著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.
著者
鎌田 直樹 遠藤 沙綾香 杉田 昭栄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.84-90, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

ハシブトガラスCorvus macrorhynchosとハシボソガラスC. coroneの最大咬合力と最大咬合圧について圧力測定フィルムを用いて測定し,体重や顎筋質量との関係を調べた.ハシブトガラスの顎筋質量,最大咬合力および最大咬合圧はハシボソガラスのそれに比べ有意に大きく,これらの値が体重に正の相関をすることが明らかになった.また,閉口筋質量1単位あたりの最大咬合力はハシブトガラスよりもハシボソガラスの方が大きいことがわかった.
著者
杉田 昭栄 八巻 良和 志賀 徹 居城 幸夫 飯郷 雅之 横須賀 誠 青山 真人
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

果実の成熟にともない糖度含量、軟化さらに果色が増加し、酸度は減少し、収穫時以降は軟化のみ増加し、糖度や果色また酸度は平衡状態となった。この収穫前頃から、カラス等が飛来して果実をつついているのが、観察された。鳥が果実の熟成の時期を見分けることができるのは、嗅覚や視覚の発達が考えられる。そこで、まずはカラスとヒヨドリの嗅覚系の特性を調べた。その結果、脳全体に対する嗅球のしめる割合が極めて小さく、一般には左右独立して存在する嗅球が完全に左右癒合していたことから、カラスとヒヨドリの嗅覚はあまり発達していないことが示唆された。次に視覚系の特性を調べた。カラスの神経節細胞は300万個を超えるとともに、神経節細胞の高密度域が2箇所あったこのことは、視覚が極めて発達していることを示していた。また、網膜周辺に進むにつれ少なくなっていた。視細胞の油球は赤、青、黄、緑、透明のものが見られ、その分布割合は均衡していた。ヒヨドリの神経節細胞の分布傾向はカラスのそれと類似していたが、油球は緑・黄緑系の油球が周囲を占めていた。学習行動によってカラスの各種波長への感受性を調べたところ、短波長に対して最も高い感受性を持っていることが示唆された。さらに、カラスの網膜には、4種類の色覚に関わる錐体オプシンがあり、その内のひとつは紫外線に感受性を有していた。鳥が果実の熟成段階を何で判別しているのか調べるため、熟成段階の異なる果物をカラスに提示し、選択された果実に共通する特徴を調べた。その結果、カラスは果実の熟成段階を判別するために糖度や硬度を手がかりにせず、果実の色、すなわち果皮の光反射を手がかりにしていた。
著者
刘 利 鎌田 直樹 杉田 昭栄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.77-83, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
28

本研究においては光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて,ハシブトガラスCorvus macrorhynchos舌の表面微細構造を観察した.本種の舌は舌尖,舌体,舌根の3つの部位から構成され,舌先の先端は左右に2分されており,左右共に上下二層構造を持っていた.舌体は扁平状で円形の舌隆起を有し,その尾側縁には円錐乳頭が連なっており,外側にはより大型の乳頭が見られた.さらに,粘膜下層には2種類の結合織芯が存在し,その境界は明瞭であった.舌根の表面および舌体の側面には大型の唾液腺の開口部が観察され,それらの周辺には味孔が分布していた.このように,ハシブトガラスの舌の形態・構造には動物食性鳥類のものと類似した点が多く,わずかに植物食性の鳥類の特徴も合せ持つことが明かとなった.また,形態に基づいた機能的類型に照らし,本種の舌は採集型と嚥下型の両方の特徴を合わせ持つと考えられた.
著者
青山 真人 夏目 悠多 福井 えみ子 小金澤 正昭 杉田 昭栄
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.109-118, 2010

