著者
髙野 愛子
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.13-29, 2021-03-31

本研究では,大学生を対象に2つのじゃんけんの手に対する勝敗判断課題を実施し,勝敗の判断基準に関する教示を与えずに,指の本数の多い方を勝ちとする数量に応じた勝敗判断を随伴性形成することを試みた。実験1では2色の背景色を用いて,数量とじゃんけんに応じた勝敗判断を分化強化した。数量に応じた勝敗判断が自発されない参加者には,通常じゃんけんに使用されない手を選択肢に追加して提示した。分析対象とした12名のうち,正誤フィードバックに従って勝敗判断が正しく分化したのは3名のみであり,じゃんけんの手同士の組合せの提示が,日常生活におけるじゃんけんの勝敗関係に基づく勝敗判断を強力に喚起することが示唆された。実験2では,数量に応じた勝敗判断を正反応とし,これを強制的に自発させて強化する強制選択条件を実施した。加えて,自由選択条件への移行に先立ち,プロンプトフェイディング法の導入有無を参加者間で変化させた。正誤フィードバックに従わず一貫してじゃんけんに応じた勝敗判断を示した4名の参加者のうち,プロンプトフェイディング法を導入しなかった2名は,強制選択条件の提示の中止に伴い正反応率の下降を示し,正誤フィードバックが提示されなくなると4名がじゃんけんに応じた勝敗判断を示した。このことから,数量に応じた勝敗判断が維持されない原因として,正反応の強制や正誤フィードバックの有無等の事象が勝敗判断の分化を招いたことが示唆された。
著者
髙野 愛子
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.2-11, 2021-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
14

研究の目的 本研究ではじゃんけんの手に対する勝敗判断課題を用いて、勝敗の判断基準に関する言語教示を与えることなく、伸ばされた指の本数がより多い手を勝ちとする勝敗判断を形成することを通じて、通常のじゃんけんに応じた勝敗判断を維持する強力な刺激性制御を減衰させる変数を探索した。研究計画 提示された2つ、または3つの手から勝ちまたは負けとなる手を選択する課題を用いた。訓練中の反応、および訓練前後に実施したテストにおける反応から訓練の効果を検討した。場面 個別実験として実施し、ノートパソコンを用いた。参加者 大学生8名が参加した。独立変数の操作 3つのじゃんけんの手のうち異なる2つが提示される二択条件と、これら3つ全てが提示される三択条件を導入した。行動の指標 1試行で提示された手のうち、伸ばされた指の本数がより(最も)多い手を勝ち、少ない手を負けとする反応を正反応と定義し、正反応率を測定した。結果 二択条件において、三択条件の導入前は正誤のフィードバックを提示しても正反応率の上昇が見られないか、一度上昇してもテストでは維持されず下降した。一方、三択条件の導入後は正反応率が上昇し、テストにおいても高水準で維持された。結論 じゃんけんに応じた勝敗判断を維持する刺激性制御は強固であるが、3つのじゃんけんの手から勝ちまたは負けの手を1つだけ選択する課題を提示することで、その制御が減衰することが示唆された。