著者
楠本 哲次 川添 堯彬 田中 昌博 高梨 芳彰 馬場 俊輔 木村 公一
出版者
大阪歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では脳機能画像法を用いて咀嚼運動中の大脳皮質の賦活状態を捉えることとした.しかし,脳機能画像法では,頭部が振動を受けると脳の位置が動いてしまうと,データの信頼性が低下する可能性がある.この事も本研究の難易度を上げる原因となった.そこで我々は可能な限り実際の咀嚼運動を再現し,しかし脳機能画像法の妨げになりにくいTask方法として,咀嚼Taskを採用した.咀嚼Taskは右咬みタスク,左咬みタスクとした.各タスクは咬頭嵌合位にて上下顎の歯を軽く接触させ,タスク側の咬筋が等尺性収縮を起こさせるように指示し,咬みしめサイクルは1Hzとした,本Taskにより,実際の咀嚼運動に近いデータを得ることができたと考えている.本研究では咀嚼Taskにて大脳皮質が賦活する部位を検討している過程で,咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位が運動性言語野,言語優位半球との関連があるのではないかと考えた.そこで,我々はしりとりTaskを用いて被検者の言語優位半球を同定し,言語優位半球と咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位との関連を調べたところ,言語優位半球側に必ず咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位を認めた.よって,言語優位半球と咀嚼Taskによる大脳皮質賦活部位とは関連があることが明らかとなった.また本研究では脳磁図やfMRIでも使用可能な咬合力センサの開発を試みたが,実用化することは困難であった.実用化に向けて今後も改良を行う必要がある.