本研究の目的は、捕食動物に由来する種々の刺激がヤギに及ぼす忌避効果を、ヤギの生理学的および行動学的反応を解析することによって検討することである。実験1においては、7つの刺激-CDプレイヤーで再生したチェーンソーの運転音(ChS)、イヌの吠え声(DoB)、オオカミの遠吠え(WoH)、ライオンのうなり声(LiG)、トラのうなり声(TiG)、テレビモニターに映したオオカミの映像(WoV)、実物のイヌの毛皮(DoS)-をそれぞれ4頭のメスシバヤギに提示し、その反応を観察した。DoBおよびDoS区において、他の区に比較して血中コルチゾル(Cor)濃度が有意に高く(P<0.01、反復測定分散分析およびTukeyの検定)、30分間の身繕い行動の頻度が有意に少なかった(P<0.1、Friedmanの検定とNemenyiの検定)。他の刺激については、いずれの測定項目においても対照区(提示物なし、音声を出さないCDプレイヤー、映像を映さないテレビモニター)との間に違いはなかった。実験2においては、実験1と同じ4頭のヤギを用いて、ChS、DoB、WoH、LiG、TiG、DoSの6つの刺激の忌避効果を検討した。飼料のすぐ後方にこれらの刺激のいずれかを提示し、それぞれのヤギがこの飼料を摂食するまでに要する時間を測定した。4頭いずれの個体も、DoBおよびDoS区においては30分間の観察時間中に一度も飼料を摂食しなかった。一方、他の刺激においては遅くとも126秒以内には摂食を開始した。各個体においで、実験2における結果と、実験1における結果との間には強い相関が観られた(対血中Cor濃度:r=0.78〜0.94、対身繕い行動の頻度:r=-0.73〜-0.98)。実験3では、メスシバヤギ5頭を用い、実験1と同じ方法でChS、DoB、イヌの置物(DoF)、DoS、段ボール箱で覆ったイヌの毛皮(DSC)の効果を検証した。実験1と同様、DoBおよびDoS区において、有意な血中Cor濃度の増加と身繕い行動の頻度の減少が観られた。DSC区においては5頭中4頭が、顕著な血中Cor濃度の増加あるいは身繕い行動の頻度の減少のいずれかを示した。これらの結果から、本研究で観られたイヌの吠え声、あるいはイヌの毛皮に対する忌避効果は、ヤギがこれらの刺激に強い心理ストレスを持ったことが原因であると示唆された。さらに、視覚的な刺激は、少なくともそれが単独で提示された際には効果が薄いこと、聴覚的な刺激および嗅覚的刺激が強い忌避効果をもたらす可能性が示唆された。
著者
青山 真人 夏目 悠多 福井 えみ子 小金澤 正昭 杉田 昭栄
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.109-118, 2010-12-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
34

本研究の目的は、捕食動物に由来する種々の刺激がヤギに及ぼす忌避効果を、ヤギの生理学的および行動学的反応を解析することによって検討することである。実験1においては、7つの刺激-CDプレイヤーで再生したチェーンソーの運転音(ChS)、イヌの吠え声(DoB)、オオカミの遠吠え(WoH)、ライオンのうなり声(LiG)、トラのうなり声(TiG)、テレビモニターに映したオオカミの映像(WoV)、実物のイヌの毛皮(DoS)-をそれぞれ4頭のメスシバヤギに提示し、その反応を観察した。DoBおよびDoS区において、他の区に比較して血中コルチゾル(Cor)濃度が有意に高く(P<0.01、反復測定分散分析およびTukeyの検定)、30分間の身繕い行動の頻度が有意に少なかった(P<0.1、Friedmanの検定とNemenyiの検定)。他の刺激については、いずれの測定項目においても対照区(提示物なし、音声を出さないCDプレイヤー、映像を映さないテレビモニター)との間に違いはなかった。実験2においては、実験1と同じ4頭のヤギを用いて、ChS、DoB、WoH、LiG、TiG、DoSの6つの刺激の忌避効果を検討した。飼料のすぐ後方にこれらの刺激のいずれかを提示し、それぞれのヤギがこの飼料を摂食するまでに要する時間を測定した。4頭いずれの個体も、DoBおよびDoS区においては30分間の観察時間中に一度も飼料を摂食しなかった。一方、他の刺激においては遅くとも126秒以内には摂食を開始した。各個体においで、実験2における結果と、実験1における結果との間には強い相関が観られた(対血中Cor濃度:r=0.78〜0.94、対身繕い行動の頻度:r=-0.73〜-0.98)。実験3では、メスシバヤギ5頭を用い、実験1と同じ方法でChS、DoB、イヌの置物(DoF)、DoS、段ボール箱で覆ったイヌの毛皮(DSC)の効果を検証した。実験1と同様、DoBおよびDoS区において、有意な血中Cor濃度の増加と身繕い行動の頻度の減少が観られた。DSC区においては5頭中4頭が、顕著な血中Cor濃度の増加あるいは身繕い行動の頻度の減少のいずれかを示した。これらの結果から、本研究で観られたイヌの吠え声、あるいはイヌの毛皮に対する忌避効果は、ヤギがこれらの刺激に強い心理ストレスを持ったことが原因であると示唆された。さらに、視覚的な刺激は、少なくともそれが単独で提示された際には効果が薄いこと、聴覚的な刺激および嗅覚的刺激が強い忌避効果をもたらす可能性が示唆された。
著者
鎌田 直樹 山田 利菜 杉田 昭栄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.191-199, 2011 (Released:2011-10-26)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

