- 著者
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松岡 裕美
高木 直
大森 桂
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.46, pp.77, 2003
<b><目的></b> 現在、高齢社会の担い手である若者が家庭や地域で高齢者と関わる機会は大変少なくなっている。しかし、若者が生活していく上で、他世代との共生は不可欠である。現行の学習指導要領では、高等学校家庭科においては、高齢者学習が位置づけられているが、中学校は選択領域であり明確には位置づけられていない。しかし、高齢者理解は中学生にとっても重要であり、著者らは、病床にある介護の必要な高齢者と関わるよりも、健康な高齢者と一緒に活動したり、高齢者の知恵や技に触れたりすることが高齢者理解により有効だと考えている。そこで、本研究では、中学生を対象に高齢者との直接体験等を通して、高齢者に対する感想の変化をとらえ高齢者理解を分析することを目的とする。 <br><b><方法></b> 対象は、山形大学教育学部附属中学校3年生であり、選択家庭科履修1クラス35名(男子 9名・女子26名)である。授業実践時期は2003年5月~7月である。具体的な方法は、? 単元導入時に高齢者に対するイメージ調査をする。 ? 高齢者と直接かかわる機会を持ち、感想文を書かせる。? 高齢者が活躍するビデオ(番組「鉄腕DASH」)の鑑賞後に感想文を書かせる。 以上の活動から得られたイメージ調査結果及び二つの感想文の分析をおこなった。なお、イメージ調査のカテゴリー分類は、山形大学教育学部3・4年生40名を被験者として2003年7月に実施した。 <br><b><結果></b> <b>(1)高齢者に対するイメージ</b> 「おとしより」をキーワードとして与え、このことばからイメージすることばを自由に書かせた。そのことばを大学生に判定させ、プラスイメージ・ニュートラルイメージ・マイナスイメージに分類した。「お茶」「早寝早起き」「物知り」「やさしい」などはプラスイメージに判定され、「白髪」「めがね」「つえ」などはニュートラルイメージに判定され、「ボケ」「入れ歯」「病院」などはマイ ナスイメージに判定された。各生徒について、その生徒がイメージしたことばを3つのイメージ群に分類し、各イメージ群のことば数の多い者をグルーピングした。プラスイメージの多い群をA群、ニュートラルイメージの多い群をB群、マイナスイメージの多い群をC群とした。その結果、A群は13人、B群は11人、C群は10人であった。<br><b>(2)高齢者と直接かかわる機会後の感想文</b> 「活動内容」だけを書いている生徒はC群に多く、「高齢者」について書いている生徒はA群に多かった。また、「活動の感想」について肯定的な感想を書いた生徒はA群に多く、特に「高齢者と会話をして楽しかった」という内容の感想を書いた生徒はC、B、A群の順に人数が増加した。<br><b>(3)高齢者が活躍するビデオ鑑賞後の感想文</b> 感想文中、高齢者に言及している字数は、A・B群に多く、C群が少なかった。感動を表わした感想を書いた生徒はA群に多く、消極的な感想を書いた生徒はC 群に多かった。しかし、「今後の展望」についての感想はC群が多かった。「高齢者」そのものに言及している生徒はA群に最も多く、次いでB群、C群の順であった。全体的に、A群は肯定的な感想や高齢者自身に着目している生徒が多く、C群は高齢者には着目せず活動内容のみの記述が多くみられた。しかし、C群のみの感想文の変化をみれば肯定的な感想や「今後の展望」への言及が増加し、健康な高齢者と直接かかわることの有効性が示唆された。