著者
高田 正三
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.43-58, 1991-07

脊髄損傷者に,社会復帰後の生活状況をアンケート調査し,社会復帰に影響を及ぼす要因を検討した。対象は頸損54例,胸損43例,腰損21例の計118例で,退院後,87%が自宅生活をし,日常生活動作や車いす動作で介助を要するものが,それぞれ41%,31%で,介助者の多くは配偶者・親・子供で86%を占め,介助者のうちの65%が50才以上であった。社会福祉サービスの利用は19%と低く,住宅改造は72%,就労は41%,有配偶者率は51%で,11%が結婚し,11%が離婚していた。車の保有率は76%で,免許証取得者は73%であった。脊髄損傷者の社会復帰に影響を及ぼす要因は,損傷部位,年齢も大きな因子であるが,介助者の存在・住宅改造の有無・就業の有無・運転の可否・配偶者の有無などの社会的要素も大きく関与し,これらは個人的努力はもちろん,社会的合意のもとに,公的制度により解決が図られるべきものと考える。