著者
瀬戸 武志 笠松 紀雄 橋爪 一光 篠塚 成順 高木 啓輔 半澤 儁 籾木 茂 佐々木 一義 小澤 享史 安見 和彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.510-514, 2002
参考文献数
15
被引用文献数
2

背景.喉頭癌と気管癌はともに喫煙歴を危険因子とするため,重複例の報告がある.本症例も喫煙指数が高く,また臨床経過,画像的検討により喉頭,気管の異時性重複癌の1例と考えられた.今回,気管内腔への急速な増大を認め,興味ある経過を示した原発性気管癌の重複癌症例を報告する.症例.症例は78歳,男性,喫煙指数(Brink-mann index)2000.1999年に喉頭癌にて放射線治療を受け,その後再発は認めなかった.2001年6月に血痰出現し,当科に精査入院.気管支鏡検査施行し,声門下約4cmの気管左側壁にポリープ様隆起病変を認めた.喉頭部には喉頭癌再発の所見はなく,原発性気管癌(扁平上皮癌)の診断を得た.約1週間の経過で腫瘍の急速な増大により気管狭窄をきたしたため救急救命的に内視鏡的Nd-YAGレーザー治療を併用し,気道の確保を行った.その後,放射線治療を行い,独歩退院となった.結論.原発性気管癌において気管内腔へ急速に増大する症例があり,急速な増大により容易に気道閉塞をきたし致命的となる.以上を念頭に置き,気管癌症例では慎重に経過観察を行い,必要であれば迅速な気道確保処置が必要である.