著者
高 駿業 磯﨑 哲夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.61-71, 2021-07-30 (Released:2021-07-30)
参考文献数
37

本研究では,中国の後期中等教育における2017年版の科学系教科の課程標準,特に化学課程標準の変容を分析し,日本の学習指導要領と比較することを通して,中国の課程標準の特色を明らかにすることを目的とした。まず,中国における「核心素養」を中心とした後期中等教育の教育課程に関する改訂の経緯を素描した。次に,後期中等教育における科学教育課程に関する改訂を概観し,導入された科学系の「教科の核心素養」を分析し,履修形態の変容を明らかにした。そして,2003年版の化学課程標準と比較し,2017年版の課程標準を分析した。最後に,中国と日本の比較を通じて,中国後期中等科学教育の特色を考察した。その結果,次のことが明らかになった。まず,2017年版の化学課程標準では,化学の学習を通じた理想的な生徒像や達成すべき目標が明確にされ,化学の目標がより具体化・深化し,内容もより構造化された。そして,現実の世界における問題状況や文脈,実験や探究活動がより重視されていることが明らかになった。また,日本と比較すると,中国の後期中等科学教育では物理,化学,生物が教科として独立しており,化学教育において,化学と社会や技術との関わりの学習では,積極的に参加する態度といった主に情意的側面が重視され,課程標準には教師の指導上のヒントが多く示されているのが特徴的である,と結論づけた。