著者
志田 正訓 野添 生 磯﨑 哲夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.133-142, 2019-07-31 (Released:2019-08-29)
参考文献数
33
被引用文献数
2 3

本研究では,わが国の小学校理科カリキュラムに,新しい科学観を学習内容とする「科学の本質」を取り入れる際の具体的な手立てや示唆について明らかにすることを目的とした。まず,イギリスの先行研究から,「科学の本質」に関する検討を行い,本研究における「科学の本質」の概念を規定した。次に,その概念を踏まえ,イギリスのナショナル・カリキュラム科学に「科学の本質」が具体的にどのように取り入れられているのかを分析した。最後に,わが国の理科教育が抱える問題を踏まえ,「科学の本質」を導入するための具体的な手立てについて論究した。分析の結果,わが国の小学校理科に対して以下のような提案ができた。①西洋諸国とは異なる文脈を有するわが国の理科教育の性格を熟慮した上で,「科学の本質」に関する概念領域を明確に規定・分類し,カリキュラム編成においては,それらの異なる領域に合わせながら,記述の仕方に違いをもたせる必要があること。②わが国の小学生でも理解可能な科学者の業績を取り扱うといった科学史の視座に基づく新たな授業方略を導入することにより,「科学の本質」,とりわけ,社会的な営為としての科学(科学と社会との関係や科学・技術が発展してきた経緯)について,より深く学ぶことが期待できること。
著者
磯﨑 哲夫
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.246-257, 2017 (Released:2017-07-15)
参考文献数
63
被引用文献数
2

The school subject known as ‘chigaku’ (earth science) was established as one of the new scientific subjects in upper secondary schools in 1948. Since then, the numbers of students who took earth science has been lower than the other three scientific subjects, and that has been regarded as a serious issue for its value in science learning at every revision of the course of study. In this research, the author first investigates the arguments on the value of earth science education from the 1950s to the 1960s. Second, referring to the Osborne’s notion of the aims and objectives of science education, the author examines the aims and objectives of earth science education. Finally, the author argues to add ‘the pedagogical argument’ to the four arguments which Osborne proposed: utilitarian, cultural, economic, and democratic. The cultural, democratic, and pedagogical values of learning earth science should be emphasized for rethinking the aims and objective of earth science education.
著者
磯﨑 哲夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.267-278, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
65
被引用文献数
1 1

本小論は,理科カリキュラムの内容構成論について,比較教育史的アプローチに基づき知識論を援用しながら,19世紀から現在までの3つの時代区分により,日本とイギリスを比較しながら論じた。そして,誰が学習内容を決定し,何を基準として学習内容が選定されるかについて考察した。その結果,両国の科学(理科)教育の史的展開を比較すると,まず,科学(理科)教育を完成した所与のものと見なすのではなく,社会的・歴史的産物と見なすべきことを指摘した。重要なのは,目的・目標論,別の表現をすれば,理科教育を通してどのような資質・能力を備えた人間を形成するかという前提条件のもとで,学習内容(科学(そのもの)の)知識と科学についての知識)を選択し決定するべきであり,そのためには社会や学界を十分に巻き込んだ議論を踏まえて,目標や内容等を決定する“noosphere”における議論が必要である,ということである。理科は自然科学を基盤としている教科である,という分離教科カリキュラムや学問中心カリキュラムの定義を,グローバル化の視点と現代的文脈で再解釈する必要に迫られていることを指摘した。
著者
野添 生 磯﨑 哲夫 藤浪 圭悟
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 39 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.71-74, 2015 (Released:2018-08-03)
参考文献数
11

本研究は、近年のイギリス科学教育の動向に焦点を当て分析・検討を行い、「新しい知の創造」のための科学教育を可能にするイノベーティブ人材育成を意図した理科教育課程について討究した。その結果、理科カリキュラムには現状の専門分化の視点だけでなく、系統的な科学的知識を積み上げながら、知識がより融合化(統合化)されていく視点も重要な要素となること、また、HSW やSSI という考え方を取り入れた中等理科教育には、イノベーティブ人材育成の解決策となる可能性を確認できることが明らかとなった。
著者
高 駿業 磯﨑 哲夫
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.61-71, 2021-07-30 (Released:2021-07-30)
参考文献数
37

本研究では,中国の後期中等教育における2017年版の科学系教科の課程標準,特に化学課程標準の変容を分析し,日本の学習指導要領と比較することを通して,中国の課程標準の特色を明らかにすることを目的とした。まず,中国における「核心素養」を中心とした後期中等教育の教育課程に関する改訂の経緯を素描した。次に,後期中等教育における科学教育課程に関する改訂を概観し,導入された科学系の「教科の核心素養」を分析し,履修形態の変容を明らかにした。そして,2003年版の化学課程標準と比較し,2017年版の課程標準を分析した。最後に,中国と日本の比較を通じて,中国後期中等科学教育の特色を考察した。その結果,次のことが明らかになった。まず,2017年版の化学課程標準では,化学の学習を通じた理想的な生徒像や達成すべき目標が明確にされ,化学の目標がより具体化・深化し,内容もより構造化された。そして,現実の世界における問題状況や文脈,実験や探究活動がより重視されていることが明らかになった。また,日本と比較すると,中国の後期中等科学教育では物理,化学,生物が教科として独立しており,化学教育において,化学と社会や技術との関わりの学習では,積極的に参加する態度といった主に情意的側面が重視され,課程標準には教師の指導上のヒントが多く示されているのが特徴的である,と結論づけた。
著者
龍岡 寛幸 磯﨑 哲夫
出版者
広島大学附属東雲中学校
雑誌
中学教育 : 研究紀要 (ISSN:13441531)
巻号頁・発行日
no.47, pp.35-40, 2016-03-18

本研究の目的は,協働的問題解決を生起させる中学校理科の授業の特徴を見出すことである。そこで,「知識構成型ジグソー法」に着目して,その手法を用いた先行の授業実践の分析や文献調査によって検討して,「知識構成型ジグソー法」を用いた中学校理科授業の特徴を明らかにした。また,「知識構成型ジグソー法」を用いた授業をデザインして実践することで,その有用性を検証した。