著者
福井 和広 山口 修 鈴木 薫 前田 賢一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.613-620, 1999-04-25
被引用文献数
85

顔画像認識において照明変動に対するロバスト性は不可欠な特性である. 本論文では"制約相互部分空間法"を用いた照明変動にロバストな顔画像認識法を提案する. 制約相互部分空間法は, パターン変形に対する高い吸収能力をもつ相互部分空間法の拡張で, 前処理として"制約部分空間"に射影された入力部分空間と辞書部分空間のなす最小角度を類似度と定義する. ここで制約部分空間を照明変動成分が含まれない部分空間とすれば, 最小角度, つまり類似度は照明変動に影響されないことになる. この要求を満たすために, 異なる人物の顔パターン分布を表す二つの部分空間に対してその差異を表す"差分部分空間"を導入する. これを同じ照明条件で生成した様々な人物の部分空間の組合せに対して求め, 求めた差分部分空間の集合の主成分空間を制約部分空間とする. 照明条件が大きく異なる顔画像を用いた評価実験により提案法の有効性を示す.
著者
山口 修 福井 和広
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1045-1052, 2001-06-01
被引用文献数
48

ヒューマンインタフェースやセキュリティの分野で, 顔画像を用いた個人識別技術が注目されている.本論文では, ポータブルPC上で動作する顔認識システム"Smartface"について述べる.ユーザに負担の少ない顔認識システムを構築するためには, 顔向きや表情の変化といった人物の変動を吸収する認識法が必要である.本システムでは, ロバストな顔特徴点検出法と動画像を用いた個人識別アルゴリズムを採用する.また, それに伴って増大する計算コストの削減法について述べる.実装したアプリケーション機能は, (1)個人識別による音声応答, 環境設定, (2)顔認識付きスクリーンセーバ, (3)リアルタイム変装シミュレーション, である.本システムは, 特殊な画像処理ハードウェアを用いることなく, カメラを接続したPC上でソフトウェアのみで動作する.
著者
田路 賢太郎 瀬戸山 浩平 大川 泰弘 加藤 伸子 岡崎 彰夫 福井 和広
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.472, pp.7-12, 2012-03-02

指文字は,聴覚障害に関わる人々が用いるコミュニケーション手段の1つであり,平仮名などの文字を対応する手形状で表現する.指文字を習得することは外国語を学ぶことに近い面があり,自然に使えるようになるためには,実際の会話で指文字を利用する経験を重ねる必要がある.このため,個人による指文字の習得は容易と言えず,指文字の練習を支援するためのシステム構築が望まれる.これに関して本研究では,パターン認識の技術による手形状識別を中心とした支援システムの構築を検討する.ここで,高精度な手形状識別には一般的に大量の学習データを必要とするが,このような学習データの収集には多大な労力を要する.そこで,CG技術により指文字の手形状CGを学習データとして生成し,その中からアンサンブル学習で有効なデータを選択する方法を提案する.この提案法の有効性を評価実験により実証した.
著者
福井 和広 山口 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2170-2177, 1997-08-25
参考文献数
18
被引用文献数
125

本論文では, 顔認識に向けて動画像中から瞳, 鼻孔, 口端などの顔特徴点を高速かつ高精度に抽出する方法を提案する. これらの特徴点を基準とした顔の切出し精度は, テンプレートマッチングに基づく顔認識法の性能に大きく影響する. また処理速度に関しては, 動画像に対して識別の試行回数を増やす観点あるいは顔辞書の実時間生成という実用的な観点から高速性が要求される. これまでにさまざまな抽出法が提案されているが, 個人差, 表情変化, 顔向き, 照明変化などの影響のために安定な抽出が難しく, 抽出精度と処理速度の面で十分には満足できるとは言えなかった. 提案する方法は, 形状抽出とパターン照合の組合せにより, 少ない計算コストで高い位置精度を実現している. 具体的には, 分離度フィルタにより瞳, 鼻孔, 口端などの特徴点の候補を抽出する. 次に部分空間法を使ったパターン照合により候補から正しい特徴点を選択する. 評価システムを構築してさまざまな条件の顔画像に対して実験を行った結果, 合計1700枚の静止画像に対して99%の特徴点の抽出率, また動画像に対してハードウェアを用いずに10回/秒の抽出速度, 9880フレームに対して97%の抽出率を達成できた.
著者
嶋田 敬士 山田 亨 高崎 友香 野口 祥宏 山崎 郁子 福井 和広
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.2569-2581, 2014-12-15

病院でのリハビリテーションの一環として行われる取り組みの1つに,音楽療法士が音楽の力を意図的・計画的に利用して,患者の心身障害の回復や機能の改善に役立てる音楽療法がある.従来その効果は,病院や音楽療法士が各々独自に設けた評価基準と介入内容の記録などを通じて質的・量的に評価する方法が試みられてきたが,患者の症状,回復状況や個性が様々なことなどから,客観的で統一的な評価方法を確立することは非常に困難であった.そこで我々は,患者の心身賦活にともなって広く一般的に見られる表情である笑顔に着目し,評価記録用に撮影された音楽療法時の映像データのみから患者の笑顔度を定量化した.さらに,あらかじめ構造化されていた療法内容に着目し,介入の質が異なる場面での笑顔度の違い,それらの経過回数にともなう変化を統計的に検定した.その結果,療法内容と経過にともない統計的に有意な患者の表情変化を確認するとともに,その変化が従来行われてきた主観評価結果とも高い相関を示していることを確認した.
著者
福井 和広
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.8, pp.1-8, 1994-01-20
被引用文献数
2

