著者
馬場 千恵 村山 洋史 田口 敦子 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.727-737, 2013 (Released:2014-01-15)
参考文献数
33

目的 社会とのつながりの欠如から孤独感を持ちやすい状況にある育児中の母親へ効果的な支援を行うため,ソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートの状況を把握し,それらと孤独感との関連を明らかにする。方法 2008年 8~11月に,東京都 A 区の 4 つの保健センターで行われた 3~4 か月児健康診査に来所した母親978人を対象に,無記名自記式質問紙を配布した。調査項目は,改訂版 UCLA 孤独感尺度,母親と子どもの基本属性,育児環境,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無,およびそれらとのソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートであった。接触頻度は,直接会うこととそれ以外に分けて測定した。分析は,まず,孤独感尺度を従属変数とし,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無を独立変数とした重回帰分析を行った。次に,孤独感と夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人との接触頻度とソーシャルサポートとの関連を検討するため,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析を行った。接触相手やサポート提供者等がなく欠損値があった者は分析から除外されたが,ママ友達がいない者の分析は追加し,副解析として重回帰分析を行った。結果 配布した963票のうち432票を回収し,417票を有効回答とした(有効回答率43.3%)。母親の孤独感の平均得点は34.4±9.0点であった。重回帰分析の結果,ママ友達および友人がいない者ほど,孤独感得点が高かった。すべての接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達もいる者)は,夫(パートナー)との会話時間が長いほど,ママ友達,友人との会う頻度が少ないほど,また,実父母やママ友達,友人からのソーシャルサポートが低いほど,孤独感得点が高かった。一方,ママ友達以外の接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達がいない者)では,孤独感得点と接触頻度,ソーシャルサポートとの関連はなく,対人態度や母親意識が関連していた。結論 母親の孤独感の予防•軽減には,ママ友達や友人の有無,実父母•ママ友達•友人との関係,対人態度,母親意識等をアセスメントし,その上で,母親役割の肯定感を高められるような介入や,ママ友達•友人と直接会う機会および実父母•ママ友達•友人からソーシャルサポートを得られるような働きかけを行うことが重要であると考えられた。
著者
峰松 恵里 赤星 琴美 村嶋 幸代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.334-343, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:運転免許の自主返納者を対象に,返納理由や現在の外出状況と車の代替手段,健康状態,車のない生活の受け止めを明らかにする.方法:公共交通の少ない地域に居住する75歳以上の返納者13名に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.結果:免許返納理由は,《認知症・認知機能低下》,《身体機能低下》,《事故予防》の3タイプにわけられた.車の代替手段は,〈買い物〉〈通院〉は確保されていたが,〈農業〉〈娯楽〉〈交友〉では,確保できない者もいた.車のない生活を受け入れて満足している者もいれば,身体機能低下や閉じこもりという健康課題が生じた者もいた.結論:解決策として,個人レジリエンスを高めるためには,〈農業〉への移動手段として限定条件付免許の導入等が必要だと考えられる.また地域レジリエンス強化の観点から,移動支援サービス等の在り方を検討する必要があろう.
著者
草間 朋子 村嶋 幸代 真田 弘美 深井 照美
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.468-477, 2015-08-15

診療看護師としての活動の成果 草間(司会) 2025年に向けて,いま,医療制度が大きく変わりつつあります。その中で,昨年6月に「医療介護総合確保推進法」が通りまして,その一環として保助看法も昭和23年に制定されて以来初めて看護師の業務に踏み込んだ改正が行なわれました。「特定行為に係る看護師の研修制度」として法制化されたことで,診療看護師(NP)に関連するいままでの私たちの取り組みがようやく認められつつあることを実感しています。 診療看護師は,医療界にとって大きな課題である2025年問題の解決に向けての重要なキーパーソンになると考えています。現在,診療看護師を養成する大学院は全国で7校あり,修了生は2015年3月現在で200人を超えており,素晴らしい活躍をされています。制度の施行は本年10月からですが,制度化に至るまでの間,厚生労働省が平成23年に養成試行事業,24年に業務試行事業という2つのモデル事業を立ち上げました。モデル事業を通して,診療看護師の実績が出てきているところかと思います。診療看護師をさらに定着させ進化させていくには,これからしっかりエビデンスを創出し,公表していくことが大変重要だと思います。そのためにも,わかりやすく納得が得られるアウトカムを形で残し,それを基盤に学問として成長させていく必要があります。本日はそのあたりを中心に議論したいと思います。
著者
島村 珠枝 田口 敦子 小林 小百合 永田 智子 櫛原 良枝 永田 容子 小林 典子 村嶋 幸代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_3-2_12, 2010-06-21 (Released:2011-08-15)
参考文献数
32
被引用文献数
2

