著者
日合 弘 賀本 敏行 豊國 伸哉 福本 学 石本 秋稔 鶴山 竜昭 阿不江 ぱ塔爾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本助成金を受けて、計画の大部分を達成するとともに、著明な進展がみられた。(1)リンパ腫好発系 SL/Khマウスの骨髄Pre-B細胞の一過性増殖は第3染色体上のQTLであるBomb1(Lef1)によることが示された。(2)リンパ腫DNAへのウイルス組込みホットスポットの多くがクローニングされ、Bomb1によるリンパ球分化異常とリンパ腫発生機構の関連に大きな手がかりが得られた。(3)4NQO誘発ラット舌癌については感受性に関与する5つの宿主遺伝子座をマップし遺伝様式を解明した。(4)化学発癌剤抵抗性DRHラットの肝発癌モデルで前癌病変であるGST-P陽性フォーカスの遺伝支配を研究し第1、第4染色体に高度に有意な座位をマップした。(5)遺伝的カタラクトRLCについては責任遺伝子マップ位置からPYK2が候補遺伝子で、RLCレンズで正常マウスを免疫するとPYK2のN端異常ペプチドに対する抗体が作られた。cDNA、genomicDNAについて、遺伝子構造を解析中。(6)NCTカタラクトはNa/K pumpに対する内因性抑制ペプチドの形成により発生する。1000頭の戻し交配系を解析し、マップ位置からBAC contigを作製中である。カタラクトのタイプ(pin head or diffuse)を決めるmodifier geneを第10染色体にマップした。この位置にNa/K pumpの一部がマップされていた。(7)PNUによるラット白血病の病型決定機構を解析するためF344とLE/Stmの間で育成されたRI系について、白血病を誘発して遺伝解析を行い、数個のQTLが関与している可能性を示した。これら一連の研究から内在性レトロウイルス、化学発癌剤、遺伝的変異による疾患も多くは多因子の宿主修飾遺伝子の影響を受け、発病の有無、重篤度、病型などが決定されることを示した。一部のものについては分子生物学的な理解に肉迫している。