著者
黒田 圭一 小畠 義樹 久保田 美佳 西出 英一 印南 敏
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.291-299, 1985

2種類の魚油多価不飽和脂肪酸濃縮油を異なった投与法によりラットに与えたとき, 投与法の違いが各濃縮油の血清, 肝臓の各種脂質濃度に影響するかどうか検討した。ラットは成長期のSprague-Dawley系の雄を用いた。試験に用いた2種の多価不飽和脂肪酸濃縮油は, 純度66%エイコサペンタエン酸濃縮油 (EPAconc) と純度76%ドコサヘキサエン酸濃縮油 (DHAconc) であった。各濃縮油はラットに2週間投与した。濃縮油投与法は, 0.5%コレステロール (chol) を含む基礎飼料に各濃縮油を3%レベルで添加した飼料を摂取させる方法と, あらかじめ基礎飼料のみラットに摂取させ, 摂取飼料の3%相当の濃縮油を単独に胃内へ胃管で注入投与する方法の2種の方法を用いた。対照群には5%オリーブ油を投与した。各濃縮油を飼料に添加投与したとき, EPA-concは血清の中性脂肪 (TG) を抑制する作用がDHA-concやリノール酸より明らかに強かった。しかし血清, 肝臓, 心臓中のchol濃度に対しては上昇抑制作用が弱かった。一方DHAconcの血清TGの上昇抑制作用はほとんどみられなかった。胃管投与法では, EPAconc, DHAconcともに飼料への混合投与の場合と作用の傾向はよく似ていたが, EPAconcのTGに対する作用は強まり, cholに対する作用は逆に弱まった。血清PLは両投与法において同程度の低下を示した。血清と肝臓中の過酸化脂質 (TBA値) はEPAconcの飼料への添加投与では上昇したが, 胃管投与では上昇しなかった。DHAconcはどちらの投与法においても著しい上昇傾向を認めた。このように試料濃縮油の投与法の相違によりそれらの血清, 肝臓等の脂質への作用は一部異なった場合もあったが, 全般的にみて似たような傾向を示した。