著者
鳥 正幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-21, 2016 (Released:2016-04-20)
参考文献数
14

術後合併症は,術前―術中―術後管理の連動した要因により発生する。標準手術から超高難度進行甲状腺癌にいたるまで,根治性を求めつつ安全・確実性を確立するために下記(A)~(C)を3本柱としたstrategyを構築した。その結果,過去8年間の手術関連死亡=在院死亡0,合併症発生率0.33%を達成した。(A)術中の安全性を担保し術後合併症を予防する手術手技の熟成:リンパ漏,低Ca血症,反回神経損傷は手術テクニックで克服する。内視鏡手術・高度進行症例はオリジナルな低侵襲化手技と術式criteriaを考案した。(B)術前術後管理・特に高難度手術における周術期チーム:因果関係を分析し致命的な後出血・喉頭浮腫を予防するシステムづくり。多科・多職種横断的「周術期チーム」で全人的医療。(C)効率的な診療とレジデント教育:クリニカルパスの効用と医師・看護師教育の徹底。本稿では上記について概説する。
著者
紫芝 良昌 今井 常夫 神森 眞 栗原 英夫 鳥 正幸 野口 仁志 宮内 昭 吉田 明 吉村 弘
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-56, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
16

甲状腺の手術の際,発生する合併症の一つである永続性副甲状腺機能低下症の日本全国の症例数を検討した成績はこれまでにない。甲状腺手術を専門とする15病院に対してアンケートを行い2012年~2013年の甲状腺手術について回答の得られた5,445例について術式別に永続性副甲状腺機能低下症の発生率を求めた。その結果,甲状腺片葉切除で0.08%,全摘・亜全摘4.17%,甲状腺全摘と頸部中央および(または)外側区域郭清で5.75%であり甲状腺切除術全体を通じて2.79%に永続性副甲状腺機能低下症がみられた。また,副甲状腺腫瘍手術344例について14例(4.07%)の永続性副甲状腺機能低下症例を得た。この数字を厚労省がん統計資料に当てはめて日本全国での甲状腺・副甲状腺手術による永続性副甲状腺機能低下症の頻度を求めると,年間705人となる。手術のピーク年齢を68歳,手術後の平均存命期間を9年として,すべての甲状腺・副甲状腺手術患者が上記の条件を満たす単純モデルで計算すると,永続性副甲状腺機能低下症の本邦総数は31,725人になる。特発性副甲状腺機能低下症患者数は本邦で900人と推定され全体では32,625人となり人口10万人あたり26人。米国18.3人,デンマーク24人と報告されている。