著者
高橋 史樹
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-33, 1975-03-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
13
被引用文献数
15

カブトエビは水田の代かき後数日で出現するが, その生態学的特徴には一年生水田雑草と類似のものが多い.これらの雑草の種子の中には光の刺激によって発芽するものがあるので, このような現象がアジアカブトエビ卵の孵化についてもみられるか否かを検討したところ, 光の効果を受けることがわかった.20℃で, いろいろな日長および全明, 全暗の条件下で, 茨木市内の水田土壌に含まれている卵および土壌を除去した飼育貯蔵卵に注水し, 孵化の状況を観察したところ, 8~24hrLの日長下では短期間に高い孵化率がみられたが, 4hrL以下の日長下では孵化が遅れ, とくに全暗条件下ではその遅れが著しかった.
著者
新垣 則雄 高橋 史樹
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.588-598, 1982

コクゾウの米粒に対する産卵分布はポアソン分布で近似できる.玄米粒1個に複数個産卵させると, 小粒系と中粒系の品種では1匹しか羽化せず, 大粒系でも1匹羽化がほとんどであった.大粒系米粒よりもさらに大きな人工米を作り産卵させると, 複数羽化の頻度が増加したが, その場合でも死亡率は高かった.コクゾウが発育可能な人工米の最小重量は5.1mgであり, 通常の玄米の約1/4であった.羽化脱出後の残渣米に産卵させても発育する個体があった.また, 半分に割った玄米にテトロンゴースをはさんで貼り合わせたところ, それぞれの半球から1匹ずつ羽化したことから, 生物的条件づけや揮発性の発育阻害物質は役割を果さないか, あるとしても少いと考えられた.20∿26mgの人工米に複数個産卵された場合, 2齢幼虫期に生存虫が1匹に減少し, 死亡個体の頭部などに咬傷痕が観察された.これらのことから1匹羽化の理由はおもに2齢期に幼虫間の攻撃により, 1匹だけ生き残るためと考えられた.
著者
高橋 史樹 郷田 雅男 赤山 敦夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.229-233, 1980
被引用文献数
2 3

日本に産する3種のカブトエビの生命表を実験条件下(水温21∼22°C)で求めて比較し,水田雑草の生物的防除のための材料としての有効性からも検討した。<br>幼生は脱皮を繰り返しながら成長し,アジアカブトエビは8日目,アメリカカブトエビは10日目,ヨーロッパカブトエビは16日目から産卵がみられた。<br>生残曲線は産卵数がピークに達した後は急速に低下するが,産卵が終った後も多くの個体が生残した。<br>背甲長ははじめ急速に増大するが,産卵がピークに達した後の増加はゆるやかになった。しかし,産卵が終った後も増加を続けた。<br>両性生殖をするアジアカブトエビでは毎日の産卵個体率は最高で90%程度であるが,雌雄同体の他の2種では100%の期間が10日以上続いた。産卵数はアメリカカブトエビが最大で,アジアカブトエビが最小となった。<br>水田雑草の生物的防除に利用するという点では,成長が早く,産卵までの日数の短いアジアカブトエビが最適と考えられた。