著者
高橋 邦秀
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, 2003-02-16

北海道で編集をお引き受けして早くも3年がたってしまいました。編集委員会では当初,表紙デザイン,審査の促進,短報審査方法の改善などいくつかの課題を扱ってまいりました。これらの課題については会員,論文審査をお願いした方々,編集委員諸氏のご協力によってなんとかハードルを越えることができました。最後まで残っていたのが「特集」企画でした。この特集については,その目的,内容,他誌(とくに森林科学)との仕分け等について論議してまいりましたが,編集委員会としてはまだ明確な方針を示せるほど議論が煮詰まっておりません。しかし,特集の中身としては,1.境界領域研究,時代を先取りするような課題,既存分野についての問題提起などに関するレビューや論文数編からなるものとする,2.コーディネーターから企画書を提出していただき,編渠委員会で承認後,コーディネーターと担当編集委員に論文等の取りまとめや調整をお願いする,3.論文等については投稿規定に従い審査を行う,4.特集企画は年2回を目標とすることなどが,編集委員会で了承されています。当面はコーディネーターを編集委員からお願いし,掲載内容について会員諸氏のご意見をいただきながら,よりよいものにするように編集委員会として検討していきたいと考えています。第1回目の特集は「森林レクリエーション研究の展開」です。森林レクリエーションが多くの人々の意識には刷り込まれつつあると思いますが,研究としてどのような切り込みをしていくのか,本特集がこれからの研究展開の起爆剤となることを期待しております。2回目の85巻3号では「天然林施業に貢献する生態学」を予定しています。今後,特集内容を充実させ,会員拡大へも波及させることができるようテーマや内容を検討していきたいと思いますので,会員各位の積極的なご提案を編集委員にお寄せいただくようお願い致します。
著者
山口 信一 矢島 崇 渋谷 正人 高橋 邦秀
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.94-100, 1997
参考文献数
20
被引用文献数
4

高密度に生息するエゾシカの菜食と踏圧によりほぼ無植被となった林床の潜在的な植生の回復力を検討するために,北海道洞爺湖の中島において,当年生実生の消失過程とその要因,および散布種子と埋土種子の量と種構成を調査した。当年生実生は,調査開始から20日経過時点でおよそ70〜90%が消失し,50日経過時点ではすべての調査区でほぼ90%の実生が消失した。消失要因は80%以上がシカの採食によるものであった。散布種子数は調査区によってばらつき,1995年には238〜5,820粒/m^2,1996年は21〜394粒/m^2であり,種数は1995年で11〜22種,'96年で7〜19種であった。また,活性埋土種子数も調査区によって幅があり,50〜2,700粒/m^2が抽出されて,種数は8〜20種であった。散布種子,埋土種子ともに,木本種が多くを占めていた。埋土種子数と種数および活性種子率は調査地により異なっていたが,シカの影響を排除した囲い区と放置区の比較では明らかな差は認められず,シカによる踏圧や林地の撹乱などは埋土種子の生残には大きく影響していないと考えられた。実生の消失過程および散布・埋土種子量からみて,高い採食圧のもとで植生の回復は困難ではあるが,潜在的な回復の可能性は維持されているものと考えられた。