著者
髙山 直秀 斉加 志津子 一戸 貞人
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.519-524, 2009
被引用文献数
6

これまで臨床現場では,麻疹に対する免疫の程度を知るための簡便な方法として,赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition : HI)抗体価が測定されてきたが,近年酵素抗体(enzyme-immunoassay : EIA)法による麻疹EIA-IgG 抗体価が用いられている.HI 法は,麻疹ウイルスが細胞に結合するために必要なH 蛋白に対する抗体を測定しているので,感染防御能を反映すると考えられるが,麻疹EIA 法は,ゼラチン粒子凝集(particle agglutination,PA)法と同様に,感染防御に関与しない抗体も含めて測定するため,EIA-IgG 抗体価は必ずしも麻疹に対する発症防御の程度を反映しないと考えられる.同一検体につき,HI 法,PA 法,中和法により麻疹抗体価を測定し,得られた抗体価との相互関係から,デンカ生研製測定キットを用いた場合,EIA-IgG 抗体価が12.0 以上であれば,麻疹発症防御レベル以上と判断できるが,EIA-IgG 抗体陽性であっても4.0 以上8.0 未満では麻疹ワクチンの追加接種が必要であり,8.0 以上12.0 未満でも追加接種が望ましいと考えられた.
著者
柳澤 如樹 髙山 直秀 菅沼 明彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.7-11, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

ジフテリア・百日咳・破傷風3 種混合(DPT)ワクチン接種の普及により,百日咳は乳幼児の間では既に稀な疾患となっているが,欧米で10 代から若年成人での発生増加がみられ,日本でも成人の百日咳患者や大学での集団発生が報告されている.青年・成人での百日咳予防のため,米国では成人用DPT ワクチンが認可されている.一方,我が国では成人用DPT ワクチン開発の動きは見られない.そのため青年・成人での百日咳予防のためには,国内で市販されている小児用DPT ワクチンを使用するほかない.我々は,小児用DPT ワクチンの接種量を0.2mL に減量して,30 例の成人に接種し,その効果と安全性を調査した.DPT ワクチン0.2mL 接種後に百日咳抗PT 抗体価は29 例で,抗FHA 抗体価も29 例で上昇がみられた.破傷風抗毒素価は,破傷風接種歴がないと思われる2 例を除いた28 例で上昇していた.小児と比較して接種局所の副反応の発現頻度は高かったが,発熱などの全身反応の出現率は低かった.現在市販されている小児用DPT ワクチン0.2mL を成人に接種することにより,健康上大きな問題なく,百日咳抗体価の上昇が得られると考えられた.