著者
門田 正久 鳥居 昭久 池畠 寿 半田 秀一 花岡 正敬
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2132-C3O2132, 2010

【目的】今回、アジアパラユースゲーム東京大会にて、本部トレーナー活動を実施することがきましたので、障害者スポーツ大会のサポート活動を広く周知していただき、より多くの理学療法士の方々に障害者スポーツをサポートしていただくための情報発信として報告をさせていただきます。<BR>【方法】2009年9月8日から13日(大会期間9月10日から13日)の期間中、アジア地区ユースパラゲーム東京大会に参加された選手および役員へ本部トレーナーサービスを実施。実施内容について種目別・部位別などの対応実績を調査。また、利用者からの聞き取りによる障害者スポーツにおけるユース世代における課題について考察をする。<BR>【説明と同意】<BR>【結果】今大会競技種目は、水泳、陸上、卓球、ゴールボール、ボッチャ、そひて車いすテニスの6競技で開催、選手役員700名の参加があった。その中でトレーナーサービス利用総件数167件。競技別利用状況としては、水泳12名ゴールボール10名、陸上5名、テニス5名、卓球4名、ボッチャ2名であった。部位別状況としては、肩関節が最も多く32件、次いで腰部12件、頚部11件となっており前腕・手等を入れると上半身中心の部位が多く認められた。また実際のトレーナーサービスの中で、障害問題の解決だけでなく、トレーニング方法やコンディショニングについての説明指導を実施することも多くあった。<BR>【考察】今回、国際大会でのユース選手へのトレーナーサービス活動を実施した。利用者はほとんどが日本選手であったが、サービスを実施する中で、基礎疾患となる運動機能障害と競技による機能障害の混在がほとんどであり、日常管理の中で競技練習内におけるコンディショニングの必要を強く感じられた。部位別で見ると上半身の問題が多く、切断や術後の脊柱アライメントの問題やバランス対応としての頚部の障害も多く認められた。また利用者全員への聞き取りはできなかったが、多くの選手の場合はどこでコンディショニングを指導してもらえるかわからない、もしくは通常のトレーニングジム等の施設や施術院では対応してもらえない現状も知ることができた。これは、健常者の運動器疾患対応についてはトレーニングジムや施術所での対応は一般的であるが、障害のあるスポーツ選手を受け入れる土壌がまだ未整備であり、今後の日本における障害者スポーツサポートシステムの構築の必要性を感じるものとなった。またその中で、理学療法の活用がさらに大きな意味があるものと再認識することができた。今後は、大会のみならず強化練習サポート体制作りや地域活動へのサポート体制の構築を進めていき、より質の高いサービスを提供できるように努力していきたいと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】障害者のスポーツは、近年競技志向の高まりにつれて参加選手のサポート体制も変革期を迎えています。障害者スポーツの代表的な大会ともいえるパラリンピック大会においても2001年にIOC(国際オリンピック委員会)とIPC(国際パラリンピック委員会)との協力関係が話し合われ、2008年北京パラリンピックからIOCの支援体制が始まっています。日本においても2000年シドニー大会より本部トレーナー帯同が始まり、その後2004年アテネ大会1名。2008年北京大会には1名増員、2名体制で本部対応することができ始めています。また各競技団体においても、専任トレーナーをつける競技団体も増えてきています。その中でも理学療法士の資格を持っての参加トレーナーが多くなっており、今後もより競技サポートのニーズが増えてくると思われます。<BR>
著者
鳥居 昭久 小形 滋彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1126-C4P1126, 2010

