著者
黒髪 恵 今辻 由香里 佐久間 良子 有田 久美 皿田 洋子
出版者
医学書院
雑誌
看護教育 (ISSN:00471895)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.831-836, 2007-09-25

はじめに 人間が「泣く」ことの意味は,心理学的には,感情の蓄積を浄化するために泣くカタルシス理論がある。また,相手の反応に対して行動で反応し欲求を満たすという行動理論と,過去の記憶によって同じような事象が起こると泣くという認知理論からも説明されている。つまり,人間にとって「泣く」ことは,情動表出の一つの行動であり,情緒安定のために必要な行動であるといえる。 看護学生は臨地実習中,「泣く」ことが多いように思える。指導者に聞くと,泣く場面には一貫性はなく,優しい言葉をかけても,厳しい言葉をかけても,挨拶をしただけでも「泣く」ことがあるということであった。学生は18歳以上であり,発達段階から考えても,安易に「泣く」ことは考えにくい。したがって,看護学生の「泣く」行動には,何か意味があるのではないかと考えられた。 看護学生の臨地実習中に「泣く」ことに関する過去の研究で,寺本1)は,学生が泣く意味は,患者?学生関係の悩み,学生自身の課題,臨床指導者の非教授活動であったと述べている。しかし,これは教育者を対象にした調査であり,看護学生が「泣く」に至る構造は明らかにされていない。 そこで今回,学生を対象にどのような場面で泣いているのか,学生が「泣く」ことの裏にどのような心理的構造が潜んでいるのかを調査することで,臨地実習での効果的な指導方法を得ることができると考えた。
著者
黒髪 恵
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.21-30, 2013-11-30

本研究の目的は,精神疾患を持つ人の生活の変化の実態と変化のきっかけとなった出来事を統合して退院後地域の中でどのように生活が変化してきたかを明らかにすることである.地域活動支援センターの利用者11名に半構造化面接を実施した.生活の変化のプロセスとして,退院直後は[エネルギーの消耗による活動の抑制]の生活を送るが,エネルギーが回復し主治医の後押しによって[規則正しい生活を試行する]何らかの要因によって生活が不規則になると[疲労・焦りと症状の悪化]し[活動をいったん停止してみる]生活になっていた.その後,[拠りどころのない生活から脱却したいという思いと周囲の後押し]や[自己コントロールできると感じる]ことで再び活動の場を得て[規則正しい生活を施行する]に戻っていた.さらに[過去の体験を意味付けする]や[自己価値を高めようとする]ことで[活動の変化と発展][活動を変化させずに維持する][今の活動をステップアップの途上と捉える]という生活になっていた.