We investigated whether there are significant differences in neck muscle mass, maximum peck force, pressure and maximum pull force between Jungle Crows Corvus macrorhynchos and Carrion Crows C. corone. The maximum peck force and pressure were measured using pressure sensitive film. The maximum pull force was measured with spring balances. For male Jungle Crows, neck muscle mass, maximum peck force, pressure and maximum pull force were 8.27 g, 26.8 N, 80.4 MPa and 9.54 N; for females they were 6.82 g, 22.3 N, 69.7 MPa and 8.25 N. Those values for male Carrion Crows were 6.69 g, 22.3 N, 59.7 MPa and 4.07 N;, whereas for females they were 4.50 g, 15.1 N, 53.2 MPa and 2.71 N. Furthermore, neck muscle mass, maximum peck force and maximum pull force were positively correlated with body mass in both species. There were no significant differences in the ratio between the cervical levator mass and the cervical depressor mass, and the maximum peck force exerted by one unit of the cervical depressor mass between Jungle and Carrion Crows. However, the maximum pull force exerted by one unit of the cervical lavator and depressor mass of Jungle Crows was significantly larger than that of Carrion Crows.
著者
Bezawork A. BOGALE 青山 真人 杉田 昭栄
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.75-83, 2018-06-25 (Released:2018-07-26)
参考文献数
22

ヒトの顔写真を用いた弁別試験を行なうことによって、ハシブトガラスがヒトの表情を識別することが可能であるか否かを検討した。まず、予備試験として、供試したカラスには、一方は「笑顔」、もう一方は「真顔」(無表情)である異なる人物の写真を見せて、「笑顔」を選択させる弁別学習を課した。予備試験をクリアした6羽のカラスについて、予備試験とは異なる人物の「笑顔」と「真顔」の弁別試験を行なった。その結果、6羽中で4羽のカラスについては、「笑顔」である新規な人物を統計学的に有意に高い頻度で選択した。次に、予備試験で見せた人物の写真を用い、同じ表情をした異なる人物の組み合わせを識別する弁別試験を課した。その結果、カラスは、表情にかかわらず、予備試験において報酬を得られた人物を有意に高い頻度で選択した。一方、予備試験で使用した人物について、同一人物の「笑顔」と「真顔」を識別させる試験を行なったところ、いずれのカラスも「笑顔」を有意に高く識別することはできなかった。これらの結果から、ハシブトガラスは異なる人物については「笑顔」を「真顔」と区別でき、新規な人物については「笑顔」を一般化することが可能であることが示唆された。一方、人物の識別能力はその表情によって左右されることはないが、同じ人物において、その表情を識別する能力には乏しいと考えられた。
著者
杉田 昭 小金井 一隆 辰巳 健志 山田 恭子 二木 了 黒木 博介 荒井 勝彦 木村 英明 鬼頭 文彦 福島 恒男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.66-72, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
18

痔瘻癌は痔瘻の症状が併存するため早期診断が困難で,進行癌で発見されることから予後が不良な疾患である.本邦ではCrohn病症例に合併する肛門病変として痔瘻が最も多い.Crohn病に合併する大腸癌のうち,痔瘻癌を含む直腸肛門管癌が半数以上を占めるのが本邦の特徴であり,合併する痔瘻癌の特徴は基本的に通常の痔瘻癌と同様であるが,自験例の痔瘻癌診断までの罹病期間は平均20年,癌診断時年齢は平均39歳と通常の痔瘻癌に比べて罹病期間に差はなかったものの,若い年齢で発症していた.痔瘻癌発見の動機は粘液の増加,肛門狭窄の増強,腫瘤の出現などの臨床症状の変化であることが多く,長期に経過した痔瘻を合併するCrohn病症例では痔瘻癌の合併があることを念頭に置き,痔瘻の症状の変化,肛門所見に留意して定期的な指診,大腸内視鏡検査,積極的な細胞診,生検を行うことが早期診断と長期生存に重要である.直腸肛門管癌(痔瘻癌を含む)に対する癌サーベイランスプログラムの確立が望まれ,その可否の検討が必要である.
著者
杉浦 靖夫 木原 正光 杉田 昭夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.565-569, 1960 (Released:2008-02-29)
参考文献数
6

