著者
鳥屋尾 忠之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1970, no.32, pp.10-13, 1970-01-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
10

紅茶用品種はつもみじとはつもみじの次代との戻し交雑を行ない,クロロホルムテストによって発酵性を調べたところ,四つの組合せで,3:1の分離比で,正常個体と不発酵個体が出現することが確かめられた。この不発酵性が,1個の遺伝子nfで支配されているとすれば,はつもみじはこの遺伝子のヘテロ個体で,その遺伝子型はnf/+であり,不発酵個体はホモ型で,nf/nfの遺伝子型となる。このことから,供試した親品種の範囲の発酵性は,1座位の複対立遺伝子で支配され,nf遣伝子はこれの一突然変異であると推定される。不発酵個体は,クロロホルムテストで全く赤変せず,黄緑色のままであり,ポリフェノールオキシダーゼ活性は,ほぼ完全に失われており,これは発酵性に関する遺伝的閉鎖と思われる。このような,不発酵個体は,いわゆる弱発酵個体とは,明らかに区別ができる。また,不発酵個体は枕崎支場の多数の保存系統の中からは発見されていない。不発酵個体と正常個体の間には,樹勢ではっきりした差異があり,不発酵個体が劣ることが確かめられた。
著者
鳥屋尾 忠之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1967, no.28, pp.25-31, 1967-12-22 (Released:2009-07-31)
参考文献数
16

やぶきた(k/+)×こうろ(k/k)のF1と,比較のために,他のこうろ種とアッサム種を用いて28形質を調べた。その結果,こうろ型と普通型との間には,葉の大きさと形,着花の多少,さし木発根性およびタンニン含量に有意な差がみられ,この両型の差異は,k遺伝子の多面的発現で説明されることがわかった。こうろ型の成葉は大きく,波曲が大で,花はほとんど着かず,タンニン含量は普通型よりも多かった。また,耐凍性・早晩性・クロロホルムテストによる発酵性は差異が認められなかった。こうろ型は葉の側脈数ときょ歯数が決定された後に,葉の形態形成の制御機構に異常が生じて,非常に大きく,かつ波曲の多い成葉が形成され,それに伴って二次的に,他の一連のこうろ型の特徴形質が発現するものと推定した。k遺伝子の多面的発現による遺伝子型相関について論じ,また,アッサム種とタンニン含量の多いことが,成葉の大きいことに関係があることを,こうろ種とアッサム種の相似形質との関連から推察した。