著者
松高 津加紗 竹渕 謙悟 高橋 静恵 山本 晋史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1158, 2006

【目的】患者様の病棟で過ごす余暇時間もADL能力向上には大切であるのではないかと考え、当院で行われている余暇時間に対する取り組みに注目し、その結果を検証することを目的とした。<BR>【方法】対象は当院に入院していた脳卒中患者46名とし、そのうち余暇時間への取り組みが行われていた時期に入院していた患者24名を参加群、取り組みが行われていなかった時期に入院していた患者22名を非参加群とした。そして、それぞれ入院記録より、下肢ステージ・HDS-R・コース立方体テスト・日常生活自立度・日常生活動作能力(当院規定による)・BI・FIMを抽出し、両群に於いて初期評価時と最終評価時に差が出るかを検討した。<BR>【結果】それぞれの項目について、初期と最終評価の間に有意差が見られたのは参加群においてはコース立方体テスト、HDS-R、日常生活自立度、日常生活動作能力、BI、FIMの6項目。非参加群ではコース立方体テスト、HDS-Rに差が見られなかった以外は参加群と同じ結果であった。下肢ステージは両群おいて有意差はなし。また、両群の最終評価時の比較では有意差を認めるものはなかった。<BR>【考察】普段の生活の場である病棟では、各個人のリハビリテーション時間以外の余暇活動に対する病院スタッフの関わりは少ないのが現状である。また余暇活動の必要性について、入院患者様における日中の病棟での過ごし方と、能力的な改善に関する報告はあまり見られていない。<BR> そこで今回当院で行われている余暇活動に対するアプローチをもとに、日中の病棟での過ごし方と、能力改善の関連性について検討した。その結果、参加群と非参加群の間に有意差は見られず、単純に余暇時間の充実のためにゲームやビデオ鑑賞等の活動を行っても有効な能力改善には繋がらないことがわかった。このような結果になった原因として、活動場所がナースステーションから離れていたところにあり監視が困難であったこと、その為に病棟スタッフの時間的余裕のあるときに限られ不定期だったこと。また、活動内容が患者様個人の趣味趣向に合致していたか十分な調査がなされていなかったことが挙げられる。<BR> 今後は活動内容の吟味や、先行研究をもとにした再考が必要である。そして引き続き余暇時間の充実を図ることで、自宅復帰へ向けた包括的なアプローチとなり、より家庭へのソフトランディングが円滑に進められるのではないかと考える。<BR>【まとめ】1.日中の病棟での過ごし方と、能力改善の関連性について検討した。<BR>2.参加群と非参加群の間に有意差はなかった。<BR>3.今後は活動内容の吟味や、先行研究をもとにした再考が必要だと考えた。
著者
高橋 静恵 大塚 功 山崎 慎也 高井 浩之 両角 淳平 原 寛美 山口 浩史 安井 匡
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BcOF1034-BcOF1034, 2011

【目的】<BR>脳卒中患者が使用する下肢装具には、正常歩行に近似した歩行動作を獲得するための代償的機能が求められる。今回Shoehorn Brace(以下SHB)使用し自立歩行を獲得した回復期脳卒中患者に対し、Gait Solution Design (以下GSD)を使用し歩行練習を実施することで、正常歩行により近い歩行動作を獲得した症例を経験した。その歩容評価と装具療法に関する新しい知見を得たので考察を加えて報告する。<BR>【方法】<BR>症例は47歳の女性。平成21年11月21日、脳梗塞発症。右片麻痺・失語症を呈した。I病院搬送。t-PA施行するも再開通せず、血栓溶解療法を追加したが、頭部CT上左内包から放線冠にかけて梗塞を認めた。31病日、回復期病院へ転院、SHB作製。屋外自立歩行を獲得した。166病日自宅退院。182病日CI療法目的にて当院入院。