著者
高谷 邦彦
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2016-03-24

「インターネットは、印刷術以来の最も重要なメディア」(ギルモア, 2004[2005], p.381)であることを否定する者は今やいないだろう。インターネットは個人のライフスタイルを大きく変えただけでなく、20 世紀には想像すらできなかったビジネスモデルを生み出し、さらに、2011 年にアフリカ諸国で起きた政変のように、革命の武器として国家を揺るがすほどの力すら備えていることが証明された。私たちは今、メディアの革命期に生きている。1990 年代後半に広く社会に普及したインターネットと呼ばれるコンピューター・ネットワークと、そのネットワークを利用した電子メールやウェブ(World Wide Web)などの各種サービスが、私たちの生活スタイルや社会、ビジネス、考え方、行動などをすっかり変えてしまった。ポケットに入る小さなウェブ端末のスマートフォンがあれば、どこにいてもプライベートから仕事までたいていの用事を済ませることができる。私たちのコミュニケーションのスタイルも大きく変化した。20 世紀までの手紙や電話を主体としていたパーソナルなコミュニケーションがインターネットを介した電子メールや各種メッセージサービスによって強化され多様化しただけでなく、個人レベルでもマス・コミュニケーションを実現することが容易となり、世界中の不特定多数の人々と様々なスタイルでコミュニケーションを取ることが可能となった。 インターネット、特にウェブが、この10 数年間で世界と私たちを一変させたのである。私たちは情報の発信者となった。1999 年9 月に米国パイララボ社(Pyra Labs)がBlogger.com というブログ作成サイトを開設したのを契機として、誰でも気軽に利用できるブログ(Weblog:ウェブログ)サービスが日本を含む世界各国に普及するようになり、以降、プロフェッショナルの書き手ではない一般の生活者による文章がウェブに溢れることになった。2000 年代後半になってブログ・ブームが一段落してからも、短文投稿サービスのTwitter や、動画共有サイトのYouTube、日記や近況を時系列で管理するブログ的な要素を持つSNS が人々の生活に定着し、日々の出来事や何気ないつぶやきを投稿したり、自ら撮影した写真やビデオを公開したりするなど、日々のプライベートな生活の様子をウェブという公開の場に記録し発信するという行為がごく日常的なものとなっている。ウェブには多数の個人のプライベートな行動の記録がマルチメディアなデジタルデータとして集積され始めた。特に日本人が運営するブログは「ウェブ日記」的な内容が多いと言われる。『ソーシャルメディア白書2012』(トライバルメディアハウス& クロス・マーケティング, 2012)によると、ブログの利用目的では「自分の個人的な雑感などを発信するため」が最も多い(26.9%)。日記というのは「その個人が生きた時代と社会的背景を共有して生きた人びとの生活を紐解くための資料」(水越, 2002, p.37)であり、学術的に貴重な資料である。しかし日記というものは公開を前提としたものではないため、著名人や作家など一部の例外はあっても、不特定多数の生活者の日記を自由に閲覧することは困難であった。したがって一般人の日記を資料とした研究はなかなか発展してこなかったわけであるが、2000 年代になって日記がウェブという公開の場で書かれるようになり、個人的な生活の記録(ライフログ)を分析することで、2000 年代に生きる人々の生活や行動を紐解くことが可能になった。 多数の人々が個人的な生活の記録を公開して、いわゆる「ビッグデータ」が入手可能になった。それを分析することで、2000 年代の人々の生活や行動を紐解くことが可能になろうとしている。現在、情報ネットワーク分野の研究では、アンケート調査、各種ログの収集解析、テキストマイニングなどによる定量的な分析手法が主流となり、さまざまな成果を上げている。一方で、グローバリゼーションとパーソナライゼーションの2極化が進んだ現代の多様化した個人の特性は、数値化した膨大なデータの定量的分析では見落とされてしまうのではないかという疑問もある。「マスの時代」から「多様な個の時代」へと変容を遂げた社会背景のなか、マス・データを扱うのではなく、生活者個々人の日常的なコンテキストに注目することによって初めて見えてくる事実もあるのではないか。本研究の最大の関心はそこにあり、ミクロ的視点で個人ユーザのライフログを観察・分析することにより、現代の人々のウェブにおける行動原理の一端を明らかにしようとするものである。
著者
高谷 邦彦
出版者
名古屋短期大学
雑誌
名古屋短期大学研究紀要 = BULLETIN OF NAGOYA COLLEGE (ISSN:0286777X)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-13, 2019-03-16

家庭や職場・学校とは別に、趣味など共通の話題で多様な人々と平等につながる「第三の居場所」(サード・プレイス)の重要性と必要性についてはかねてから認知されてきたが、個人化が進み各種のコミュニティが衰退しつつある現代社会においてサード・プレイスの減少が社会問題化していた。21世紀になってインターネットが普及し、今ではオンラインのSNSがサード・プレイスとして機能する可能性が指摘されている。本論文では代表的なSNSの一つであるTwitterが、現実社会では孤立しがちな子育て主婦にとって気軽に参加できるサード・プレイスとして有効利用されているのではないかというリサーチクエスチョンに基づき、実際に投稿されたツイート内容をエスノグラフィの手法を用いて質的に分析したものである。その結果、匿名で育児中のストレス発散や悩みを吐露し相談する場としてwitterが活用され、オンラインのサード・プレイスとして機能している実態が明らかとなった。
著者
高谷 邦彦
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.49-56, 2008-11-30

本論は,筆者が北海道稚内市で運営しているユーザ参加型ポータルサイト「さいほくネット」のデータをもとに,動画コンテンツを主体としたCGM(ユーザ参加型サイト)によって,地方都市が抱える情報発信の課題を克服する可能性を検討したものである。「さいほくネット」および動画共有サイト「YouTube」でのアクセス解析によると,日本においては主に中高年男性が地域情報の動画コンテンツを閲覧していることから,地方都市においてコストをかけずに地域情報を発信するには,地域の景観や歴史に関する動画コンテンツを制作し,ユーザ参加型のサイトを利用して発信してゆくことが現時点でもっとも有効な手段の一つであることがわかった。