著者
原 寛美
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.516-526, 2012-07-20 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3 6

脳卒中後に生じる可塑性の知見に基づき,脳卒中リハビリテーションは進められる必要性がある.Critical time windowと呼ばれる発症後2〜3週以内に,効果的なリハビリテーションの介入をすることが可塑性を最大限に引き出すことになる.急性期からの運動機能回復のステージ理論が提唱されている.急性期は残存するcorticospinal excitabilityに依拠する回復であり,3ヵ月で終了する.その後3ヵ月をピークに生じているメカニズムは皮質間抑制が解除されるintracortical excitabilityであり6ヵ月まで続く.その後6ヵ月以後も続くのはtraining-induced synaptic strengtheningのメカニズムである.それぞれの時期に効果的なリハビリテーションプログラムを選択する必要性がある.治療的電気刺激,ミラーテラピー,課題志向的訓練などがプログラムの選択肢となる.経頭蓋磁気刺激と集中OT(Neuro-15)は,従来は困難であった慢性期における上肢手指麻痺改善に向けた新たなリハビリテーションの手法である.
著者
原 寛美
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.516-526, 2012
被引用文献数
6

脳卒中後に生じる可塑性の知見に基づき,脳卒中リハビリテーションは進められる必要性がある.Critical time windowと呼ばれる発症後2〜3週以内に,効果的なリハビリテーションの介入をすることが可塑性を最大限に引き出すことになる.急性期からの運動機能回復のステージ理論が提唱されている.急性期は残存するcorticospinal excitabilityに依拠する回復であり,3ヵ月で終了する.その後3ヵ月をピークに生じているメカニズムは皮質間抑制が解除されるintracortical excitabilityであり6ヵ月まで続く.その後6ヵ月以後も続くのはtraining-induced synaptic strengtheningのメカニズムである.それぞれの時期に効果的なリハビリテーションプログラムを選択する必要性がある.治療的電気刺激,ミラーテラピー,課題志向的訓練などがプログラムの選択肢となる.経頭蓋磁気刺激と集中OT(Neuro-15)は,従来は困難であった慢性期における上肢手指麻痺改善に向けた新たなリハビリテーションの手法である.
著者
佐藤 貴子 町田 隆一 大塚 功 原 寛美
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.620-624, 2006 (Released:2006-10-26)
参考文献数
12

急性期脳卒中リハビリテーションでのラクナ梗塞の治療成績について調査した.対象は2004 年1 月から2005 年5 月までに当院へ入院し,リハビリテーション科へ入院あるいは経過で転科し,急性期リハビリテーションを実施した急性期ラクナ梗塞患者51例で,電子カルテより後方視的に調査した.その結果,患者全体の平均在院日数は31.9±15.6日であった.入院時のmotor FIM平均は41.0±18.4 点で退院時のmotor FIMの平均は68.7±19.9 点,motor FIM gainの平均は,27.7±15.3 点で,motor FIM gain/dayは1.3±0.9であった.ADLは,入院時は82%がmodified Rankin Scale(mRS)4以上の症例であったが,退院時はmRS3以下86%の歩行獲得率であった.退院時の転帰は51 例中43 例(84%)が自宅退院,残り8 例が回復期リハ病棟へ転院という結果であった.今回の調査から,ラクナ梗塞では早期にリハビリを処方し離床開始を実施することで約1 カ月の入院期間で歩行獲得および自宅復帰までが十分可能であると推察された.
著者
川口 侑子 牛頭 夕子 水原 寛美 田原 雄一郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.7-12, 2015-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7

シリカゲルのゴキブリに対する効果は,粒子径の大きさに左右された.470 meshであれば,1m2あたり3gの処理で感受性系統ならびに抵抗性系統のチャバネゴキブリに対して,24時間で85%以上の個体が死亡した.30 mesh, 40 meshの粒子径のシリカゲルでは殺虫効力が見られなかった.トビイロゴキブリ老齢幼虫に対する殺虫効果 は劣った.470 meshのシリカゲルを室内に7日間放置した時の吸湿の程度は低く,殺虫効力には大きな影響をもたらさなかった.シリカゲルで死亡したゴキブリの肢や触角は硬直し,時間とともに脱落した.一連の試験から,処理面が乾いている場所でのシリカゲル微粉末処理は,チャバネゴキブリ駆除に対し有効で,現場での実用性が期待される.
著者
渡部 宏幸 平山 和美 古木 ひとみ 貝梅 由恵 濱田 哲 原 寛美 山尾 涼子 今村 徹
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.35-43, 2017-03-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
11

左側頭葉後下部の皮質下出血後に,抽象的態度の障害を呈した症例を報告した.症例は69歳,右利き女性.回復期に,以下の所見がみられた.(1)性質の似た色の聴覚指示および分類,色の呼称の障害.(2)実際の家具の聴覚指示において,対象の個別性にこだわった反応.両者はGoldstein(1948)およびYamadoriら(1973)が報告した抽象的態度の障害と類似しており,本症例にも既報告例と共通の障害が存在すると考えられた.
著者
角田 亘 安保 雅博 清水 正人 笹沼 仁一 岡本 隆嗣 原 寛美 木村 知行 武居 光雄
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.274-280, 2013-07-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

