著者
高橋 勇一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

中国長江上流域に位置する四川省・雲南省における森林環境の歴史的変遷を文献によって調べた結果、特に18世紀後半以降の人口急増に伴い、森林率が減少してきていることが明らかになった。また20世紀後半から現在に至る雲南省の森林・林業の変化を文献およびフィールドワークによって調査した結果、1980年代において、木材生産の急増が行われ、90年代以降において生態的側面を調査した結果、1980年代において、木材生産の急増が行われ、90年代以降において生態的側面を重視する方向へ移行し、98年の大洪水を契機に、天然林保護および退耕還林など、さらに生態保全の強化が進んだことがわかった。ところで、持続可能な生態村を建設する上では、地域住民の自主的・積極的な参加が必要不可欠である。そこで、自然資源の循環型利用を行う上で、住民との協働管理を考慮した持続可能な森林経営の資本評価の方法を考慮した。これは、本年の持続的経営の管理費kを、輸伐期uで還元するというのが基本であるが、環境保全に対する住民の支払意思額CSを加え、u(k+CS)と評価するものである。これを具体的な事例として、雲南省北部で最も有名な人工林であるウンナン松に適用し、その評価を試みた。ここで、農民たちの参加意思は意外と高いことがわかったが、社会の成熟度等によって変動が予想されることから、u'(k+αCS)の方が望ましいことを導いた。さらに、その古城が世界文化遺産に指定されている麗江県を対象に、エコシステムマネジメント導入の実行可能性について考察した。その結果、麗江は自然環境的要因においては条件が恵まれているが、都市と農村の共生関係の問題、政府・地域住民・研究機関等の協働関係の問題、そして特に県境付近における違法伐採など、さまざまな課題を残していることが明らかになった。