著者
萩野 恭子 堀口 健雄 高野 義人 松岡 裕美
出版者
日本プランクトン学会
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.73-80, 2011 (Released:2012-12-03)
著者
高野 義人
出版者
長崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

東シナ海東部外洋域五島灘海域3地点において月に一度の採水,2011年6月20日から30日の長崎大学附属練習船長崎丸第331次航海において長崎県新長崎漁港~沖縄県西表島を往復の間に掛け流し海水濾過による採集を34回行った。それらの試水から得た外洋性渦鞭毛藻,特にDinophysiales類のAmphisolenia属2種、Citharistes属1種、Histioneis属3種、Ornithocercus属4種、Parahistioneis属2種、また、Gonuaulacales類のCeratium属25種、Gymnodiniales類のBalechina属を観察し、それらの個体から単細胞PCR法によるリボゾーム遺伝子増幅および走査型電子顕微鏡観察を行った.その結果,HistioneisとParahistionersは、藍藻類に加えて好気性光合成紅色細菌を共生体として持っており,さらに、Amphisoleniaの'細胞内'共生体とOrnithocercusの細胞外共生体は共通起源であることが判明した.これらの結果より,祖先となるDinophysiales渦鞭毛藻と藍藻が細胞内共生関係を確立し,その後の進化過程で共生藻を喪失して従属栄養性に変化したり,細胞外共生関係を構築したりするような多様性が生まれたことを明らかにした.また,Ceratium属に付いての成果は,変種や亜種と識別されてきた種類は遺伝的に分化していることが示され,小さな形態的差異が種識別に重要な形質となることを明らかにした.これらはDinophysiales類や外洋性Ceratium属の進化に付いての理解を一層深化させることとなった.