著者
本屋敷 美奈 杉原 亜由子 永井 仁美 高山 佳洋 森定 一稔 柴田 敏之 森脇 俊 笹井 康典 田中 英夫
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.174-185, 2021

<p><b>目的</b>:大阪府における自殺未遂者相談支援事業(以下同事業)を評価し,自殺未遂者本人(以下本人)の支援者との関係の改善につながる効果的な支援方法と内容を明らかにする.</p><p><b>方法</b>:本研究は二段階で実施した.第一段階ではフォーカスグループインタビューにて介入の効果についての仮説とアウトカム指標を定義した.第二段階では仮説に基づく評価を行った.調査対象は2014年 4 月から2015年 6 月の間に府内 5 つの保健所において同事業への同意が得られた自殺未遂者192人のうち,支援が終了した113人の中で,支援記録が入手できた102人とした.調査期間は2015年10月から12月とした.調査方法としては支援記録からケースワーカーが情報を抽出した.分析方法では,援助希求行動,信頼関係,支配性を個々の支援者との関係に影響を与える要素と定義した上で,個々の本人と支援者との関係について各要素を0-4点で数値化し,得点の合計が 6 点以上の場合を支援者との良い関係があるとした.過去の自殺未遂歴や精神科受診歴,保健所相談歴,年齢,性別を調整した上で支援(方法・内容)を説明変数とし,支援者との良い関係の介入後の増加を従属変数としてロジスティック回帰にて分析を行った.</p><p><b>結果</b>:対象者の平均年齢は40.7歳,女性は67.6%であった.良い関係を持つ支援者の数が増えた対象者は64人(62.7%)であった.ロジスティック回帰分析にて有意となった支援は,方法では本人・家族両方への面接(調整オッズ比(以下AOR)13.33;95%信頼区間(以下95%CI)2.44-72.81),内容では本人心理支援の内,ニーズの傾聴(AOR5.87;95%CI2.00-17.22),支援方針の説明と合意形成(AOR5.69;95%CI1.88-17.23),心理教育(AOR3.26;95%CI1.13-9.36),医療機関に関する支援では治療継続支援のみを行った場合(AOR4.72;95%CI1.42-15.71)であった.受療支援・治療継続支援両方ありに該当した 5 人の対象者全員に良い関係のある支援者数の増加が見られた.</p><p><b>結論</b>:仮説及びアウトカム指標の設定は本人の支援に関しては妥当であった.保健所での支援において,本人・家族両方との面接,本人との共同した意思決定,丁寧な受療支援の必要性が示唆された.今後は自殺未遂者・支援者関係の質的評価や対照を設けての評価が課題である.</p>