- 著者
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高橋 弦
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.4, pp.209-213, 1999-08-01
動物実験より決定した感覚神経の分節性支配領域(皮節)の分布の規則性を報告し,その規則性を根拠として既存のヒト皮節図の再評価を行なった。あらかじめEvans blueを静注投与したラットの,前肢・後肢の脊髄神経を感覚神経のC線維の興奮強度で電気刺激すると,その脊髄神経の支配領域の皮膚に色素漏出が発生した。この方法を用いてラットのC1-T1(前肢),T12-S1(後肢)脊髄神経を刺激し四肢の皮節図を決定した。四肢の皮節は体幹部の皮節と同様に,原則として体幹前後輪を集回するループ状構造を示し,そして腹側面・背側面では中枢側に向かい四肢の中心軸へ収束し,前側面・後側面では末梢に向かい四肢の中心軸に沿って伸長していた。ラットとヒトの四肢は解剖学的に相同関係にあり,骨・筋・末梢神経の空間的位置関係も同一である。さらに,今回ラットに認められた皮節分布の原則性は,霊長類を含めた他の哺乳類においてもすでに報告されており,ヒトの皮節分布もこの原則性に従うことが演繹的に推論される。そこで,この原則性をもとに仮説的なヒト皮節図を描き,この仮説図からヒト皮節図を再評価した。その結果,神経根切断症例より得られた野崎の図(1938年)や,神経ブロックより決定したBonicaの図(1990年)などがこの皮節分布の規則性を比較的によく示しており,臨床応用にふさわしい図であると結論した。