- 著者
-
高田 俊二
- 出版者
- 社団法人 日本写真学会
- 雑誌
- 日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
- 巻号頁・発行日
- vol.83, no.3, pp.252-260, 2020 (Released:2021-11-02)
- 参考文献数
- 23
歴史写真はその現場の姿を後世にまで正確に伝えるが,当時の人が抱いていた関心事や現場を訪れた人の印象まで伝えるのは難しい.1863 年外国人居留地横浜に写真スタジオを開設し,スイス使節団あるいはオランダ領事に随行して江戸を訪れた英国人写真家フリーチェ・ベアトは,江戸界隈の写真を数多く残している.そして古代都市トロイヤを1871年に発見したハインリッヒ・シュリーマンは,それに先立つ1865年に世界漫遊の中で一ヶ月間日本に滞在した.彼は米国代理公使の招待で5日間横浜から江戸への小旅行を行い,その記録を彼の旅行記に収めた.本報では,ベアト写真とシュリーマン旅行記を重ね合せ,①外国人の殺害現場,②愛宕山のパノラマ風景,③浅草観音寺,④王子の茶屋の4つの場所で,当時の外国人の関心事と印象を考察してみた.