目的:多剤耐性結核の治療のため隔離入院中の患者が病気をどのように受けとめ,どのようなことを感じながら入院生活を送っているかを明らかにする.方法:入院中の多剤耐性結核患者5名に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析した.結果:病気について,全員が『治りにくい病気に罹った』と捉えた上で,『治るだろう』と受けとめている者,『治らないだろう』と考える者の両者が存在した.ほとんどの協力者が『先が見えない』と感じており,長期入院と隔離に大きなストレスを感じていた.入院生活について,全員が『楽しいことはほとんどない』と感じていた.『人に会えないのが寂しい』と閉塞感を訴え,『外とのやり取りで気が紛れる』と入院生活の辛さを紛らわせていた.『看護師との日常的な会話が楽しみ』と話す者もいた.結論:看護師は日常的に患者と関わる中で患者と外との接点になり得るため,日常的なコミュニケーション場面での配慮が求められている.
著者
馬場 千恵 村山 洋史 田口 敦子 村嶋 幸代
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.727-737, 2013

<b>目的</b> 社会とのつながりの欠如から孤独感を持ちやすい状況にある育児中の母親へ効果的な支援を行うため,ソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートの状況を把握し,それらと孤独感との関連を明らかにする。<br/><b>方法</b> 2008年 8~11月に,東京都 A 区の 4 つの保健センターで行われた 3~4 か月児健康診査に来所した母親978人を対象に,無記名自記式質問紙を配布した。調査項目は,改訂版 UCLA 孤独感尺度,母親と子どもの基本属性,育児環境,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無,およびそれらとのソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートであった。接触頻度は,直接会うこととそれ以外に分けて測定した。分析は,まず,孤独感尺度を従属変数とし,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無を独立変数とした重回帰分析を行った。次に,孤独感と夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人との接触頻度とソーシャルサポートとの関連を検討するため,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析を行った。接触相手やサポート提供者等がなく欠損値があった者は分析から除外されたが,ママ友達がいない者の分析は追加し,副解析として重回帰分析を行った。<br/><b>結果</b> 配布した963票のうち432票を回収し,417票を有効回答とした(有効回答率43.3%)。母親の孤独感の平均得点は34.4±9.0点であった。重回帰分析の結果,ママ友達および友人がいない者ほど,孤独感得点が高かった。すべての接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達もいる者)は,夫(パートナー)との会話時間が長いほど,ママ友達,友人との会う頻度が少ないほど,また,実父母やママ友達,友人からのソーシャルサポートが低いほど,孤独感得点が高かった。一方,ママ友達以外の接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達がいない者)では,孤独感得点と接触頻度,ソーシャルサポートとの関連はなく,対人態度や母親意識が関連していた。<br/><b>結論</b> 母親の孤独感の予防•軽減には,ママ友達や友人の有無,実父母•ママ友達•友人との関係,対人態度,母親意識等をアセスメントし,その上で,母親役割の肯定感を高められるような介入や,ママ友達•友人と直接会う機会および実父母•ママ友達•友人からソーシャルサポートを得られるような働きかけを行うことが重要であると考えられた。
著者
江川 優子 麻原 きよみ 大森 純子 奥田 博子 嶋津 多恵子 曽根 智史 田宮 菜奈子 戸矢崎 悦子 成瀬 昂 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.677-689, 2023-10-15 (Released:2023-10-28)
参考文献数
22

