著者
清田 雅史 米崎 史郎 香山 薫 馬場 徳寿
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.71-78, 2011 (Released:2011-07-27)
参考文献数
12

オットセイ(キタオットセイ,Callorhinus ursinus)の科学調査や漂着,混獲個体の適切な処置の際に必要とされる捕獲と取り扱いの方法を,陸上と海上に分けて解説する.陸上では,雌獣や小型の雄獣(体重70 kg未満)であれば,絞め縄のついた棒か大型のタモ網を用いて捕獲し,保定具を用いて物理的に不動化することができるが,大型の成獣雄の取り扱いには,化学的不動化法を用いざるを得ない.捕獲と保定の間は絶えず呼吸状態を確認することが大切である.また,繁殖島上でオットセイは密集した社会的な集団を形成するため,捕獲に際して上陸集団への撹乱を最小にし,動物と作業者の安全を確保し得る接近,捕獲,保定の方法を選ばなければならない.処置後の捕獲個体が他個体との社会的関係を維持できるよう,元の状態に安全に戻すことも重要である.一方海上では,摂餌域で流し刺網を使った生け捕りが可能である.日本国内ではオットセイの捕獲と所持は国内法により規制されており,調査のための捕獲を行うには,政府の許可を得る必要がある.
著者
清田 雅史 馬場 徳寿
出版者
遠洋水産研究所
雑誌
遠洋水産研究所研究報告 (ISSN:03867285)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.13-20, 2001-03

1991年から1999年の間米国アラスカ州セントポール島において,成獣雌キタオットセイの海洋廃棄物絡まりに関する調査を実施した。繁殖初期の7月初旬から8月初旬にかけて,繁殖コロニーにおいて異物絡まり雌と非絡まり雌の計数と絡まり異物の確認を行い,海岸に漂着した海洋廃棄物の種類と量を調べた。成獣雌キタオットセイの絡まり率は1991年と1994年に若干高かったが,1995年以降は0.01%前後で推移した。この9年間における成獣雌の平均絡まり率は0.013%,絡まりに由来する傷をもつ成獣雌の割合は0.029%であった。絡まり異物は,トロール魚網片,刺網片,ひも類,梱包用ポリプロピレンバンド,洗濯洗剤容器のプラスチック枠などで,そのうちトロール魚網片が最も多く49%を占めた。海岸漂着物では,近年トロール魚網片と梱包用ポリプロピレンバンドの割合が低下する一方ロープ類が増加しており,繁殖島周辺における漁業の動向に関連した組成変化が見られた。