We set forth already on the ecology of Pinnotheres sinensis found in Tapes japonica. As similar observations were made on the same item of Pinnotheres gordoni found in the same clam, the result is given in the present paper. Pinnotheres gordoni is tolerant for host. It was found in such many bivalves at Kisarazu as Tapes japonica, Mytilus edulis, Ostrea (Crassostrea) gigas, Meretrix lusoria, Mactra veneriformis, Chlamys nipponensis and Umbonium (Suchium) moniliferum(gastropod). The rate of clams with the crab shows some extent of seasonal variation as being it is very low during the season from August to November, in which the water temperature runs from 16°C to 29°C, but is considerably high during the period from December to July in which the water temperature ranging between 10°C and 26°C (Table 1, Fig. 1). It seems to be that Pinnotheres gordoni is somewhat related ecologically to Pinnotheres sinensis, because of these crabs are apt to live in the same host (Table 2). The host, Tapes japonica, suffers a certain amount of harm by the crab in guestion. The rate (W×l00/SW; W=total weight of flesh of the clam; SW=shell weight of it) is 49.8±12.1% in normal clam, but 41.6±12.6% in symbionts.
著者
杉田 昭栄 前田 勇 蕪山 由己人 佐藤 雪太 青山 真人 加藤 和弘 竹田 努
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、カラスの病原体と感染症のキャリアの可能性を探るため保有病原体や飛翔の動態について調べた。多くのカラスが鳥マラリアHaemoproteus属とLeucocytozoon属原虫に感染していた。また、腸内細菌叢は、Caulobacteraceae、Bradyrhizobiaceae、Streptococcaceae、Helicobacteraceae、Leuconostocaceaeであることが分かった。GPSの解析結果、カラスの飛翔速度は時速10~20kmであり、その多くは4~5km圏内で生活していた。また、畜産農家の多い地域では、畜舎から畜舎と移動して採餌していることも分かった。
著者
小金井 一隆 木村 英明 杉田 昭 荒井 勝彦 福島 恒男 嶋田 紘
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.1355-1360, 2006 (Released:2006-12-06)
参考文献数
20
被引用文献数
2

潰瘍性大腸炎に直腸(肛門)膣瘻を合併した5例の治療成績を検討した.全例が発症後5年以上経過した全大腸炎型,再燃緩解型で,4例に肛門周囲膿瘍,下部直腸狭窄などの病変があった.難治またはdysplasiaのため4例に大腸全摘,回腸嚢肛門管吻合術を行い,1例は保存的治療中である.瘻孔を含めて直腸を切除した1例と瘻孔部を残し肛門膣中隔を筋皮弁で再建した1例は膣瘻が完全に閉鎖し,瘻孔部を切除した1例は少量の分泌物を認めるのみで,著明に改善した.潰瘍性大腸炎に合併する直腸膣瘻は下部直腸,肛門に長期間強い炎症がある例に発症し,根治には大腸全摘術,回腸嚢肛門管あるいは肛門吻合術が必要と思われた.
著者
青山 真人 山崎 真 杉田 昭栄 楠瀬 良
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.J256-J265, 2001-04-25
参考文献数
21
被引用文献数
2

馬術愛好家や職業として日頃ウマに接している人達はウマの表情からその情動をどの程度推察できるか,また,彼らはウマの顔のどの部位を手がかりとしてその情動を判断しているのかを調査した.調査は,ウマの顔の写真のみからその置かれている状況を推察し,さらに顔のどの部位を手がかりとしてその判断を下したかを答えるアンケート形式で行った.その結果,日頃ウマに接している人達143名の平均点は53.5点(全問正解の場合100点)であり,ウマに接する機会が少ない人達111名の平均点(39.4点)よりも有意に高かった.このことから,日頃ウマに接している人達は,ウマの顔の写真のみからその置かれている状況をある程度推察できるものと考えられた.ウマに接している人達が,状況を推察する際に手がかりとしてもっとも多く観察していたのは耳であり,さらに,高い正解率(55点以上)であったグループは正解率の低いグループ(55点未満)と比較して,耳を観察した回数が有意に多かった.これまでの文献から,耳はウマの感情がもっとも顕著に現れる部位とされているが,日頃ウマに接している人達は経験からそのことを知っていることが示された.しかしながら,異なる状況下であっても,ウマの耳の向きや角度が類似していたり,ほとんど同じである場合もあり,耳のみからでは正確な判断が難しい状況があることも示された.その場合には耳に注目すると同時に,他の部位やそのウマに関わっている他のウマの表情など,別の手がかりをあわせて指標とし,総合的に判断することが有効であると考えられた.
著者
杉田 昭栄
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.81-89, 2004 (Released:2011-03-05)
著者
平尾 温司 杉田 昭栄 菅原 邦生
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.483-490, 2000-10-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
26

