著者
矢部 恒晶
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.55-63, 2007 (Released:2007-08-21)
参考文献数
22
被引用文献数
7

九州におけるニホンジカ特定鳥獣保護管理計画について, 策定している6県の担当者へのアンケートおよび聞き取りを行い, モニタリング手法やこれまでの結果, 評価の体制, 広域的な個体群管理のための協力体制, および推進上の問題点について整理した. 個体群モニタリングには捕獲個体や糞粒法等に基づく指標が利用され, 将来予測や捕獲計画にはいくつかの手法が用いられていた. 2000年度から2006年度までの計画期間においては, 多くの地域で捕獲による生息数の減少割合は小さく, 生息数の現状と最終目標との開きがまだ大きいと考えられた. 計画の推進に当たり, 福岡県では学識経験者で構成される保護管理検討委員会とその他の分野のメンバーで構成される連絡会議が, 他の5県では多分野の委員から構成される保護管理検討委員会が, モニタリングの評価および管理施策の検討を行っていた. 県境を越えて分布するシカ個体群の管理のため, 複数の県や森林管理局等による合同一斉捕獲や, 行政, 試験研究機関等で構成される協議会等における情報交換等の協力体制がつくられてきた. 行政担当者からは, モニタリングの精度, 施策の進行度, 予算の制約等について問題点が指摘された. 今後のモニタリング調査の充実や科学的評価機能の維持, モニタリングデータの共有等が必要と考えられる.