要旨:【目的】健側大脳への低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(以下,RTMS)と集中的作業療法(以下,OT)は,いずれも脳卒中後上肢麻痺に対する有効な治療的介入である.本研究では,これら2つの介入の併用療法の安全性と有用性を検討した.【方法】全国8つの施設に入院し本併用療法を施行された上肢麻痺を呈する脳卒中患者1,008人を対象とした.各対象は15日間の入院下で,20分間の低頻度RTMSと120分間の集中的OTからなる併用療法を計22セッション施行された.【結果】全患者が有害事象をみることなく本併用療法を完遂した.治療によりFugl-Meyer Assessment点数,Wolf Motor Function Testの課題遂行平均時間,Functional Ability Scale点数が有意に改善した.【結論】我々が考案した併用療法は安全であり,脳卒中後の上肢麻痺を改善する可能性が示唆された.
著者
高橋 静恵 大塚 功 山崎 慎也 高井 浩之 両角 淳平 原 寛美 山口 浩史 安井 匡
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BcOF1034-BcOF1034, 2011

【目的】<BR>脳卒中患者が使用する下肢装具には、正常歩行に近似した歩行動作を獲得するための代償的機能が求められる。今回Shoehorn Brace(以下SHB)使用し自立歩行を獲得した回復期脳卒中患者に対し、Gait Solution Design (以下GSD)を使用し歩行練習を実施することで、正常歩行により近い歩行動作を獲得した症例を経験した。その歩容評価と装具療法に関する新しい知見を得たので考察を加えて報告する。<BR>【方法】<BR>症例は47歳の女性。平成21年11月21日、脳梗塞発症。右片麻痺・失語症を呈した。I病院搬送。t-PA施行するも再開通せず、血栓溶解療法を追加したが、頭部CT上左内包から放線冠にかけて梗塞を認めた。31病日、回復期病院へ転院、SHB作製。屋外自立歩行を獲得した。166病日自宅退院。182病日CI療法目的にて当院入院。入院時、上田式片麻痺機能テスト右上肢9手指5下肢6、右足関節関節可動域背屈0°。下腿三頭筋の筋緊張はModified Ashworth Scale(以下MAS)3。MMT右下肢股関節屈曲3・伸展2、膝関節屈曲2・伸展4、足関節背屈2・底屈2。FIM126/126点。踵ロッカー機能に伴う底屈モーメント(1stピーク)4.06Nm、前足部ロッカー機能に伴う底屈モーメント(2ndピーク)0.24Nmであった。196病日当院退院。平成22年7月2日より当院外来リハ通院。当院入院当日よりSHBからGSDへ変更し、評価として、歩行周期中にGSD足継手が発揮する底屈制動力と足関節の関節運動の測定を可能とするシステムであるGait Judge(安井ら、2009)を使用し、1stピーク(踵接地時の前脛骨筋による底屈モーメント)と2ndピーク(踵離地~足趾離地時の下腿三頭筋のStretch Shortening Cycle)の底屈モーメントを測定し、その平均値から歩容を数値化し入院時から退院時かけての変化を比較検討した。<BR>【説明と同意】<BR>本症例には症例報告をさせていただく主旨を説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR>退院時、上田式片麻痺機能テスト右上肢10手指5下肢7、右足関節可動域背屈5°。下腿三頭筋の筋緊張MAS1 。MMT右下肢股関節屈曲4・伸展3、膝関節屈曲4・伸展5、足関節背屈3・底屈3。1stピーク3.93Nm、2ndピーク1.15Nmに改善した。しかし、足趾離地からの足関節底屈が持続しており、Extention thrust putternが出現し、足関節分離運動の不十分な波形となっていた。<BR>【考察】<BR>SHBの様な足関節固定式短下肢装具は、足関節底背屈運動が妨げられる。しかし、GSDは底屈制動・背屈フリーであるため、立脚初期では踵接地から滑らかな足底接地となり(踵ロッカー)、立脚中期では足関節背屈運動を妨げずに下腿三頭筋の筋収縮を可能とし(足関節ロッカー~前足部ロッカー)、遊脚期ではクリアランスの確保が可能となる。よって、本症例に対し、入院初期よりSHBからGSDへ変更した。しかし、入院時評価では2ndピークが0.24Nmであり、前足部ロッカーが機能していない数値となった。この結果となった原因として、下腿三頭筋の筋短縮による右足関節の背屈可動域制限と、足関節底屈・背屈筋群の歩行周期中の筋活動が不十分であることと考えた。<BR>この原因に対し、物理療法(低周波)を含めた足関節可動域訓練、足関節底屈・背屈筋群や下肢伸展筋群に対する筋力強化訓練を行い、下腿三頭筋の筋活動を得るために、段差を利用したステップ訓練等を行なった。さらに、退院後の自主訓練として、セラバンドを用いた下肢筋力強化、超音波機器やストレッチボードを利用した下腿三頭筋のストレッチを指導した。上記のリハビリテーションプログラムを施行したことにより、退院時のGait Judge評価結果では2ndピーク1.15Nmとなり、入院時と比較して向上した。つまり、前足部ロッカーの出現が認められた。また、Gait Judgeのデータから得られた歩行周期中の底屈モーメントの波形を視覚的フィードバックしながらの運動学習が可能となり、歩行練習に対するモチベーション維持につながったものと思われる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>本症例においてGSDを使用することで、歩行中の前足部ロッカー機能が再獲得された。片麻痺患者に対する歩行練習では、正常歩行に見られるロッカー機能を阻害しない装具の使用と、正常歩行に近似した下肢アライメントの筋活動を引き出す歩行練習を実施することが重要と思われる。さらに、視覚的フィードバックを活用した動作訓練をすることにより、対象症例に自らの歩行動作を確認しながら正常歩行に近い歩行動作を学習することが可能であることが分かったことは今回の研究において意義のあるものとなったと考えられる。