著者
矢野 邦夫 浦野 美恵子 鈴木 ノブエ 橋爪 一光
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.178-182, 2000-05-18
参考文献数
23

近年, 国内において医療施設や高齢者施設における結核の集団感染が報告され, 結核は再興感染症として再び認識されてきた.米国においても同様で, 多剤耐性結核の報告が相次ぎ, 特にHIV感染者用住居施設, 高齢者施設, 刑務所における結核対策の重要性が指摘されている.これらを背景に, CDC (米国疾病管理センター) は数多くの結核関連ガイドラインや勧告を公開しているが, サーベイランスの基本となるツベルクリン反応陽性について日米の基準が異なっているため, 彼らの優れた資料をそのまま日本における病院感染対策に導入できない.具体的には, 日本においてツベルクリン反応は発赤の大きさによって測定されているが, CDCは硬結の測定で行うように指導しており, 発赤を測定していない.また, ブースター現象の確認の必要性が叫ばれているが, BCGを基本的な結核予防策として取り入れていない米国におけるブースター現象のデータを, そのまま日本における対策に持ち込むことはできない.今回, 我々はCDCのガイドラインおよび勧告に従ってツベルクリン反応を施行し, CDCの結核対策に従って日本の医療従事者にツベルクリン反応を施行した場合の問題点を明確にした.
著者
白井 拓史 笠松 紀雄 橋爪 一光 山谷 英樹 半沢 儁 籾木 茂 佐々木 一義 岩崎 幸司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.414-418, 1998
被引用文献数
1

症例は35歳, 女性。他院にて昭和57年より胸部X線写真上異常陰影を指摘されており, 血尿, 鞍鼻を認めることより臨床的にWegener肉芽腫症と診断され, 経過観察されていた。平成8年3月, 喘鳴, 呼吸困難にて当院に緊急入院。気管支鏡的に著明な浮腫性声門下狭窄が認められ, 緊急的に気管内挿管を行った。気管切開を施行し, ステロイド剤および免疫抑制剤を投与した。治療により浮腫はすみやかに改善したが, 気管の瘢痕性狭窄と多発陥凹を形成し遷延化したため, ST合剤を投与したところ, 軽度瘢痕狭窄を残しほぼ改善した。声門直下部はWegener肉芽腫症のtargetであるといわれている。本例は, 臨床経過14年目に発症した気道病変の経過を気管支鏡にて追跡しえた興味深い症例と考えられたので, 若干の文献的考察を加えて報告する。
著者
橋爪 一光 篠崎 克己 滝口 裕一 安田 順一 半沢 儁 門山 周文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.36-40, 1987
被引用文献数
1

症例は74歳男性。発熱, 咳嗽を主訴として来院。既往歴として肺結核症と胃潰瘍あり。喫煙指数500。昭和60年4月, 胸部X線写真上, 右下肺野に肺炎像を認め, 精査のため気管支鏡検査施行, 頸部気管, 声門より4cm下方に気管ウェブと気管嚢胞を認めた。気管嚢胞の形成には気管ウェブの併存が密接な関連があると考えられた。また, 本症にみられた肺気腫と肺炎の発症にも気管嚢胞の存在が関係していると考えられた。
著者
加藤 俊哉 橋爪 一光 笠松 紀雄 冨田 和宏 半澤 儁 籾木 茂 佐々木 一義 玉地 義弘 岡本 一也
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-27, 1996-01-25
参考文献数
10
被引用文献数
1

胸部X線写真, 胸部CTにて空洞性病変を疑い, 気管支鏡で空洞を直視し得た肺扁平上皮癌の2例を経験した。空洞形成機序を含め, 若干の文献的考察を加えて報告する。症例1は60歳, 男性。両上肺野に巨大嚢胞が認められ, 喀痰細胞診にて扁平上皮癌の診断を得た。気管支鏡検査にて左上葉支入口部より空洞内腔を直視した。症例2は63歳, 男性。胸部異常陰影の精査のため気管支鏡検査施行, 右上葉支入口部より空洞内腔を直視し, 気管支と空洞の交通部から中枢側に癌の直接浸潤が認められた。検査後の喀痰細胞診にて扁平上皮癌の診断を得た。剖検では両症例とも空洞壁及びそれに交通する気管支に広範な壊死を伴う癌の浸潤が認められた。両症例とも嚢胞壁に癌が発生し, これが増大, 周囲に浸潤し, 壊死を生じて, 気管支に開通したものと考えられた。
著者
瀬戸 武志 笠松 紀雄 橋爪 一光 篠塚 成順 高木 啓輔 半澤 儁 籾木 茂 佐々木 一義 小澤 享史 安見 和彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.510-514, 2002
参考文献数
15
被引用文献数
2

背景.喉頭癌と気管癌はともに喫煙歴を危険因子とするため,重複例の報告がある.本症例も喫煙指数が高く,また臨床経過,画像的検討により喉頭,気管の異時性重複癌の1例と考えられた.今回,気管内腔への急速な増大を認め,興味ある経過を示した原発性気管癌の重複癌症例を報告する.症例.症例は78歳,男性,喫煙指数(Brink-mann index)2000.1999年に喉頭癌にて放射線治療を受け,その後再発は認めなかった.2001年6月に血痰出現し,当科に精査入院.気管支鏡検査施行し,声門下約4cmの気管左側壁にポリープ様隆起病変を認めた.喉頭部には喉頭癌再発の所見はなく,原発性気管癌(扁平上皮癌)の診断を得た.約1週間の経過で腫瘍の急速な増大により気管狭窄をきたしたため救急救命的に内視鏡的Nd-YAGレーザー治療を併用し,気道の確保を行った.その後,放射線治療を行い,独歩退院となった.結論.原発性気管癌において気管内腔へ急速に増大する症例があり,急速な増大により容易に気道閉塞をきたし致命的となる.以上を念頭に置き,気管癌症例では慎重に経過観察を行い,必要であれば迅速な気道確保処置が必要である.