著者
鷲見 拓哉 石黒 司 清本 晋作 三宅 優 小林 透 高木 剛
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.2061-2071, 2014-09-15

W3Cは,HTML5およびJavaScript上で並列計算を行うための規格であるWeb Workersの勧告候補を2012年に公開した.JavaScriptおよびWeb Workersはプラットフォーム非依存である.JavaScriptで書かれたウェブアプリケーションは広く普及しており,インターネット選挙運動やブロードキャスティングサービス等を行うウェブアプリケーションの中には安全な通信を必要とするものが存在する.そのようなウェブアプリケーションにディジタル署名を組み込むことにより,安全な通信を実現することができる.Rainbow署名は,DingとSchmidtにより2005年に提案された多変数公開鍵暗号方式のディジタル署名である.Rainbow署名は有限体上の多変数2次多項式の連立方程式に対する求解問題がNP困難であることを安全性の根拠とし,ポスト量子暗号の1つとして期待されている.本稿では,Web Workersを用いたRainbow署名の並列実装手法を提案し,その応用例を述べる.また,マルチコアCPUを搭載する汎用PCおよびAndroidタブレット端末を用いて提案方式の実行時間を計測した.その結果,汎用PC上においては0.62ミリ秒,Androidタブレット端末上においては4.54ミリ秒で署名検証を行うことができた.