著者
木村 英明 小金井 一隆 篠崎 大 三邉 大介 藤井 正一 鬼頭 文彦 福島 恒男
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.50-55, 2000 (Released:2009-06-05)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

宿便性大腸穿孔の4例を経験した.症例は,男性1例,女性3例,平均年齢62,3歳で,3例は元来便秘であった.いずれも突然の腹痛で発症し,全例に嘔吐,1例に下血を認め,2例はショック症状を呈した.検査所見で,1例にfree airを,3例に腹水貯留を認め,4例とも消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.いずれもS状結腸から直腸の穿孔で,腹腔内,もしくは穿孔部に穿孔の原因と思われる硬便を認め,他部位大腸に多量の便塊を認めた.3例に病変部腸管切除,ドレナージ,入工肛門造設術を,1例にexteriorizationを施行した.いずれも術後経過は良好で退院し,2例で人工肛門を閉鎖した.切除例3例の穿孔部な,いずれも類円形,楕円形で,病理組織学的に穿孔部周囲の圧迫像を認めた.臨床症状,手術所見,病理所見より宿便性大腸穿孔と診断した.
著者
杉田 昭 小金井 一隆 辰巳 健志 山田 恭子 二木 了 黒木 博介 荒井 勝彦 木村 英明 鬼頭 文彦 福島 恒男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.66-72, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
18

痔瘻癌は痔瘻の症状が併存するため早期診断が困難で,進行癌で発見されることから予後が不良な疾患である.本邦ではCrohn病症例に合併する肛門病変として痔瘻が最も多い.Crohn病に合併する大腸癌のうち,痔瘻癌を含む直腸肛門管癌が半数以上を占めるのが本邦の特徴であり,合併する痔瘻癌の特徴は基本的に通常の痔瘻癌と同様であるが,自験例の痔瘻癌診断までの罹病期間は平均20年,癌診断時年齢は平均39歳と通常の痔瘻癌に比べて罹病期間に差はなかったものの,若い年齢で発症していた.痔瘻癌発見の動機は粘液の増加,肛門狭窄の増強,腫瘤の出現などの臨床症状の変化であることが多く,長期に経過した痔瘻を合併するCrohn病症例では痔瘻癌の合併があることを念頭に置き,痔瘻の症状の変化,肛門所見に留意して定期的な指診,大腸内視鏡検査,積極的な細胞診,生検を行うことが早期診断と長期生存に重要である.直腸肛門管癌(痔瘻癌を含む)に対する癌サーベイランスプログラムの確立が望まれ,その可否の検討が必要である.