- 著者
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山口 信一
矢島 崇
渋谷 正人
高橋 邦秀
- 出版者
- 森林立地学会
- 雑誌
- 森林立地 (ISSN:03888673)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.2, pp.94-100, 1997
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
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4
高密度に生息するエゾシカの菜食と踏圧によりほぼ無植被となった林床の潜在的な植生の回復力を検討するために,北海道洞爺湖の中島において,当年生実生の消失過程とその要因,および散布種子と埋土種子の量と種構成を調査した。当年生実生は,調査開始から20日経過時点でおよそ70〜90%が消失し,50日経過時点ではすべての調査区でほぼ90%の実生が消失した。消失要因は80%以上がシカの採食によるものであった。散布種子数は調査区によってばらつき,1995年には238〜5,820粒/m^2,1996年は21〜394粒/m^2であり,種数は1995年で11〜22種,'96年で7〜19種であった。また,活性埋土種子数も調査区によって幅があり,50〜2,700粒/m^2が抽出されて,種数は8〜20種であった。散布種子,埋土種子ともに,木本種が多くを占めていた。埋土種子数と種数および活性種子率は調査地により異なっていたが,シカの影響を排除した囲い区と放置区の比較では明らかな差は認められず,シカによる踏圧や林地の撹乱などは埋土種子の生残には大きく影響していないと考えられた。実生の消失過程および散布・埋土種子量からみて,高い採食圧のもとで植生の回復は困難ではあるが,潜在的な回復の可能性は維持されているものと考えられた。