目的 日本公衆衛生学会に設置された「平成29/30年度公衆衛生看護のあり方に関する委員会」では,公衆衛生および公衆衛生看護教育の実践と研究のための基礎資料を提供することを目的として,公衆衛生および公衆衛生看護のコンピテンシーの明確化を試みた。方法 米国の公衆衛生専門家のコアコンピテンシーおよび公衆衛生看護におけるコンピテンシーを翻訳し,共通点と相違点を検討した。次に,米国の公衆衛生看護のコンピテンシーと日本の公衆衛生看護(保健師)の能力指標の共通点と相違点を検討し,公衆衛生および公衆衛生看護のコンピテンシーの明確化に取り組んだ。結果 公衆衛生と公衆衛生看護のコンピテンシーには,集団を対象とし,集団の健康問題を見出し,健康課題を設定し働きかけるという共通点がみられた。しかし,集団の捉え方,健康問題の捉え方と健康課題設定の視点,集団における個人の位置づけに相違があった。公衆衛生では,境界が明確な地理的区域や民族・種族を構成する人口全体を対象とし,人口全体としての健康問題を見出し,健康課題を設定しトップダウンで働きかけるという特徴があった。また,個人は集団の一構成員として位置づけられていた。一方,公衆衛生看護では,対象は,個人・家族を起点にグループ・コミュニティ,社会集団へと連続的かつ重層的に広がるものであった。個人・家族の健康問題を,それらを包含するグループ・コミュニティ,社会集団の特性と関連付け,社会集団共通の健康問題として見出し,社会集団全体の変容を志向した健康課題を設定し取り組むという特徴があった。日米の公衆衛生看護のコンピテンシーは,ともに公衆衛生を基盤とし公衆衛生の目的達成を目指して構築されており,概ね共通していた。しかし,米国では,公衆衛生専門家のコアコンピテンシーと整合性を持って構築され,情報収集能力,アセスメント能力,文化的能力など,日本では独立した能力として取り上げられていない能力が示され,詳細が言語化されていた。結論 公衆衛生の目的達成に向けたより実効性のある公衆衛生・公衆衛生看護実践を担う人材育成への貢献を目指し,日本の公衆衛生従事者の共通能力が明確化される必要がある。また,公衆衛生看護では,これまで独立した能力として言語化されてこなかった能力を一つの独立した能力として示し,これらを構成する詳細な技術や行為を洗い出し,言語化していく取り組みの可能性も示された。
著者
大森 純子 梅田 麻希 麻原 きよみ 井口 理 蔭山 正子 小西 美香子 渡井 いずみ 田宮 菜奈子 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.121-128, 2019-03-15 (Released:2019-03-26)
参考文献数
48
被引用文献数
1

目的 日本公衆衛生学会に設置された「公衆衛生看護のあり方に関する委員会(第6期)」では,「実践で活用できる」コミュニティ・アセスメントの新しいモデルを考案した。本モデルを公衆衛生活動に適用可能な「活動展開技法モデル」(以下,モデル)と位置づけることにより,保健師が経験的に蓄積してきた実践手法の理論化とその手法の共有を試みた。方法 平成26年10月から平成29年9月の3年間に7回の委員会を開催し,以下の4つのステップに沿ってモデルの検討と検証を行った。ステップ1では,コミュニティ・アセスメントの定義や手法についてブレーンストーミングを行いながら,文献検討の枠組みを検討した。ステップ2の文献検討では,コミュニティ・アセスメントに関する既存の理論や知見,実践に関する情報を収集・整理した。次のステップでは,これらの情報と委員会メンバーの実践経験を照らし合わせながら,モデルを作成した。最後のステップでは,作成したモデルの汎用性を行政および産業における保健師に参照して,本モデルの公衆衛生活動への適用について検証した。活動内容 本委員会では,コミュニティ・アセスメントを「QOLの向上をめざすすべての活動場面においてPDCAサイクルを駆動するために用いる実践科学の展開技法」と定義し,包括的または戦略的な意図により,2つに類型化した。作成したモデルでは,コミュニティ・アセスメントは,あらゆる公衆衛生活動のPDCAサイクルにおいて継続的かつ発展的に実施されていること,地域住民の「QOLの向上」を志向して行われていることを示した。また,アセスメントを行う者の経験的科学的直観と倫理的感受性がコミュニティ・アセスメントの質を左右する要因であることを示した。結論 本委員会が保健師の実践に沿って作成した活動展開技法モデル「コミュニティ・アセスメント」は,公衆衛生活動における事業や地区活動など多様な実践に適応できる可能性があることが示唆された。
著者
渡井 いずみ 錦戸 典子 村嶋 幸代
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.71-81, 2006 (Released:2006-06-27)
参考文献数
32
被引用文献数
24 14