【目的】ボートジュニア世界選手権大会(2009年8月5日~8日、フランス)への日本代表チームトレーナーとして帯同する経験を得た。ボート競技については、シニアチームには専属トレーナーが帯同しているが、ジュニアチームには初めての帯同となった。これは競技力向上の一つとして、これまでコーチと選手のみだったジュニアチームに、トレーナーサポートを加え、コンディショニングなどに対する意識向上を図る意味があった。今回、このサポート経験からボート競技における今後の課題を明らかにし、多くのジュニアスポーツに共通すると思われる課題について考察することを目的に報告する。<BR><BR>【方法】2009年ボートジュニア世界選手権大会に参加した日本代表選手10名(男性5名、年齢17.8±0.4歳、身長182.8±5.1cm、体重78.0±6.8kg、女性5名、年齢17.2±0.4歳、身長165.2±2.9cm、体重61.8±2.4kg)を対象として、国内外での事前合宿および本大会期間中の約3週間のトレーナーサポートを実施、ここでみられた問題点について検討した。選手把握の為に国内合宿前に文書にて状況調査を行い、それに基づいて合宿時に初回面接を行った。また、合宿および遠征中の毎朝、簡易調査票を配布回収し、必要に応じて問診を行った。トレーナーサポートとしては、身体的問題点に対する治療的なアプローチ(物理療法や運動療法による)、ストレッチングやテーピングなどの指導や実施、休養や栄養摂取などのアドバイス、必要に応じて面接などによる心理的サポート、日本ボート協会医科学委員会所属医師との連携による医療サポートなどを行った。<BR><BR>【説明と同意】今回のトレーナーサポートは日本ボート協会医科学委員会からの派遣によるものであり、得られた情報は全て日本ボート協会医科学委員会に帰属する。また、各選手および所属の高校ボート部顧問へ事前に説明の文書を送付し、トレーナーサポートとそこで得られた情報は、個人情報保護法に則り厳正に管理される旨の説明を文書にて行い、同意を得た。<BR><BR>【結果】最終的には、全選手に何らかのトレーナーサポートが必要であった。身体的問題点としては、慢性障害がほとんどであり、筋の張りや関節可動域制限が中心であった。原因は疲労の影響によるもの、フォームの崩れ、アライメント不正からと考えられるものが多かった。国内合宿2日間におけるトレーナーサポートは合計20回、移動日を除く直前合宿および本大会期間中の17日間は合計141回となった。また、全選手にストレッチ方法や事後のトレーニング、休養方法や栄養摂取などについてのアドバイスが必要であった。特に補食摂取については、管理が必要な場面があった。他、本大会競技中には大きなトラブルは発生せず、各レースに向けてのコンディショニングは順調であった。<BR><BR>【考察】ボート競技は陸上競技や水泳競技などと同様に、本大会までのトレーニングやコンディショニングピークの合わせ方が、競技成績に大きな影響を与える。今回のトレーナーサポートによって、身体的問題点に対して事前に対応できたことが、本大会でのトラブルを未然に防ぐことにつながったと推察される。一方、ジュニアスポーツ選手ということもあり、自分の身体的特徴や問題点を十分に把握できていない面がみられ、将来的な障害発生の危険性が推察された。これは、身体的機能やトレーニング方法のみならず、栄養管理や休養の取り方などの知識にもみられ、個人差も大きかった。今回の帯同時に、これらについて個々に具体的な指導ができたことの意義は大きいと感じた。身体的変化の大きな発達期のジュニアスポーツ選手という特性から考えても、日常的、長期的なサポートが必要であり、加えて、中高校部活動が中心のジュニアスポーツにおける指導者の多くが、必ずしも身体的問題の専門家ではないことを含めて考えても、日常的で継続的なトレーナーサポートの必要性は大きいと思われた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】ジュニアスポーツに対する日常的で継続的なトレーナーサポートは、スポーツ障害予防の観点からも重要であり、理学療法士がチームのトレーナーとして果たせる役割は大きい。このため、様々なジュニアスポーツにおける理学療法士の関わり方を検討する必要がある。
著者
鳥居 昭久 黒川 良望 木山 喬博 林 修司 加藤 真弓 木村 菜穂子 荒谷 幸次 神鳥 亮太 一村 桂子 角田 利彦 水谷 綾子 内藤 克之 神谷 友美 岩瀬 ゑり子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.G0960-G0960, 2006

【はじめに】<BR> 2005年夏、岐阜県海津市の長良川国際ボートコースにて、2005ボート世界選手権大会が、アジアで初めて開催された。この大会は、ボート競技の国際大会としては、種目数、エントリー国数においてオリンピックをしのぐ最大の大会である。今回、大会会場のメディカルセンター付属施設として、理学療法室を開設し、参加選手等に対する理学療法サービスを実施する機会を得たので報告する。<BR>【大会概要】<BR> 世界ボート選手権大会は、オリンピックイヤーを除く毎年夏に開催され、主に欧米にて行われていたが、今回、ボート競技の普及などの意味も含めて、アジアで初めて開催された。<BR> 大会開催期間は2005年8月28日から9月4日までであった。また、会場は8月24日から公式に公開され、それに伴い、メディカルセンターおよび理学療法室は8月24日からサービスを開始した。大会参加国は56カ国、参加クルーは、本戦23種目、Adaptive種目4種目に合計319クルーがエントリーした。ちなみに、日本は、開催国ということもあり、史上最多の15種目にエントリーした。<BR> 会場は、岐阜県海津市の特設長良川国際ボートコース(2000m)であり、岐阜、愛知、三重県の県境にある国立木曽三川公園内に位置する。<BR>【理学療法室概要】<BR> 理学療法室は、長良川河川敷に設置されたメディカルセンターテント内に約25m<SUP>2</SUP>の専用スペースを設け、治療用ベッド4台と物理療法機器などを準備した。物理療法機器は電源、給排水などの問題から、温熱・寒冷療法機器のみとし、その他は、徒手療法、運動療法、テーピングなどで対応した。理学療法士は、愛知、三重、岐阜県理学療法士会へボランティアを公募し、12名の理学療法士が、6時から20時までを、3名常駐、2交替で待機した。<BR>【診療状況】<BR> 台風の影響もあり、実質理学療法室が稼働したのは10日間であった。利用した人は、延べ8カ国、28名であった。対象となった訴えは、頚部、肩、肘、腰部、膝などの痛み、下肢や背部の疲労感や筋の緊張などが主で、疲労性、過使用的な原因が多かった。また、特定部位の治療ではなく、コンディショニングに関する要望もみられた。<BR>【感想・問題点】<BR> 利用者は、予想に反して少なかったが、概ね効果的な理学療法が提供できたことで、利用した選手等には好評であった。一方、一部ではあるが、コミュニケーションの問題や、理学療法に対する理解の差から、選手が希望するセラピーと、用意された内容などの違いがあったり、多様なリクエストに対する対応の制限などの問題があった。特定のチームや選手団の帯同サポートと違い、今回のような国際スポーツ大会や、不特定多数が利用する場合の理学療法室設営の課題が明らかになり、今後、同様のケースの参考になることを多く得られた。<BR>