著者
大西 啓祐 佐井 康真 浜田 和也 佐藤 多未笑 相磯 崇 高須 直樹 二瓶 義博 五十嵐 幸夫 長谷川 繁生
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-40, 2022-01-01 (Released:2022-01-28)
参考文献数
32

症例は16歳の男性で,3年以上にわたり小児科で嘔吐症として保存的治療を受けていたが改善せず当科に紹介となった.大動脈と上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)間のなす角度は13°,距離も5.6 mmと狭小化しておりSMA症候群と判断した.当科でも保存的治療を継続したが,改善が得られずやむをえず外科治療を行う方針となった.さまざまな治療法の報告があるが,若年でもあり整容性と最大限の治療効果を期待して,腹腔鏡下にダブルトラクト法による再建する手術を施行した.吻合は2か所となり手術時間は205分とやや長めながら,完全腹腔鏡視下に施行可能であった.経過は良好で術後10日目に退院となった.当手術法は生理的経路の確保と十二指腸転位術の双方のメリットを生かせると思われ,治療法の選択肢の一つになりうると考えられた.
著者
磯部 秀樹 高須 直樹 水谷 雅臣 木村 理
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.599-605, 2007 (Released:2007-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
6 5

目的:がん罹患率のなかで大腸癌が増加しているが,高齢者に対する手術や化学療法も増加してきている.高齢者に対する外科治療の問題点を明らかにすべく,近年の高齢者大腸癌の特徴を調べた.方法:1990年から2004年までの15年間に手術を施行した80歳以上の高齢者大腸癌67例(男性38例,女性29例)について,70歳∼74歳の大腸癌症例130例を対照とし,臨床病理学的特徴,手術術式,術前の併存基礎疾患,術後合併症,化学療法,術後生存率に関して検討した.結果:大腸癌の進行度としては80歳以上群でDukes Bが多く,70∼74歳群でDukes Aが多かった.結腸癌では2群間に手術術式による差はなかったが,直腸癌においては,80歳以上群にハルトマン手術と経肛門的局所切除が多かった.リンパ節郭清では結腸癌においては有意差をみとめなかったが,80歳以上群の直腸癌において郭清度が低く,直腸癌において2群間に有意差を認めた.根治度には有意差はなかった.術前併存基礎疾患は80歳以上群で76%に認められ,循環器疾患が多く,次いで呼吸器疾患,脳梗塞後遺症,老人性認知症が続いた.80歳以上の51%に術後合併症が認められ,70∼74歳群と比べ術後せん妄が多かったが他の合併症に差はなかった.80歳以上群に術死は認めなかった.結論:高齢者においても全身状態に応じた手術を行うことにより,合併症の発症を抑えQOLを損なうことなく安全な手術を行うことができると考えられた.
著者
磯部 秀樹 高須 直樹 水谷 雅臣 木村 理
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.599-605, 2007
被引用文献数
5

<b>目的</b>:がん罹患率のなかで大腸癌が増加しているが,高齢者に対する手術や化学療法も増加してきている.高齢者に対する外科治療の問題点を明らかにすべく,近年の高齢者大腸癌の特徴を調べた.<b>方法</b>:1990年から2004年までの15年間に手術を施行した80歳以上の高齢者大腸癌67例(男性38例,女性29例)について,70歳&sim;74歳の大腸癌症例130例を対照とし,臨床病理学的特徴,手術術式,術前の併存基礎疾患,術後合併症,化学療法,術後生存率に関して検討した.<b>結果</b>:大腸癌の進行度としては80歳以上群でDukes Bが多く,70&sim;74歳群でDukes Aが多かった.結腸癌では2群間に手術術式による差はなかったが,直腸癌においては,80歳以上群にハルトマン手術と経肛門的局所切除が多かった.リンパ節郭清では結腸癌においては有意差をみとめなかったが,80歳以上群の直腸癌において郭清度が低く,直腸癌において2群間に有意差を認めた.根治度には有意差はなかった.術前併存基礎疾患は80歳以上群で76%に認められ,循環器疾患が多く,次いで呼吸器疾患,脳梗塞後遺症,老人性認知症が続いた.80歳以上の51%に術後合併症が認められ,70&sim;74歳群と比べ術後せん妄が多かったが他の合併症に差はなかった.80歳以上群に術死は認めなかった.<b>結論</b>:高齢者においても全身状態に応じた手術を行うことにより,合併症の発症を抑えQOLを損なうことなく安全な手術を行うことができると考えられた.<br>