著者
高根沢 紀子
出版者
上武大学
雑誌
上武大学経営情報学部紀要 (ISSN:09155929)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.162-148, 2003-12-30

小川作品の特徴として<曖昧さ>はよく言われるところであるが、それゆえに<わからない>という評価をされてもいる。吉本ばななと共に、少女漫画的な作品を書く作家というようなレッテルを貼られ、文学研究のレベルとしては軽視されてきた。芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」も例外ではない。<妊娠>を扱ったこの作品は、とくに男性評者からは<まさしく女でなければ理解できない><すさまじい>と敬遠されもした。また、姉の妊娠に向ける妹の<目的がない純粋な悪意>は、作家の特徴である<曖昧さ>で片付けられてきたが、これもまた作家の特徴に還元されて済まされてしまうものではないだろう。作品に描かれたのは《妊娠》そのものの原理であるのだ。
著者
高根沢 紀子
出版者
上武大学
雑誌
上武大学経営情報学部紀要 (ISSN:09155929)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.82-77, 2002-12-30

加藤幸子は"独特のバランス感覚を持った作家"である。日本と中国、大人と子供、人間と自然という対立する二つの概念を、その独特なバランス感覚で共生させている。加藤の文学を決定づけているのは幼年期の中国体験である。太平洋戦争をはさんでの中国での体験は「夢の壁」(1982)から『長江』(2001)まで書きつがれている。またナチュラリストの肩書きを持つ加藤は、自然を考える作家でもある。<ヒト>を絶対の視点としないその文学は独自のものである。
著者
高根沢 紀子
出版者
立教女学院短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:0285080X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-10, 2009