ワーク・ファ-リー・コンフリクト尺度(Work Family Conflict Scale: WFCS)日本語版の開発と検討:渡井いずみほか.東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻地域看護学分野―本研究の目的は,多次元的ワーク・ファ-リー・コンフリクト尺度(Work-Family Conflict Scale: WFCS)の日本語版を作成し,信頼性と妥当性を検討することである.原版の18項目WFCS(Carlsonら,2000)は,時間に基づく仕事から家庭への葛藤(WIF),および時間に基づく家庭から仕事への葛藤(FIW),ストレス反応に基づくWIF,およびストレス反応に基づくFIW,行動に基づくWIF,および行動に基づくFIWの6次元の葛藤尺度で構成される.英語版のオリジナル尺度から,英語を母国語とする研究者を含む研究者数名による順翻訳,逆翻訳,及び原著者の承認の手順を経て,日本語WFC尺度を作成した.従業員数が301人以上の民間IT企業24社に勤務する正社員のうち,就学前の子供を持つ情報処理技術者(ITエンジニア)180名を対象に,WFCSを含む自記式質問紙調査を配布した.また,それとは別に,保育所に子供を預けている両親34名を対象に再テストを行った.その結果,6つの下位尺度のCronbach'のa係数は0.77~0.92と充分に高い内的一貫性を示した.また,行動に基づくWIFとFIW間の内部相関係数は0.60を超えていたが,おおむね各下位尺度間の弁別的妥当性は示された.さらに,5つのモデルについて確証的因子分析を比較したところ,6つの下位尺度を持つモデルが最も高い適合度を示し(chi-square=231.82,df=129,CFI=0.95,AIC=315.82,RMSEA=0.07),オリジナル尺度と同じ構成概念妥当性を保持することが示された.また,再テスト信頼性を示す各項目の重みつきk係数,6つの下位尺度の級内相関係数は,いずれも適度な再現性を示した.これらの結果より,WFCS日本語版は,日本人労働者における仕事と家庭の葛藤を評価する上で信頼性と妥当性を有する尺度であることが示唆された.(産衛誌2006; 48: 71-81)
著者
有本 梓 横山 由美 西垣 佳織 臺 有桂 馬場 千恵 新井 志穂 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.43-52, 2012-03-31 (Released:2017-04-20)
被引用文献数
5

目的:訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点を明らかにする.方法:重症児のみを対象とするA訪問看護ステーションの訪問看護師6人を対象に,2007年9月にグループ面接を行った.質的記述的分析を参考に,訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点についてコード化し,類似したコードをまとめてサブカテゴリーを,類似したサブカテゴリーをまとめてカテゴリーを作成した.結果:訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点は,支援するうえで重要ととらえている情報と支援姿勢に二分された.重要ととらえている情報は,【母親のケア能力】【母親による子の受け止め方】【母親の性格】【母親の心理状態】【母親の身体状態】【子の身体的状況】【子の能力】【在宅療養への家族のサポート体制】【家族の訪問看護に対する気持ち】【母親と訪問看護師との関係】からなっていた.訪問看護の支援姿勢として,【母親のペースに合わせて段階的にかかわる】【子と家族の生活のなかで子育てを共有する】【長期的なケアを見込み母親と社会をつなぐ】が明らかになった.結論:在宅重症児への訪問看護では,(1)母親の心理状態や生活状態の理解,(2)子や家族の状況に応じた母親のケア能力と家族のサポート体制の強化,(3)母親のペースでの関係構築,(4)長期的視点での関係機関と母親との関係構築が重要と考えられた.
著者
錦戸 典子 田口 敦子 麻原 きよみ 安斎 由貴子 蔭山 正子 都筑 千景 永田 智子 有本 梓 松坂 由香里 武内 奈緒子 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.46-52, 2005-09-15 (Released:2017-04-20)
被引用文献数
3

