- 著者
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黒須 里美
- 出版者
- 日本人口学会
- 雑誌
- 人口学研究 (ISSN:03868311)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, pp.61-66, 2009-11-30 (Released:2017-09-12)
私たちのまわりには,今も昔も,さまざまな「危機」が存在している。金融危機,食物価格の変動,凶作,政変,戦争などによって生じる社会的,政治的,経済的変化,そして津波,洪水,台風,地震などの自然災害。このような多岐にわたる急激な変化には,ある程度予測可能なものもあれば,不可能なものもあり,それにたいする人々の人口学的行動も様々である。麗澤大学において2009年5月21〜23日に開催された国際人口学会(IUSSP)セミナーとそれに続く公開シンポジウムでは,多岐にわたる危機と人口学的動向の関係をめぐる,長期的・比較的視野に立った最新の研究成果が報告・議論された。新型インフルエンザに対する脅威が高まりはじめ,日本政府が海外からの感染を防ぐ水際対策に躍起になっていた5月である。シンポジウムにおいて「スペイン・インフルエンザ」の報告を全員がマスクをつけて聞くという想定のもと,その準備もされていたがそれは避けられた。しかし組織者の予想以上にタイムリーな研究テーマとなった。本稿ではIUSSPセミナーとシンポジウムについて,その経緯と内容を報告する。