- 著者
-
青山 真人
山崎 真
杉田 昭栄
楠瀬 良
- 出版者
- 公益社団法人 日本畜産学会
- 雑誌
- 日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, no.8, pp.J256-J265, 2001-04-25
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
-
2
馬術愛好家や職業として日頃ウマに接している人達はウマの表情からその情動をどの程度推察できるか,また,彼らはウマの顔のどの部位を手がかりとしてその情動を判断しているのかを調査した.調査は,ウマの顔の写真のみからその置かれている状況を推察し,さらに顔のどの部位を手がかりとしてその判断を下したかを答えるアンケート形式で行った.その結果,日頃ウマに接している人達143名の平均点は53.5点(全問正解の場合100点)であり,ウマに接する機会が少ない人達111名の平均点(39.4点)よりも有意に高かった.このことから,日頃ウマに接している人達は,ウマの顔の写真のみからその置かれている状況をある程度推察できるものと考えられた.ウマに接している人達が,状況を推察する際に手がかりとしてもっとも多く観察していたのは耳であり,さらに,高い正解率(55点以上)であったグループは正解率の低いグループ(55点未満)と比較して,耳を観察した回数が有意に多かった.これまでの文献から,耳はウマの感情がもっとも顕著に現れる部位とされているが,日頃ウマに接している人達は経験からそのことを知っていることが示された.しかしながら,異なる状況下であっても,ウマの耳の向きや角度が類似していたり,ほとんど同じである場合もあり,耳のみからでは正確な判断が難しい状況があることも示された.その場合には耳に注目すると同時に,他の部位やそのウマに関わっている他のウマの表情など,別の手がかりをあわせて指標とし,総合的に判断することが有効であると考えられた.