保健師の用いる支援技術として,グループを対象とした支援は日常的に用いられており,重要な支援技術であると言える.先行研究として,いくつかの質的研究や活動報告などがみられるものの,保健師によるグループ支援に共通の枠組みや具体的な支援技術については十分に明らかにされていない.本研究では,保健師によるグループ支援技術を体系的に整理するための端緒として,保健師によるグループ支援の方向性と特徴を明らかにすることを目的に,既存文献からの知見の統合,ならびにグループ支援に関する概念枠組みの検討を試みた.システマティックレビューに基づいて17文献を選択し,それぞれの文献中に記載されている保健師によるグループ支援の具体的な働きかけを表しているフレーズを抽出した.それらを統合し,さらに抽象度を上げて分析した結果,「グループの形成支援」,「グループの主体性獲得の支援」,「グループ活動の地域への発展の支援」の3つのカテゴリーが,保健師によるグループ支援の方向性として抽出された.このうち,主体性獲得の支援,ならびに,地域への発展の支援に関しては,保健師活動におけるグループ支援に特徴的な支援の方向性であると考えられた.保健師は,グループ支援活動を地域ニーズの中で捉え,地域全体のエンパワメントの視点で関わっている可能性が示唆された.
著者
阪井 万裕 成瀬 昂 渡井 いずみ 有本 梓 村嶋 幸代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_71-4_78, 2012-12-20 (Released:2013-01-09)
参考文献数
34
被引用文献数
1 2

目的:看護師のワーク・エンゲージメント(以下,WE)に関する研究の方法論を包括的に整理し,今後の研究の方向性について示唆を得ることを目的とする.方法:CINAHL, MEDLINE, PubMed, PsycINFO,医学中央雑誌を用いて,nurse, engagement, work engagement,看護師,エンゲージメント,ワーク・エンゲージメントの用語で検索した.2004~2011年11月までに発表された20文献を対象とした.結果:調査対象は病院勤務の看護職が大半であった.また,さまざまな病院・部署を同時に扱うことによる影響が考えられ,方法論上の課題が明らかとなった.WEの測定尺度は4つあり,近年はJob Demands–Resources modelを概念枠組みとしたUtrecht Work Engagement Scaleを用いた研究が多かった.看護師のWEの向上は,看護師の身体症状・うつ症状の軽減に限らず,組織の効率性やケアの質の向上にも寄与することが明らかとなった.結論:今後は,所属機関や部署ごとの特性を考慮した変数設定や解析方法を取り入れること,看護師のWEの向上を視野に入れた具体的な実践や介入が及ぼす効果を科学的に検証することの必要性が示唆された.
著者
チェ ジョンヒョン 村嶋 幸代 堀井 とよみ 服部 真理子 永田 智子 麻原 きよみ
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.948-958, 2002-09-15
被引用文献数
4

