属変数とし,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無を独立変数とした重回帰分析を行った。次に,孤独感と夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人との接触頻度とソーシャルサポートとの関連を検討するため,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析を行った。接触相手やサポート提供者等がなく欠損値があった者は分析から除外されたが,ママ友達がいない者の分析は追加し,副解析として重回帰分析を行った。結果 配布した963票のうち432票を回収し,417票を有効回答とした(有効回答率43.3%)。母親の孤独感の平均得点は34.4±9.0点であった。重回帰分析の結果,ママ友達および友人がいない者ほど,孤独感得点が高かった。すべての接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達もいる者)は,夫(パートナー)との会話時間が長いほど,ママ友達,友人との会う頻度が少ないほど,また,実父母やママ友達,友人からのソーシャルサポートが低いほど,孤独感得点が高かった。一方,ママ友達以外の接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達がいない者)では,孤独感得点と接触頻度,ソーシャルサポートとの関連はなく,対人態度や母親意識が関連していた。結論 母親の孤独感の予防•軽減には,ママ友達や友人の有無,実父母•ママ友達•友人との関係,対人態度,母親意識等をアセスメントし,その上で,母親役割の肯定感を高められるような介入や,ママ友達•友人と直接会う機会および実父母•ママ友達•友人からソーシャルサポートを得られるような働きかけを行うことが重要であると考えられた。