著者
中村 友紀 山中 伸弥
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.531-538, 2008-08-01

分化多能性をもち,その性質を維持したままほぼ無限に増殖させることができる胚性幹細胞,ES細胞は細胞移植治療や創薬試験系への応用に大きな期待が寄せられてきた.しかし,その作製には受精卵が必要になることから倫理的に慎重な運用が求められ,また他家移植となることから免疫拒絶の制御という問題も抱えていた.これらを回避すべく,真に臨床応用可能な幹細胞の開発を目指し,様々な研究が行なわれている.ここでは,その試みから生まれた人工多能性幹細胞,iPS細胞について,樹立までの経緯とそのインパクト,展望について触れたい.
著者
山中 伸弥 JOHANSSON ERIK MARTIN Johansson Erik Martin JOHANSSON Erik Martin
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25 (Released:2015-01-22)

本研究の目的は、iPS細胞にがん特異的ゲノム変異を導入することで、脳腫瘍の発生をインビトロで再現し、遺伝子発現ダイナミクスを中心にした分子機序を明らかにすることである。本研究では、シングルセルエピゲノム解析によって、細胞の分化過程における遺伝子発現制御のダイナミクスを明らかにする。特に細胞分化過程における遺伝子発現のヘテロ性を考慮した解析を行うことによって、シングルセルレベルでの分化の度合いの定義を行い、その分化の度合いに従った遺伝子発現制御を明らかにする。これらのシングルセル技術を脳腫瘍発生モデルに応用することで、脳腫瘍の発生モデルを構築すると共に創薬スクリーニングの基盤を提供する。具体的には、二次性神経膠腫で特異的に見られるIDH1変異体をiPS細胞に導入し、この変異体をアストロサイトなどの神経細胞へ分化させる際に一過的に癌発現させる。その変異体がひきおこす正常分化の異常を捉えることを試みる。さらには複数の変異遺伝子を同時、または連続的に発現させることで多段階発がんモデルを作製する。これらのモデルを用いて、正常な神経分化から逸脱する細胞集団をシングルセル遺伝子発現解析で同定する。さらにはこの分化系を用いて癌様細胞が発生する培養条件で、それらの細胞集団を標的とする化合物の同定を試みる。
著者
山中 伸弥 青井 貴之 中川 誠人 高橋 和利 沖田 圭介 吉田 善紀 渡辺 亮 山本 拓也 KNUT Woltjen 小柳 三千代
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

4つの転写因子を体細胞に導入することで多分化能を持ったiPS細胞が樹立できる。c-Mycを含めた4因子を用いた場合にキメラマウスで腫瘍化が高頻度で認められ、レトロウイルス由来のc-Mycが原因の一つであることが分かった。樹立条件などを検討しMycを用いずにiPS細胞を作ることに成功したが、性質の点で不十分であった。c-Mycの代替因子の探索を行いL-Mycを同定した。L-Myc iPS細胞は腫瘍化リスクもほとんど認められず、性質の点でも十分であった。レトロウイルスを用いずにプラスミドを用いることでもiPS細胞の樹立に成功した。このことにより体細胞への初期化因子の挿入が起こらずより安全な作製方法の確立に成功した。神経細胞への分化誘導とそれらの移植実験により安全性を検討する方法の確立も行った。また、肝細胞、血液細胞、心筋細胞への分化誘導系も確立した。iPS細胞の性状解析をディープシークエンサーなどを用いて詳細に解析する技術の導入も完了し、網羅的な遺伝子発現、メチル化解析、スプライシング解析なども行った。
著者
中村 友紀 山中 伸弥
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.531-538, 2008-08-01 (Released:2011-04-18)
参考文献数
29

分化多能性をもち,その性質を維持したままほぼ無限に増殖させることができる胚性幹細胞,ES細胞は細胞移植治療や創薬試験系への応用に大きな期待が寄せられてきた.しかし,その作製には受精卵が必要になることから倫理的に慎重な運用が求められ,また他家移植となることから免疫拒絶の制御という問題も抱えていた.これらを回避すべく,真に臨床応用可能な幹細胞の開発を目指し,様々な研究が行なわれている.ここでは,その試みから生まれた人工多能性幹細胞,iPS細胞について,樹立までの経緯とそのインパクト,展望について触れたい.
著者
山中 伸弥
巻号頁・発行日
1999 (Released:1999-04-01)

NAT1は翻訳開始因子の一つであるeIF4Gと相同性を有する蛋白質で、新しい癌抑制遺伝子の候補である。我々は以前、RNAエディティング酵素であるAPOBEC1をトランスジェニックマウスの肝臓で過剰発現させると肝細胞癌を誘導することを報告したが、その肝臓で異常にエディティングされているmRNAとしてNAT1(novel APOBEC1 target #1)を同定した。NAT1のmRNAのエディティングは複数の停止コドンを生み出し、結果としてNAT1蛋白質をほぼ完全に消失させた。eIF4Gは他の翻訳開始因子であるeIF4AやeIF4Eと結合し、それらの機能を統合しているが、NAT1はeIF4Aに結合するがeIF4Eには結合しないことがわかった。またNAT1を過剰発現させると蛋白質合成を抑制した。そこで、NAT1は、eIF4Aへの結合をeIF4Gと競合する結果、蛋白質合成をを抑制するというモデルを提唱した。今回、我々は遺伝子ノックアウトによりNAT1の生体内での機能を検討した。NAT1+/-マウスは外観や生殖能力は正常で、1年以上経過しても腫瘍の多発は認められなかった。一方、NAT1-/-マウス胚は原腸形成期に致死であった。NAT1-/-ES細胞は正常の形態を示し、予想に反して蛋白質合成や増殖速度も正常であった。一方、NAT1-/-ES細胞はフィーダー細胞除去やレチノイン酸刺激による分化が抑制されていた。さらに、NAT1-/-ES細胞ではレチノイン酸により変化する遺伝子発現の大部分が抑制されていた。またレチノイン酸応答配列からの転写も抑制されていた。これらの実験結は、NAT1は全般的な蛋白質合成の抑制因子ではなく、初期発生や細胞分化に関与する特定遺伝子の発現制御因子であることを示唆した。
著者
山中 伸弥
巻号頁・発行日
1997 (Released:1997-04-01)