<b>目的</b> 在宅ケアサービスの利用に関する従来の研究では,複数のサービスを一括して扱うことが多かった。本研究では,訪問看護と介護サービスについて,各々の利用者の特徴を明らかにすることを目的とした。<br/><b>方法</b> 人口36,000人の S 県 M 町における平成 9 年10月 1 日時点の訪問指導台帳より抽出した調査対象高齢者134人に対し,質問紙を用いた面接調査を行った。訪問看護,ホームヘルプの利用に関して,①利用の有無,および,② Andersen のモデルの 3 要因(属性要因,ニーズ要因,サービス利用促進/阻害要因)との関連性を明らかにした。<br/><b>結果および考察</b> 134人中,訪問看護は38.1%,ホームヘルプは36.6%の人が利用していた。<br/> 訪問看護は,高齢者の ADL が低下しているほど,過去 2 年間の入院経験があるほど家族の世話の仕方が少ないほど,介護者のサービス利用への抵抗感が少ないほど利用しており,ニーズ要因が最も影響していた。<br/> ホームヘルプは,家族の世話の仕方が少ないほど,訪問看護を利用しているほど,利用しており,属性要因と利用促進/阻害要因が影響していた。<br/> 訪問看護とホームヘルプの両方の利用者は,看護のみの利用者に比べて,家族がケアを提供するのが難しく,また,ヘルパーのみの利用者に比べて利用者の ADL 等身体状態が低い。<br/><b>結論</b> 訪問看護とホームヘルプの利用を推進する要因は異なっており,両者を併せて利用している者は,複合的ニーズを持っているという特徴が認められた。
著者
村嶋 幸代
出版者
大分県立看護科学大学看護研究交流センター
雑誌
看護科学研究 (ISSN:24240052)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.49-56, 2020 (Released:2020-12-07)

1998 年に開学した大分県立看護科学大学は、2018 年に創立20周年を迎えることができた。この間、1,393人の学部卒業生、172人の修士、18人の博士課程修了生が本学を巣立ち、活躍している。大分県の進取の気性に富む風土の中で、本学は世界を見据えて看護の科学を追求し、人材を育んできた。この20年間で、現在の教育体系(学士課程は看護師(全員)と養護教諭1種(選択)、大学院看護学研究科修士課程看護学専攻実践者コースに、NP、広域看護学(保健師)、助産学、看護管理・リカレントの4コースと、研究者コースと博士課程)を作り、学士課程では予防的家庭訪問実習等、地域志向の教育を作り上げてきた。また、大分県・大分県看護協会と一緒に、中小規模病院看護管理者支援事業等を実施してきた。本学が今後取るべき道は、看護を通して大分県全体の活性化に尽力することであろう。本学を創設し、導き、支えてくださった多くの方々に感謝し、新しい一歩を踏み出したい。
著者
岡本 玲子 岩本 里織 西田 真寿美 小出 恵子 生田 由加利 田中 美帆 野村 美千江 城島 哲子 酒井 陽子 草野 恵美子 野村(齋藤) 美紀 鈴木 るり子 岸 恵美子 寺本 千恵 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.47-56, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24

【目的】本研究の目的は,東日本大震災で津波災害を受けた自治体の職員が,震災半年後に印象に残ったこととして自発的に語った遺体対応業務とそれに対する思いを質的記述的に解釈することである.【方法】対象は一自治体の職員23名であり,個別面接により被災直後からの状況と印象に残ったことについて聴取した.【結果】自治体職員として行った有事の業務に関する262のデータセットのうち遺体対応に関するものはわずか21であった.遺体対応業務には,震災後,直後からの遺体搬送,約2か月間の遺体安置所,約3か月間の埋火葬に係る業務があった.それぞれの業務に対する職員の思いは,順に,「思い出せない,どうしようもない」,「精神的にやられた,つらい」,「機能マヒによる困惑」が挙がった.【考察】避難所と物資の業務については,創意工夫や今後の展望などが具体的に語られたのに比べ,遺体対応については非常に断片的であり,話すことにためらいが見られた.遺体対応業務は通常業務とは全く異質なものであり,準備性もないまま遂行した過酷なものであった.我々は有事に起こるこのような状況について理解し,今後に備える必要がある.
著者
岩本 里織 岡本 玲子 小出 恵子 西田 真寿美 生田 由加利 鈴木 るり子 野村 美千江 酒井 陽子 岸 恵美子 城島 哲子 草野 恵美子 齋藤 美紀 寺本 千恵 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.21-31, 2015

