著者
高田 晴子 高田 幹夫 金山 愛
出版者
Japan Society of Health Evaluation and Promotion
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.504-512, 2005-11-10 (Released:2010-09-09)
参考文献数
12
被引用文献数
13 10

加速度脈波測定システム (APG) を用いて, 1) 自律神経機能評価の異なった指標である心拍変動係数 (CVaa%) と心拍変動周波数解析 (MEM法) の低周波領域と高周波領域のパワー比 (LF/HF) の関係性を明らかにすること, 2) 安静時および日常活動時のLF/HFの標準範囲を得ること, 3) 心拍変動周波数解析パラメータのサーカディアンリズムの存在の検討である。対象および方法: 1) 21歳女性1名を対象に62日間起床直後にAPG2分間と基礎体温を記録した。2) 健常男性30~59歳の193名について午後時間に運動前と運動後のAPGを2分間測定した。統計的解析: 1) 起床時のCVaa%, LF, HF, Total Power, LF%, HF%, LF/HFの62日間の平均を算出した。各パラメータと基礎体温との相関関係およびサーカディアンリズムを観察した。2) 上記の各パラメータについて, 加齢差および運動の影響を統計的に検討した。CVaa%と脈拍数に相関するパラメータを調べた。結果: 1) 起床直後のLF/HFは1.4±0.9であった。また, 基礎体温と有意な相関関係を示したのはTotal Power, HF, LFであった。これらは二相性のサーカディアンリズムを持ち, 基礎体温とは逆の関係を示した。2) 運動前も後もLF, HF, Total Power, HF%, LF%について有意な加齢差はなかった。運動前LF/HFも有意な加齢差はなかったが, 運動後LF/HFは高齢者の方が有意に小さかった。運動前に比べて, 運動後のTotal Powerは有意な変化がなかった。運動後のHF, HF%は有意に減少した。運動後のLF%およびLF/HFは有意に増加した。なお, 運動前のLF/HFの95%信頼区間は2.0~2.6, 運動後は4.3~5.7であった。CVaa%と有意に相関したのはTotal Power, LF, HFであり, LF%, HF%, LF/HFとは有意な相関はなかった。結論: 1) LF/HFは非常に安静な状態では2.0より小さく, 日常の安静時では2~3, 副交感神経活動が抑制または交感神経活動の興奮状態では4.0以上の値が目安となる。2) CVaa%は自律神経活動を反映するが, LF/HFとは関係がなく自律神経バランスを反映するわけではない。3) 若い女性の自律神経活動は基礎体温と逆の二相性のサーカディアンリズムを持つ。
著者
黒木 直美 宮下 奈々 日野 義之 茅嶋 康太郎 藤野 善久 高田 幹夫 永田 智久 山瀧 一 櫻木 園子 菅 裕彦 森田 哲也 伊藤 昭好 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.49-59, 2009 (Released:2009-10-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

小規模事業場において良好実践を行っている事業者の産業保健ニーズに関する質的調査:黒木直美ほか.産業医科大学医学部公衆衛生学―本研究では,小規模事業場における事業者の産業保健ニーズあるいは良好実践の動機を把握することを目的とした.これまでの調査では小規模事業場における産業保健活動の遅れが報告されている.これらの知見は主に質問紙調査から得られたものである.しかし,小規模事業場には事業者の意識が直接反映されるという特徴があり,積極的に産業保健活動に取り組んでいる事業場も存在している.このような小規模事業場の良好実践例において,事業者のニーズを分析した研究はこれまでにない.産業保健に対する事業者の動機を明らかにすることは小規模事業場間に良好実践を水平展開する一助となると考えられる.そこで,我々は産業保健活動の良好実践が行われている小規模事業場10社の事業者と半構造化面接を行い,その逐語録をKJ法を用いた質的手法で分析した.その結果,事業者はもっぱら「よい会社」,「よい経営」を強く意識していることが明らかになった.「よい経営」のための要素には「人材確保」,「取引先の信用」,「社会的信用」,「社長自身の健康」という4つがあった.事業者はこれらの要素を達成するため職場の安全,従業員の健康に関する活動は当たり前であると考えていた.さらに,具体的な活動には「コストの問題」,「担当者の問題」,「時間がない」,「外部資源」という既知の制約があった.調査結果から,経営と安全衛生活動を関連づけることが小規模事業場における安全衛生活動の向上に寄与すると考えられた. (産衛誌2009; 51: 49-59)