著者
髙田 和子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.475-488, 2015-07-15 (Released:2015-07-28)
参考文献数
32

体内での栄養素の動態や利用についての研究において,安定同位体を利用する価値は高い。本稿では,二重標識水(Doubly labeled Water:DLW)法と,指標アミノ酸酸化(Indicator Amino Acid Oxidation:IAAO)法を紹介する。DLW法は,H218Oと2H2Oを使用し,自由に生活している状況でのエネルギー消費量を最も正確に評価する方法とされている。IAAO法は,多くの場合,13Cで標識したL-フェニルアラニンを指標として,体内でのアミノ酸の利用を評価する。安定同位体の活用により,従来の方法より対象者への負担が少なく,栄養素の利用を評価でき,幅広い対象における研究が可能である。
著者
吉田 明日美 髙田 和子 別所 京子 田口 素子 辰田 和佳子 戸谷 誠之 樋口 満
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.305-315, 2012 (Released:2012-12-13)
参考文献数
31
被引用文献数
1 11

【目的】女性スポーツ選手を対象に,二重標識水(DLW)法で測定した総エネルギー消費量(TEE)と,食事記録法より求めた総エネルギー摂取量(TEI)から算出したTEI評価誤差に対する種目や身体組成,食事摂取状況の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】大学女性選手38名(陸上中長距離9名,水泳10名,新体操7名,ラクロス12名)を対象とした。体重補正済みTEE(cTEE)はDLW法で求めたTEEと調査期間中の体重変動から算出し,TEIは同期間に実施した食事記録法による食事調査から計算した。【結果】cTEEとTEIは,陸上 2,673±922 kcal/day,2,151±434 kcal/day,水泳 2,923±749 kcal/day,2,455±297 kcal/day,新体操 3,276±497 kcal/day,1,852±314 kcal/day,ラクロス 2,628±701 kcal/day,2,329±407 kcal/dayであった。TEI評価誤差は,陸上-13.6±24.1%,水泳-13.3±14.3%,新体操-42.0±15.3%,ラクロス-2.8±38.3%であり,種目間の比較では新体操が有意に過小評価していたが,身体組成や食事摂取状況には競技特性はみられず,同一種目間の個人差が大きかった。評価誤差の大小で2群に分けた高精度群(評価誤差-8.4±10.7%(値の範囲:-24.8%~+14.5%))は過小評価群(-40.9±8.8%(-56.3%~-28.7%))よりTEE,脂質エネルギー比率が有意に低値であり,菓子類摂取量,食事回数,炭水化物エネルギー比率が有意に高値であった。TEEが小さいことは高精度群への分類に独立して関連していた。【結論】女性選手の評価誤差には,TEEが独立して関連し,種目や食品群別摂取量,エネルギー比率,食事回数が関連する可能性が示された。今後は,対象種目の再検討や対象者数の増加とともに,心理的,社会的要因を含めた,評価誤差に関連する要因の検討が必要と考えた。
著者
工藤 美奈子 峯木 眞知子 和田 涼子 杉山 みち子 髙田 和子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.163-171, 2018-12-01 (Released:2019-01-21)
参考文献数
21

【目的】高齢者施設で給与エネルギー目標量を設定する場合に,どのようにエネルギー必要量(以下ER)を推定しているか,推定方法の実態と推定方法や推定値の活用における課題を明らかにすることを目的とした。【方法】東京都内の介護老人福祉施設114施設,及び東京都内と神奈川県内の介護老人保健施設115施設の栄養管理者を対象に,ERの推定方法と課題について質問紙調査を行った。【結果】回収率は58.1%であった。ERの推定方法は「基礎代謝量×活動係数×ストレス係数」が64.7%と最多で,使用している基礎代謝量の推定式はHarris-Benedict式が66.1%であった。ERの推定値が対象高齢者に適切かの回答は「適切である」が21.8%,「適切ではない」が23.3%,「わからない」が49.6%であった。【結論】ERの推定値が対象高齢者に合わないと感じ,値の調整を行っている割合が44.4%であった。現在推奨されている,食事摂取基準に準じた式や数値から求めるERの推定方法は,高齢者施設の現場に適さない場合が多い可能性が示唆された。エビデンスに基づいた要介護高齢者に適したERの推定方法の確立が必要である一方で,式による推定だけでなく,個人差に対する適切な調整方法の確立も栄養ケア・マネジメントにおいては重要である。
著者
工藤 美奈子 峯木 眞知子 和田 涼子 髙田 和子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.121-129, 2018-10-01 (Released:2018-11-06)
参考文献数
23

【目的】高齢者施設におけるエネルギー必要量の推定方法として,高齢者施設内での生活活動を基にした身体活動量の質問紙を作成し,加速度計や角度計による測定との比較から質問紙の有用性を検討する。【方法】対象者は介護保険施設3施設に入所している70歳以上の16名とした。身体活動量の質問紙は,改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』を参考に作成し,施設の介護者に記入してもらった。同時期に加速度計と角度計による身体活動量調査を4日間行い,臥位,座位,立位の姿勢別時間を求めた。その姿勢別活動時間に活動強度(臥位1.0,座位1.4,立位 1.8 METs)を乗じて1日当たりの身体活動量を算出した。【結果】質問紙による1日の姿勢別活動時間の中央値は,臥位18.00時間,座位5.75時間,立位0.50時間で,身体活動量は 26.50 METs・時/日であった。加速度計による身体活動量は 28.04 METs・時/日,角度計では 26.96 METs・時/日で,3つの評価法による測定値には有意な差は認められなかった。【結論】質問紙から得られた結果に対し客観的指標である加速度計と角度計の身体活動量の差は小さかった。このことから,介護者が質問紙を用いて高齢者施設入所者の睡眠,入浴を除く日常生活活動についての姿勢を把握することにより,加速度計や角度計による測定と同程度の精度で身体活動量を推定できる可能性が示唆された。