著者
永山 スミ子 中村 敦子 鈴木 一正 印南 敏
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.265-271, 1975-11-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
9

こんにゃくカルシウムの有効な利用の指針を得るべく, 板こんにゃくとしらたきを用いて実験を行なったところ, 次のような結果を得た。1. 胃のモデル実験として用いた0.1N塩酸溶液へのカルシウムの溶出は板こんにゃく約74%, しらたき約93%でしらたきの方が高い溶出率を示したが, 板こんにゃくでも細切すると, しらたきとほぼ同じ高い溶出率を示す。2. 人工胃液中へのカルシウムの溶出は概して低かったが, 細切することにより溶出率が上昇することを認めた。3. こんにゃくカルシウムの水溶液や食塩水への溶出はそれ程高くない。醤油, おでん汁では前2者よりやや高く, 食酢ではかなり高い溶出率を示した。とくに, しらたきでは食酢中に80%以上のカルシウムが溶出する。つまり, 調味液の種類により溶出の程度の異なることを認めた。4. こんにゃくゲル内のカルシウムは溶出し易いので, 調理後に残存する量にもよるが, こんにゃくカルシウムはこんにゃくの不消化性にも拘らず生体に吸収利用される可能性が大きいと推定した。
著者
池上 幸江 土橋 文江 中村 カホル 印南 敏
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.447-454, 1991-12-19 (Released:2010-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
1 6

血糖値の変化に対する大麦の影響を明らかにするために正常動物と実験的糖尿病発症動物を用いて検討した。実験にはSprague Dawley系雄ラットを用い, 糖尿病動物はストレプトゾトシン (40mg/kg体重) を腹腔内投与して作成した。実験Iでは4週齢ラットに大麦食, 玄米食, 小麦ふすま食, α-コーンスターチ食を64日間摂取させた。その後すべてのラットを糖尿病とした。糖尿病を発症させた後のラットの体重は大麦食と玄米食のみ増加が見られたが大麦食では飼料摂取量はもっとも低かった。正常期ラットの飼料摂取後およびグルコース負荷後の血糖値は大麦食摂取ラットで低く, 糖尿病発症後でもグルコース負荷後の血糖値は大麦食での抑制が顕著であった。大麦食-糖尿病ラットでは腹腔内へのグルコース負荷でも血糖値の上昇が抑制されており, 体内における糖代謝の改善が認められた。さらに塘尿病発症後の空腹時血糖値は, 25日目には大麦食ではほぼ塘尿病発症前のレベルに回復し, 47日後の血清インスリンはα-コーンスターチ群より有意に高くなっていた。実験IIでは大麦とα-コーンスターチ食を摂取させて, 正常ラットと糖尿病ラットの間で比較した。糖尿病発症後33日目では大麦食ラットは, グルコース負荷後の血糖値の変化はα-コーンスターチ食-正常ラットよりむしろ低くなっていた。以上の結果より, 大麦は糖尿病患者の治療食として用いた場合に糖代謝の改善が期待されることが示唆された。
著者
印南 敏 手塚 朋通
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.14-16, 1966-05-30 (Released:2010-02-22)
参考文献数
2

こんにゃくマソナソが腸内細菌によって分解をうけ, 単糖類となり, その一部が腸管から吸収されてシロネズミの成長に寄与しているが, 実際にどの程度成長に貢献しているのか, つまりこんにゃくマンナソの生体内利用度を知る目的で実験を行なった。すなわち, 飼料中の米でんぷんの半量をこんにゃく粉および寒天で置き換えてpair feeding法により飼育し { (終体重一消化管の重量) 一初体重} を真の体重増加量 (成長量) と考え, この値から生体内利用率を算出した。すなわち, 寒天群の成長量を0, でんぷん群のそれを100とすると, こんにゃく群のそれは44.7, つまり米でんぷん群の示す成長量の約45%の成長を示したことになる。換言すれば, 今回の実験条件ではこんにゃく粉炭水化物の約45%がシロネズミの真の成長のために利用されたといえる。
著者
古庄 律 石田 裕 鈴野 弘子 齊藤 守史 三成 由美 徳井 教孝 印南 敏
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維学会誌 (ISSN:13495437)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.15-22, 2007-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22

ウチワサボテンの一種であるOpuntia Streptacantha(OpS)より抽出した水溶性食物繊維(SDF)の食後血糖上昇抑制作用を調べるために,II 型糖尿病のモデルであるGKラットを用いてグルコース負荷試験を行った。また,CACO-2細胞を用いたグルコース透過試験を行い,生化学的な評価を行った。その結果,動物実験では2%OpS-SDFを投与した場合,顕著な食後血糖上昇抑制が認められ,いずれの血糖値測定時間においても対照群に比べ血糖値は有意に(P<0.05)低値を示した。CACO-2細胞を用いたグルコース透過試験では,0.1および0.2%OpS-SDF添加で対照に比較してグルコースの透過率は有意に(P<0.01)低下し,GKラットにおける血糖上昇抑制が小腸における糖の吸収阻害であることが推察された。次に,グルコースの拡散阻害への影響を調べたところ,0.2あるいは05%OpS-SDFの拡散阻害率は13.8%および35.8%で顕著なグルコースの拡散阻害が認められた。また,粘度計によりOpS-SDFの濃度の違いによる粘度を測定したところ2%OpS-SDFでは,純水に対して約3,000倍の粘度を示した。 これらの結果から,OpS-SDFの血糖上昇抑制は,OpS-SDFが小腸においてグルコースの拡散速度を低下させたことによるグルコース吸収遅延によるものと推察された。
著者
宮原 葉子 北原 詩子 金子 美帆子 三成 由美 徳井 教孝 印南 敏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.86, 2010

