著者
乾 康代 齊藤 充弘 中田 潤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1062-1069, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
18

わが国で今後増える原発立地地域における廃炉後の地域再生の課題を明らかにするために,ドイツのグライフスヴァルト原発の廃炉会社EWN社と地元自治体の地域再生の取り組みの成果をまとめた。1)利用できる原発施設と跡地は出来るだけ利用することを目標に,地元3自治体はEWN社と共同で,跡地の地区詳細計画を策定した。2)この計画に沿い,地元自治体は工業港を建設,跡地の一部を工場団地にし企業誘致をしている。3)原子炉解体と再利用整備,放射性廃棄物中間貯蔵施設,インフラ整備は,州政府,連邦政府およびEUの支援と財政措置によって実現された。4)一方で,敷地内の中間貯蔵施設では他原発の廃棄物受け入れがすすみ,地域の将来に不安の波紋を投げかける施設となっている。わが国を振り返ると,東海村の将来計画には,跡地利用計画と廃棄物貯蔵をどう位置づけるのかの記述はない。計画にこれらをどう位置づけるのか議論の積み重ねが求められる。
著者
齊藤 充弘 佐藤 凌真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.197-203, 2022-09-09 (Released:2022-09-09)
参考文献数
8

本研究は,若者の流出がより深刻である福島県いわき市を対象として,中高生のまちに対する意識と日常生活行動の実態を明らかにすることを目的とするものである。アンケート調査の実施と分析の結果,中高生は日常の買い物をする場や休憩をしたりボール遊びをしたりすることができる公園や運動施設などが身近に不足していると評価している。買い物については主要な拠点の中高生は自地区内で,周辺拠点の中高生は近隣の主要拠点で行動していること,遊びの主な行動先は都心拠点と広域拠点が中心となっており,高校生は公共交通機関が繋がる拠点のほうを利用していることがわかった。また,「ずっと住み続けたい」という評価は就業者と比較すると回答割合が低く,条件次第で住み続けたいという回答割合が高いため,不足していると評価する施設等の整備が居住地区内や公共交通機関でアクセスできる地区に必要である。さらに,「ずっと住み続けたい」という居住意向が高いほど「住みやすい」と評価しており,「住みやすい」というまちの評価が高いほど市内の施設を利用する傾向にあるため,地区単位での身近な生活環境整備を積み重ねていく必要がある。
著者
齊藤 充弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.505-512, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

本研究は,東日本大震災による原発事故の発生により原発立地地域からの避難者の受け入れ等に伴い,人口が増加した福島県いわき市を対象として,事業所数の変化を明らかにすることを目的とするものである。人口変化と同様に事業所総数が大震災後に増加に転じるなかで,産業大分類別にみると特に建設業や宿泊・飲食業が増加したことがわかった。このことを小地域単位でみると,第一種低層住居専用地域に指定される住宅地や国道6号をはじめとする幹線道路沿線に位置する既成市街地,さらには調整区域や都市計画区域外において,産業によっては増加を示す小地域があることがわかった。総数でみると,大字平と大字小名浜のいわき市内で都心拠点と広域拠点に位置づけられる地区の中心市街地を含む小地域において,増加と減少という対照的な変化が明らかとなった。人口は増加するものの日常生活に必要な小売業などの事業所数が減少しており,中心市街地を構成する街区内では低未利用地化の進行を確認することができた。両地域は,立地適正化計画の居住および都市機能を誘導する対象地域となることより,人口の変化と相補関係を構築した都市機能や住宅の誘導を図っていく必要がある。
著者
齊藤 充弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1395-1402, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究は,原発立地地域である福島県浜通り地域を対象として,原発事故前後の地域構造の特徴を明らかにすることを目的とする。そのうえで,原発事故からの復旧・復興の特徴と課題を提示しようとするものである。原発立地後からの地域構造の変化について,人口や事業所の集積にみる社会構造と道路体系や市街地の形成にみる空間構造より捉えて調査・分析した。社会構造をみると,人口増加や就業構造の変化など原発とその関連事業所の立地による影響を受けていることがわかった。また,そのことは面的な道路体系や市街地の形成・拡大みる空間構造にも影響していることがわかった。復興計画書を分析すると,事故前の地域構造を復旧・復興させるための取り組みと,事故後の復興にむけた新たな取り組みがあることがわかった。そのことは,農地・未利用地を宅地化して,住宅や工業・商業施設などの誘導を通して新たに市街地を整備する形となっている。復旧・復興が進む広野町の実態をみると,新たな場所に新たな人口を受け入れる形となっていることより,事故前の社会構造と空間構造をふまえて,新たな復興への取り組みによる地域構造の変化との関係を構築していくことが求められる。