入院時、上田式片麻痺機能テスト右上肢9手指5下肢6、右足関節関節可動域背屈0°。下腿三頭筋の筋緊張はModified Ashworth Scale(以下MAS)3。MMT右下肢股関節屈曲3・伸展2、膝関節屈曲2・伸展4、足関節背屈2・底屈2。FIM126/126点。踵ロッカー機能に伴う底屈モーメント(1stピーク)4.06Nm、前足部ロッカー機能に伴う底屈モーメント(2ndピーク)0.24Nmであった。196病日当院退院。平成22年7月2日より当院外来リハ通院。当院入院当日よりSHBからGSDへ変更し、評価として、歩行周期中にGSD足継手が発揮する底屈制動力と足関節の関節運動の測定を可能とするシステムであるGait Judge(安井ら、2009)を使用し、1stピーク(踵接地時の前脛骨筋による底屈モーメント)と2ndピーク(踵離地~足趾離地時の下腿三頭筋のStretch Shortening Cycle)の底屈モーメントを測定し、その平均値から歩容を数値化し入院時から退院時かけての変化を比較検討した。<BR>【説明と同意】<BR>本症例には症例報告をさせていただく主旨を説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR>退院時、上田式片麻痺機能テスト右上肢10手指5下肢7、右足関節可動域背屈5°。下腿三頭筋の筋緊張MAS1 。MMT右下肢股関節屈曲4・伸展3、膝関節屈曲4・伸展5、足関節背屈3・底屈3。1stピーク3.93Nm、2ndピーク1.15Nmに改善した。しかし、足趾離地からの足関節底屈が持続しており、Extention thrust putternが出現し、足関節分離運動の不十分な波形となっていた。<BR>【考察】<BR>SHBの様な足関節固定式短下肢装具は、足関節底背屈運動が妨げられる。しかし、GSDは底屈制動・背屈フリーであるため、立脚初期では踵接地から滑らかな足底接地となり(踵ロッカー)、立脚中期では足関節背屈運動を妨げずに下腿三頭筋の筋収縮を可能とし(足関節ロッカー~前足部ロッカー)、遊脚期ではクリアランスの確保が可能となる。よって、本症例に対し、入院初期よりSHBからGSDへ変更した。しかし、入院時評価では2ndピークが0.24Nmであり、前足部ロッカーが機能していない数値となった。この結果となった原因として、下腿三頭筋の筋短縮による右足関節の背屈可動域制限と、足関節底屈・背屈筋群の歩行周期中の筋活動が不十分であることと考えた。<BR>この原因に対し、物理療法(低周波)を含めた足関節可動域訓練、足関節底屈・背屈筋群や下肢伸展筋群に対する筋力強化訓練を行い、下腿三頭筋の筋活動を得るために、段差を利用したステップ訓練等を行なった。さらに、退院後の自主訓練として、セラバンドを用いた下肢筋力強化、超音波機器やストレッチボードを利用した下腿三頭筋のストレッチを指導した。上記のリハビリテーションプログラムを施行したことにより、退院時のGait Judge評価結果では2ndピーク1.15Nmとなり、入院時と比較して向上した。つまり、前足部ロッカーの出現が認められた。また、Gait Judgeのデータから得られた歩行周期中の底屈モーメントの波形を視覚的フィードバックしながらの運動学習が可能となり、歩行練習に対するモチベーション維持につながったものと思われる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>本症例においてGSDを使用することで、歩行中の前足部ロッカー機能が再獲得された。片麻痺患者に対する歩行練習では、正常歩行に見られるロッカー機能を阻害しない装具の使用と、正常歩行に近似した下肢アライメントの筋活動を引き出す歩行練習を実施することが重要と思われる。さらに、視覚的フィードバックを活用した動作訓練をすることにより、対象症例に自らの歩行動作を確認しながら正常歩行に近い歩行動作を学習することが可能であることが分かったことは今回の研究において意義のあるものとなったと考えられる。