著者
若旅 正弘 高崎 友香 沼田 憲治
出版者
脳機能とリハビリテーション研究会
雑誌
脳科学とリハビリテーション (ISSN:13490044)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.29-35, 2015-07-03 (Released:2018-11-02)

今回,橋梗塞後に認知機能障害を呈した症例を経験したため報告する.症例は60歳代,女性,橋に限局した脳梗塞を発症した.発症後3週目において,病前には認められなかった種々の行為・行動の異常が観察された.症例の背景,観察所見,神経心理学的検査の結果から,症例は今回の橋梗塞により認知機能障害(注意障害,記銘力障害,遂行機能障害)を呈したと考えられた.行為・行動の異常,認知機能障害は発症後13週目においても残存しており,そのためADL,IADLの一部に見守りを要したと考えられた.脳幹損傷後に認知機能障害を呈した症例の報告は少なく,慢性期まで経過を追ったものは極めて稀である.したがって,本症例報告は貴重かつ興味深い報告であると思われる.
著者
嶋田 敬士 山田 亨 高崎 友香 野口 祥宏 山崎 郁子 福井 和広
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.2569-2581, 2014-12-15

病院でのリハビリテーションの一環として行われる取り組みの1つに,音楽療法士が音楽の力を意図的・計画的に利用して,患者の心身障害の回復や機能の改善に役立てる音楽療法がある.従来その効果は,病院や音楽療法士が各々独自に設けた評価基準と介入内容の記録などを通じて質的・量的に評価する方法が試みられてきたが,患者の症状,回復状況や個性が様々なことなどから,客観的で統一的な評価方法を確立することは非常に困難であった.そこで我々は,患者の心身賦活にともなって広く一般的に見られる表情である笑顔に着目し,評価記録用に撮影された音楽療法時の映像データのみから患者の笑顔度を定量化した.さらに,あらかじめ構造化されていた療法内容に着目し,介入の質が異なる場面での笑顔度の違い,それらの経過回数にともなう変化を統計的に検定した.その結果,療法内容と経過にともない統計的に有意な患者の表情変化を確認するとともに,その変化が従来行われてきた主観評価結果とも高い相関を示していることを確認した.