著者
麻生 和江
出版者
大分大学
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.319-328, 2003-10

極端な細身が優位とされる風潮がある。様々なダイエット志向の情報も氾濫し,猟奇的で残虐な犯罪の報告も多い環境にあって,身体が玩具のように物化される危機感を感じる。教育,表現,健康の視点から、若者(大学生)には自分の「からだ」を防護する手だての指導は緊急の課題と考えられる。そこで本稿では、その手がかりとして、形状、運動機能、健康・自己制御の視点から、大学生におけるからだへの意識を把握することを目的として質問紙による調査を実施した。結果として全体的には、半数以上の学生が今の自分の形状に不満があり、細身への変身願望が強く、女子は男子に比べて細身への変身願望が顕著であった。また、調査対象の約8割は運動が好きと回答し、男子は女子より運動好きが多く、動きの機能においても男子の方が女子より高く自己評価する傾向がある等、大学生における「からだ」への意識の一端を把握することができた。
著者
麻生 和江 古城 建一
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2003年4月からの知的障害者と大分大学学生とのダンスや福祉レクリエーション・サービスを通して、両者の「からだ」への意識変容を検証した。ダンス活動では、活動を進めていく中で、」大学生は戸惑いつつ,障害者との活動を進めていく過程で,知的障害者を観察し,健常者との違いを明確に把握することができた。他者と自分の違いを認識すること,他者の生を実感することは,健常者間でも求められる。しかしながら,知的障害者に実際に接することで,観念的でしかなかった「健常者」「知的障害者」の相違の根拠を認識することによって,自信を持って「他者と接する」ことができるようになった。それはまた自己の改革を導出することにもなった。知的障害をもつ人々の生活をみると,彼らはその障害の特殊性から,生きるための生活そのものも家族やボランティアや福祉施設等の組織的支援への依存度が高い。そういうわけで,福祉レクリエーションの掛け声は少しずつ高まっているとはいえ,生活のなかに,「こころとからだ」の楽しみを日常的に求めることは困難な状態に置かれている等の考察に至った。結論的には、知的障害者と大学生はダンス活動やレク・サービスを媒介とした交流で,「からだ」を実感する様々な体験を蓄積していき,お互いに生き生きとした「からだ」への認識を深めることができたと考えられる。
著者
麻生 和江
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

知的障害を持った方々が大学生と,ともに楽しく過ごすためのダンスプログラムの開発に資する資料を得る事を目的とした取り組みである。大きなビデオ映像とのコラボレーションを取り上げた。本稿では練習会・発表会に用いた映像,映像とともに踊る練習会の様子を写真で紹介するとともに,大学生による知的障害者の映像の受け止め,映像の影響に対する観察資料,大学生自身の感想を問う意識調査から,知的障害者の行動を数値的に処理し,知的障害者と大学生が交流するためのダンスプログラムとしての映像の効果を考察した。平成18年から19年にかけて継続して実施した2つの実践的研究からから,以下のような結果を得た。1.知的障害者がダンスを一層楽しむ環境のひとつとして,大学生の存在は欠かせない。2.映像はまず,大学生の意欲向上に働きかける。大学生の意欲が高まることは,知的障害者への声かけ,動きの指導,表情などのひとつひとつの接し方に意気高揚の雰囲気を創出する。知的障害者はその雰囲気に包まれ,自ら意気高揚を招く。大きな映像は,知的障害者に間接的な意欲向上をもたらし,大学生と知的障害者が「楽しさ」を共有する拠点となりうる可能性を確認した。