著者
高口 倖暉
出版者
千葉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

当研究室が所有する実験住宅を活用し、室内の総揮発性有機化合物(TVOC)の挙動と温湿度や気流、浮遊粒子を同時に多点でリアルタイム測定することで化学物質の分布に寄与する環境要因を解明する。VOCs各成分の分布を調査し、化学物質の室内挙動に起因する物理化学特性(分子量・蒸気圧・密度・分配係数など)を特定する。得られた実測データを基に、計算流体力学を用いて高精度の化学物質の室内分布の予測モデルを構築する。本研究の成果は室内空気中化学物質について基礎的な知見を得ると共に、子どもや化学物質に敏感な人を対象にした化学物質を制御し、滞留させない「シックハウス症候群・アレルギー疾患」の予防システムを提案する。
著者
水川 葉月 前原 美咲 横山 望 市居 修 滝口 満喜 野見山 桂 西川 博之 池中 良徳 中山 翔太 高口 倖暉 田辺 信介 石塚 真由美
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.43, pp.P-6, 2016

ポリ塩化ビフェニル(PCBs)の水酸化代謝物であるOH-PCBsは、肝臓内で薬物代謝酵素より生成され、その後体外へ排泄される。しかしながら、一部の水酸化代謝物は甲状腺ホルモン(TH)と類似の構造をもつため、THの恒常性を撹乱することが危惧されている。これまでに、多様な陸棲哺乳類の血中OH-PCBsを分析したところ、種間でOH-PCBsの組成に差異が認められ、中でも、ネコのOH-PCBs残留パターンは他種と大きく異なることから、本種は特異な代謝機能を有することが示唆された。しかし、ネコの異物代謝能の研究は僅かであり、化学物質暴露による毒性影響も不明な点が多い。本研究では、ネコにおけるPCBs <i>in vivo</i>暴露試験を実施し、体内動態および代謝に関与する酵素活性や遺伝子を解析するとともに、化学物質の暴露評価に繋がる基盤的情報の収集を目的とした。<br>コーン油に溶解した12異性体のPCBsを腹腔内投与し、経時採血した血清中PCBsおよびOH-PCBs濃度について同条件で実施したイヌの<i>in vivo</i>試験と比較した結果、異性体の残留パターンや体内動態にイヌとネコで種差が観察された。とくにネコでは低塩素化体の残留が顕著であった。また、代謝酵素活性および遺伝子解析の結果、PCBs暴露によりEROD、MROD、PROD活性は上昇するものの、第2相抱合酵素(UGTやSULT)活性は変化せず、PCBs暴露による抱合酵素活性への影響もみられなかった。また、<i>CYP1A1</i>および<i>CYP1A2</i>遺伝子の発現量の上昇も認められた。<br> 本研究により、ネコのPCBs吸収・代謝・排泄能はイヌと異なることが示唆され、とくに低塩素化OH-PCBsの毒性リスクは高いことが予想された。低塩素化OH-PCBsは血中でTH輸送タンパクとの競合結合や、THの硫酸抱合排泄の阻害、TH起因性遺伝子の転写抑制などが報告されており、ネコの甲状腺機能障害が懸念される。