目的:本研究は,東日本大震災により被災した自治体における職員の身体的精神的な健康に影響を与える苦悩を生じる状況を明らかにすることを目的とした.<br/>研究方法:研究参加者は,東日本大震災で甚大な津波被害を受けたA町職員30名であり,半構成質問紙による個別面接調査を行った.調査内容は,被災後の業務で印象に残っている内容や出来事などである.分析は,研究参加者の語りから,身体的精神的健康に関連している内容を抽出しカテゴリ化した.<br/>結果:研究参加者の平均年齢は40.6歳,男性17人,女性13人であった.研究参加者の語りから2つのコアカテゴリ,9つのカテゴリ,19のサブカテゴリが抽出された.<br/>結論:被災した自治体職員は,自身も被災者であり家族など親しい人々の死にも直面し,職務においては,津波による役所建物などの物的喪失や同僚の死による人的喪失が重なり,業務遂行の負担が大きく,身体的精神的健康に影響を与えていることが考えられた.震災後の早期から職員の健康面への継続的な支援が必要である.
著者
成瀬 昂 有本 梓 渡井 いずみ 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.402-410, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的 少子化の進む日本では,健やか親子21などの政策により父親の育児参加が推奨されている。父親の育児参加に関する研究では仕事の影響を考慮する必要があるが,仕事と家庭における役割の関係性(スピルオーバー)が父親の育児参加にどのように影響するのかは,明確にされていない。本研究では,父親の育児参加を育児支援行動と定義して,その関連要因を検討し,父親の育児支援行動と役割間のポジティブスピルオーバーとの関連を明らかにすることを目的とした。方法 A 市内の公立保育園17園と私立保育園14園に通う,1,2 歳児クラスの父親880人を対象に,無記名自記式質問紙による留め置き・郵送調査を行った。父親・家庭・多重役割に関する変数を独立変数とし,「母親への情緒的支援行動」,「育児家事行動」を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。父親に関する要因,母親の職業を独立変数として投入した後(モデル 1),さらに仕事と家庭の両役割間のポジティブスピルオーバーを追加投入(モデル 2)した。結果 189人の有効回答を得た(有効回答率21.4%)。重回帰分析の結果,母親への情緒的支援行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,平等主義的性役割態度の高さが有意に関連していた。育児家事行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,母親が会社員・公務員であることが有意に関連していた。結論 父親の育児支援行動は,父親の持つ特性や経験などの背景要因よりも,仕事と家庭の両立におけるポジティブスピルオーバーとの関連性が強かった。また,ポジティブスピルオーバーが高いほど母親への情緒的支援行動,育児家事行動を行っていた。父親の育児支援行動を促進するための働きかけや政策を検討するためには,父親が仕事と家庭をどのように両立しているか,それによる影響を本人がどう捉えているかを考慮する必要性が示された。
著者
渡邉 裕美 村嶋 幸代 後藤 隆 田口 敦子 浅野 いずみ 辻 泰代
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究目的は24時間ケア医療と介護の包括支援体制の方向性を探ることである。実態を把握するために、大都市圏で夜間ケアに先駆的にとりくんでいるA自治体において全域調査を行なった。結果、要介護認定者数に対する夜間対応型訪問介護利用者の比率は圏域によって異なるものの、その割合は、0.25%~0.73%と1%にも満たなかった。定期訪問実人数は0人の事業所もあれば、28人に639回の事業所もあった。随時訪問利用回数は、4回の事業所もあれば、104回の事業所もあった。定期より随時が多く行われていた。コールを押しても訪問せずに電話対応のみという事業実態もあった。別のB自治体では、介護施設を拠点に24時間訪問介護と夜間対応型訪問介護が一体運営でとりくまれており事業所ヒアリングを行なった。24時間包括ケアの潜在利用者を病院から地域にもどすための退院支援のヒントをまとめた。2012年4月創設される「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を読み解き、研究成果をふまえた、医療と介護の包括支援体制をすすめるための方法論を示した。