【目的】管理栄養士が特定健診・特定保健指導で栄養指導をする際には、個々人に対応した献立や調理品を提案し、行動変容につながる継続可能な指導をしなければならない。本研究では、長期食生活調査における食物繊維と食塩に寄与する調理品について検討した。<BR>【方法】1999年~2000年の夏季、冬季の各2週間、福岡県志免町在住の一般主婦28名を対象にした。調査内容は、食事評量記録法を用い、食事区分、献立名、食品名、可食量が記録されたものである。食事記録票の調理品は、三成らが開発した6桁の調理品コードを用いて入力し解析した。食品の栄養価計算はエクセル栄養君Ver.4.5を用いた。<BR>【結果】夏季、冬季の食事記録日数は総計784日、調理品出現回数は11,646回、全調理品数は1,110品であった。食物繊維摂取に寄与する上位2品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.4%、冬季8.8%、2位が飯で夏季4.2%、冬季4.0%であった。寄与率50%の夏季28品、冬季30品中共通のものは、味噌汁、飯など13品であった。夏季のみ、そうめん、冷やし中華などであり、冬季はみかん、鍋物であった。食塩摂取に寄与する上位1品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.1%、冬季は8.4%であった。寄与率50%の夏季32品、冬季36品中共通のものは、味噌汁、梅干しなど15品であった。夏季のみ、冷やし中華、冷奴などであり、冬季は漬け物、鍋物であった。<BR>【考察】食物繊維の寄与率の高い調理品は味噌汁、飯などであり、食塩の寄与率の高い調理品も味噌汁であった。飯を美味しく食べることのできる献立の提案、また味噌汁を減塩し、食物繊維を増やす方法の提案が今後の課題であると考えられた。
著者
印南 敏 和田 俊
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.7-15, 1995-04-05 (Released:2009-04-10)
参考文献数
47
被引用文献数
1
著者
黒田 圭一 小畠 義樹 久保田 美佳 西出 英一 印南 敏
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.291-299, 1985

2種類の魚油多価不飽和脂肪酸濃縮油を異なった投与法によりラットに与えたとき, 投与法の違いが各濃縮油の血清, 肝臓の各種脂質濃度に影響するかどうか検討した。ラットは成長期のSprague-Dawley系の雄を用いた。試験に用いた2種の多価不飽和脂肪酸濃縮油は, 純度66%エイコサペンタエン酸濃縮油 (EPAconc) と純度76%ドコサヘキサエン酸濃縮油 (DHAconc) であった。各濃縮油はラットに2週間投与した。濃縮油投与法は, 0.5%コレステロール (chol) を含む基礎飼料に各濃縮油を3%レベルで添加した飼料を摂取させる方法と, あらかじめ基礎飼料のみラットに摂取させ, 摂取飼料の3%相当の濃縮油を単独に胃内へ胃管で注入投与する方法の2種の方法を用いた。対照群には5%オリーブ油を投与した。各濃縮油を飼料に添加投与したとき, EPA-concは血清の中性脂肪 (TG) を抑制する作用がDHA-concやリノール酸より明らかに強かった。しかし血清, 肝臓, 心臓中のchol濃度に対しては上昇抑制作用が弱かった。一方DHAconcの血清TGの上昇抑制作用はほとんどみられなかった。胃管投与法では, EPAconc, DHAconcともに飼料への混合投与の場合と作用の傾向はよく似ていたが, EPAconcのTGに対する作用は強まり, cholに対する作用は逆に弱まった。血清PLは両投与法において同程度の低下を示した。血清と肝臓中の過酸化脂質 (TBA値) はEPAconcの飼料への添加投与では上昇したが, 胃管投与では上昇しなかった。DHAconcはどちらの投与法においても著しい上昇傾向を認めた。このように試料濃縮油の投与法の相違によりそれらの血清, 肝臓等の脂質への作用は一部異なった場合もあったが, 全般的にみて似たような傾向を示した。
著者
印南 敏秀
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

柳哲雄が10年ほど前から、「里山」という人と山の関わり方を参考に「里海」という新たな概念を提唱している。おもには沿岸海域を中心とする「里海」を「人手が加わることによって、生産性と生物多様性が高くなった海」と定義している(柳哲雄『瀬戸内海-里海学入門』瀬戸内海環境保全協会、2005など)。本研究では、瀬戸内海の沿岸海域でのフィールドワークから「里海」を「多様な文化が複合した文化多様性の海」と定義したい。(1)里海は漁民にとって海産資源が豊富で漁業や海苔養殖などが盛んだった。(2)里海は農民にとって海藻や海草が農地の肥料として大量に利用されていた。(3)里海は海辺の人にとっても海水浴や遊びの場として深く関わっていた。(4)里海は漁民文化と農民文化が交差して重なり、複合した文化多様性の海だった。高度成長期以降の開発などによって、漁業資源が減少し、生活文化との関わりも急速に失われつつある。里海は、人と沿岸海域のこれまでの長い歴史に学びながら、新たな関係を実現するための概念として重要である。