著者
高谷 美正 鈴木 修 山内 洋 中里 真久 猪上 華子
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1037-1054, 2011-12-31
被引用文献数
2

2007年4月28日午後,関東地方は雷雨・突風・降雹を伴う大荒れの天気となり,各地で被害が相次いだ.この事例について,ドップラーレーダー,高層気象観測,ウィンドプロファイラー,地上気象観測の各データおよび被害調査等から解析を行った結果以下のことがわかった.(1)被害をもたらした降水システムは,ボウエコー(弓形のエコー)の特徴を備えていた.(2)レーダーのデュアル解析により,このボウエコーの先端部分に鉛直渦度と水平収束の大きい領域が解析された.この領域の形状と振る舞いは先行研究のサイクロニックなメソサイクロンと良く似た特徴を持っていた.この領域は当初中空(地上2〜4km)に浮いていたが,その後その南西端が地上付近に垂れ下がるような形状となった.この時にその足付近で,低層のPPIデータにマイソサイクロンが2つ検出され,これらは鉛直渦度と水平収束の大きい領域とともに東南東に移動した.(3)2つのマイソサイクロンの内,より南側を通過したマイソサイクロンが,東京湾岸地帯の約18kmにわたる直線上の複数の場所に突風被害をもたらした.低層のPPIデータによる見積りでは,被害場所は,渦の風と渦の移動速度が線形の重ね合わせによって強め合う場所で起きており,風速は最大40ms^<-1>ほどに達したと見積もられる.(4)サイクロニックなメソサイクロンの発生機構として,先行研究の数値実験において,「下降域内を下降する空気塊が,ガストフロントをまたぐ傾圧帯において傾圧効果により水平渦を獲得する.その水平渦がガストフロントに沿って存在する上昇流によって上方に傾けられて鉛直渦度を獲得し,更に延伸することにより鉛直渦度が強められる」というものが挙げられている.この発生機構が実際に働いていることを示唆する解析結果が得られた.(5)被害が最初に起きた時刻の約10分前に,仰角の高いドップラーデータで見ると,ボウエコーの先端部分において動径風の収束が強まっていた.これはマイソサイクロンの前兆現象として突風の直前予報に役立つと思われる.
著者
森 真理子 高谷 美正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.567-581, 2004-08-31
参考文献数
34
被引用文献数
9

1996年から2001年にかけて,関東地方で降ひょうやダウンバーストによる被害が発生した1996年7月15日,2000年5月24日および2001年5月11日の3事例について,空港気象ドップラーレーダーや気象レーダー,高層気象観測,地上の気象データおよび被害調査等から解析を行った結果,以下のことがわかった.(1)いずれの事例も単一セル構造で,システムの中層にメソサイクロンとBWER(bounded weak-echo region),その上層にヴォールトを有しており,孤立したスーパーセルの特徴を備えていた.各事例の時間・空間スケールや擾乱の激しさの度合いは,大気の不安定度,風の鉛直シア,大気下層の収束場と密接な関連があった.(2)これらのシステムには,共通するライフサイクルがあった.始めに暖湿なS風と冷たく乾いたN風の収束領域で,南西端のエコーが発達してひょう域が生じ,それが一旦急減した後,システムは次第に発達してひょうコア(エコー強度60dBZ以上の部分)やWERが出現した.やがてシステムはNE風の領域に入り,BWERが形成された(形成期).その後システムは鉛直方向に急成長して発達期を迎え,その直後に顕著なダウンバーストが発生した.続いて上空でひょう域が拡がり成熟期となって,降ひょう被害が継続し,やがて衰退期に入りダウンバーストが発生した.この変化とともに,約18〜24分周期でひょうコアの降下や上昇の繰り返しがあった.
著者
高谷 美正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.445-450, 1995-07-31
被引用文献数
1