本論文では、エッジを安定に抽出する方法を提案する。エッジを輝度が急激に変化する位置ではなく、領域と領域を最も分離する領域境界として捉える。領域境界は、境界を形成する2つの局所領域の統計的な性質によって決るので、ノイズの影響に対してロバストである。この考えに基づいて、エッジ強度は、判別分析法により求まる2つの局所領域間での画像特徴量の"分離度"で表される。分離度は、理想ステップエッジ上で、ステップの高さに無関係に最大 (.) となり、エッジが鈍るに従って低下してゆく。線形領域では、その勾配に依らずにほぼ0.75、平坦領域では0.0に近くなる。この特性により、エッジ抽出しきい値が、エッジ強度に無関係に0.75近傍に設定される。したがって、従来の最適しきい値の選択問題が解決される。また、複数の特徴量を使うことでカラー、テクスチャエッジの抽出にも容易に拡張可能である。This paper proposes a robust method for detecting a weak edge. In our method, an edge is defined not as a point where the intensity changes largely, but as a region boundary based on separability of image features which can be calculated by the linear discriminant analysis. Based on this idea, the intensity of an edge is obtained from the separability, which depends only on the shape of an edge. This feature enables us to select easily the best threshold value for the extraction or a weak edge. And besides, our method can be applied to color, and texture edge extraction. Experimental results are presented to demonstrate the efficacy of the proposed method.
著者
五十嵐 洋介 福井 和広
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.7, pp.1125-1134, 2011-07-01

時系列画像において抽出・追跡された特徴点集合の座標情報から因子分解法によって得られる形状空間は,特徴点集合の三次元的な幾何関係を表現しており,視点や対象物の動きに対して不変である.本論文ではこの形状空間の特性に着目し,形状空間同士の構造的な類似度に基づく物体認識のフレームワークを提案する.形状空間は特徴点数を次元とするベクトル空間中の三次元部分空間として得られるので,二つの形状空間の構造的な類似度は両者のなす正準角によって測ることができる.しかしながら,この類似度が意味をもって定義されるためには,二つの特徴点集合同士で特徴点が対応づけられている必要がある.この問題に対して,形状空間に付随して得られる直交射影行列を並べ換えることで対応付けを行う方法を提案する.提案する物体認識のフレームワーク及び対応付け法の有効性は,合成データを用いた性能評価,及びホクロなどの微小特徴に基づく顔認識実験により確認する.
著者
田中 克己 福井 和広
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.1464-1472, 2002-09-01
被引用文献数
11

エージェントとユーザ間のインタラクションを活用した視線入力インタフェースを提案し,実タスクに基づく評価を行った.このシステムにおいては,ユーザとのインタラクションの単位として複数の選択対象エージェントを設定する.各エージェントはユーザからの視線入力に基づいて自らに対する注目の度合を,ベイジアンネットワークを用いて確率的に学習する.いったん学習されたエージェントは,システムへの入力から自らへの注目確率を推定し,それに応じたアクションを行う.このアクションがユーザへのフィードバックとなり,ユーザに対し,自らの注視によりエージェントを活性化させることにより選択している感覚をもたせることになる.最終的にはエージェント活性化により,あらかじめ登録されたショートカットコマンドを起動し,ユーザの意図を実行する.今回は各エージェントにWindows上でのイベント登録・実行機能をリンクさせることにより,ユーザがエージェントを選択すると同時にコマンド選択・スクロール・IMEモード切換を実行させる機構を作成し,現行のインタフェースとの定量的.定性的比較を行った.その結果,コマンド選択機能については10%程度の効率向上が,他のタスクについては同等に近い効率を得ることができた.
著者
山口 修 福井 和広
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.50, pp.99-106, 2000-05-31
被引用文献数
1

ヒューマンインタフェースやセキュリティの分野で、顔画像を用いた個人識別技術が注目されている。本稿では、動画像を用いたPCベースの顔画像認識システム"Smartface"について紹介する。顔認識エンジンには、環境変動にロバストな顔部品検出法と顔向きや表情変化といった変動に強い識別アルゴリズムを用いている。"Smartface"のアプリケーション機能は、(1)個人認証によるスクリーンセーバ、(2)個人識別による環境設定、(3)リアルタイム変装シミュレーション機能からなる。本システムは、カメラ付きミニノート型パソコン上で動作し、特殊な画像処理ハードウェアを用いることなくソフトウェア単体で動作する。Recently, face recognition provides an important means for man-machine interface and security. This paper presents "Smartface", a PC based face recognition system using a temporal image sequence. The face recognition engine of the system employs a robust facial parts detection method and a pattern recognition algorithm which is stable against variations of facial expression and face direction. The functions of Smartface include (i) screen-lock, (ii) customization of PC environment, and (iii) real-time disguising as an application for entertainment. The system works on a portable PC with a CMOS/CCD camera, only with software without requiring a special image processing hardware.
著者
山口 修 福井 和広 前田 賢一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解
巻号頁・発行日
vol.97, no.113, pp.17-24, 1997-06-20
被引用文献数
24

本稿では, 動画像を利用した顔認識システムについて報告する. 本研究では, 登録から認識までの時間経過が短い場合を対象として, 顔向きや表情変化といった変動を吸収する顔認識の方法について考察する. 変動を吸収するために, 単一の画像だけで認識するのではなく, 時系列画像を用いた認識を行なう. 入力画像列をK-L展開によって部分空間として表現し, 登録パターンの部分空間との2つの部分空間の間の角度を類似度とする「相互部分空間法」を適用した. 相互部分空間法の有効性を調べるために, 画像中から高速に正規化顔画像パターンを切り出すシステムを用いて, 大量の実験データを収集し, 認識実験を行った. その結果について報告する.