鳥類の嗅覚機構を解明するため,ニワトリ嗅球の遠心路および求心路をバイオサイチン法およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)法をそれぞれ単独に用いて明らかにした.バイオサイチン法の結果より,ニワトリ嗅球の遠心路は線維群の通過部位から経路1~3に分類することができた.経路1は同側の副高線条体(HA)および海馬(Hp)への投射を有していた.経路2は同側の最上介在高線条体,腹側高線条体(HV),新線条体(N)および基底核(Bas)への投射を有していた.経路3は両側の嗅旁葉,嗅結節,前頭原線条体路,填古線条体,前原線条体,梨状皮質,側頭頭頂後頭野,紐核,対側のHA, Hp, HV, NおよびBasへ投射していた.HRP法の結果より,ニワトリ嗅球の求心路は両側の外側中隔核,内側中隔核およびHpから投射を受けていた.また,ニワトリ嗅球はHpと相互結合を有していた.
著者
A. K. M. Humayun KOBER 青山 真人 塚原 直樹 杉田 昭栄
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.97-103, 2011-09-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
26

トラック輸送およびその際に使用する運搬用ケージのタイプが、ニワトリ(Gallus domesticus)の副腎に及ぼす生理学的および生化学的影響について検討した。2010年12月から翌年2月の間、12羽の成オスニワトリを、C1、T1およびT2の3つの実験区に分けた。C1区においては、通常飼育に用いていたのと同じ金網ケージ(95×60×70cm)にニワトリを2羽入れ、輸送を施さなかった。T1区においては、前述した通常飼育用の金網ケージをトラックの荷台に積載し、2〜3羽を同時に30分間輸送した。T2区では現場でニワトリの輸送の際に用いている小型のプラスチックケージ(68×48×20cm)に3羽を入れ、30分間輸送した。輸送終了直後の血中コルチコステロン(CORT)濃度をラジオイムノアッセイで、副腎組織中のチロシン水酸化酵素(TH)およびリン酸化THの発現量をウエスタンブロット法で測定した。その結果、ケージのタイプに関わらず、輸送をした区(T1,T2区)はC1区と比較して血中CORT濃度が有意に高く(P<0.05)、輸送がニワトリにとってストレスとなることが示唆された。T2区の血中CORT濃度はT1のそれと比較して若干高かったが、T1とT2区の間に有意差はなかった。THの発現量に対するリン酸化THの発現量の割合は、3つの実験区いずれの間にも有意差はみられなかった。これらの結果より、30分間の輸送はニワトリにとってストレスとなるが、小型ケージに収納されて輸送されることは、少なくとも冷涼な気候下で30分間であればストレスとはならないことが示唆された。
著者
徐 章拓 竹田 努 青山 真人 杉田 昭栄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.289-296, 2014 (Released:2015-04-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1

ハシブトガラスCorvus macrorhynchos とハシボソガラスC. coroneの2種類のカラスを用いて,腺胃および筋胃の組織形態を中心に比較形態学的検討を行った.ハシブトガラスの腺胃内表面の面積はハシボソガラスのそれより大きかった.腺胃壁の厚さについて,種差はなかったが,全体に占める腺胃腺層の厚さの割合(相対値)はハシブトガラスの方が大きく,一方,筋層の相対値はハシボソガラスの方が大きかった.ハシボソガラスの筋胃壁はハシブトガラスのそれより厚かった.さらに,ハシボソガラスの筋胃は筋層の厚さの相対値がハシブトガラスより大きかった.両種は共に雑食であるが,胃の形態・組織学的特徴に見られた相違点は,両種の食性の相違を反映しているように思われる.