NAT1は癌抑制遺伝子の候補として同定された因子であり、蛋白質翻訳開始因子のひとつであるeIF4Gに相同性がある。今回、ジーンターゲティングの手法を用いて、NAT1の機能を検討した。NAT1のへテロ変異マウスには、異常な表現型は観察されなかった。しかし、ホモ変異は、胎児期の早期に致死であった。NAT1の機能をさらに検討するために、ホモ変異の胚性幹(ES)細胞を樹立した。NAT1は正常ES細胞において多く発現しているが、ホモ変異細胞においては、その発現は完全に抑制されていた。ホモ変異細胞は、未分化な時は形態、及び発育とも正常細胞と変わりなかった。また総蛋白質合成にも差が認められなかったことより、NAT1は、少なくとも未分化ES細胞において、全般的な蛋白質翻訳の調節には関与していないと考えられた。一方、ホモ変異ES細胞においては、白血病抑制因子除去やレチノイン酸刺激により誘導される分化が著しく障害されていた。さらにホモ変異ES細胞をヌードマウスの皮下に移植して形成される奇形腫においては、三胚葉系すべての組織の分化が障害されていた。これらの実験結果よりNAT1は、胚性分化にとって必須の機能を有していることをが明らかとなっかた。今後は、NAT1の分化における役割を、分化特異的遺伝子群の発現に対する作用を中心に検討していく予定である。
著者
丹羽 仁史 山中 伸弥 升井 伸治 中尾 和貴
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

これまでに本研究において同定と機能解析を進めてきた遺伝子群について、マウス胎児性ならびに成体性線維芽細胞における多能性誘導能を網羅的に解析した。この結果、Oct3/4,Sox2,Klf4,cMycの4因子の組み合わせにより、これらの線維芽細胞に多能性を誘導することが可能であることを明らかにし、報告した(Takahashi, K. and Yamanaka, S., Cell, 2006)。さらに、これら4因子のうち、マウスES細胞における機能が明らかでなかったSox2とKlf4について、その解析を進めた。まず、Klf4については、これがES細胞に於けるLefty1プロモーターの活性化においてOct3/4およびSox2と協調的に働くことを明らかにした(Nakatake, Y. et al., Mol.Cell.Biol., 2006)。また、Klf4の強制発現が、マウスES細胞のLIF非依存性自己複製を維持しうることも見出している。一方、Sox2については、その機能がマウスES細胞の自己複製に必須であり、Sox2機能喪失は栄養外胚葉への分化を誘導すること、そしてSox2のマウスES細胞における主たる機能はOct3/4の転写活性維持にあることを明らかにした(Masui, S. et al., Nat.Cell.Biol., in revision)。さらに、マイクロアレイ法を用いた解析により、Oct3/4の標的遺伝子候補を網羅的に同定し(Matoba, R et al., PLoS One, 2006)、Klf4ならびにSox2の標的遺伝子についても同様の解析を進めることにより、マウスES細胞に於ける遺伝子発現制御の全体像を明らかにすることを現在試みている。
著者
山中 伸弥
出版者
京都大学「京都からの提言」事務局
雑誌
京都大学 附置研究所 ・センター シンポジウム : 京都からの提言-21世紀の日本を考える
巻号頁・発行日
vol.3, pp.17, 2008-09-16

会期・会場: 平成20年3月8日(土)午前10時-午後5時15分 : 横浜 新都市ホール ; 後援: 読売新聞社 : (財)京都大学教育研究振興財団
著者
山中 伸弥
出版者
大阪癌研究会
雑誌
癌と人
巻号頁・発行日
vol.42, pp.8-11, 2015-01
著者
山中 伸弥 一阪 朋子
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

ES細胞は分化多能性を維持したまま半永久的に増殖することから、細胞移植療法の資源として価値が高い。しかしヒトES細胞には受精卵の利用という倫理的問題が影を落とす。成体からES細胞に類似した多能性幹細胞を樹立できたなら、細胞移植療法にとっての理想的な幹細胞となりうる。私たちは、これまでES細胞などの多能性幹細胞で特異的に発現する遺伝子群(ECAT : ES cell associated transcript)の同定と機能解明を進めてきた。本研究においてはECAT遺伝子群を選択マーカーとして、成体マウスからの多能性幹細胞分離を試みた。1.最適の多能性細胞マーカーの決定ECATの中でどの遺伝子が選択マーカーとして適しているかを検討した。ES細胞との融合によるリプログラミング系で検討した結果、ECAT3がマーカーとしてすぐれていることがわかった。2.細胞培養条件の最適化リプログラミングを誘導する培養条件として、LIFは必要であるが、フィーダー細胞は必須でないことを見いだした。3.クロマチン修飾薬剤の検討体細胞をアザデオキシシチジンやトリコスタチンで処理することにより多くのECAT遺伝子の発現が誘導されることを明らかとした。今後、これらの実験系を用いて、初期化能力のある因子や遺伝子の探索を行う。