著者
小島 朋子 石倉 作紀 椎木 孝道 齊藤 和快
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第24回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.P060, 2008 (Released:2008-12-09)

【はじめに】反張膝は膝前十字靭帯(以下ACL)損傷の危険因子の一つと報告されている。臨床経験上、反張膝例では膝伸展時の内側広筋の収縮が不十分であることが多数見られ、術後のリハビリ経過に難渋することがある。当院では、膝前十字靱帯再建術(以下ACLR)後膝蓋骨の上方移動を伴う内側広筋の収縮を重要視したsettingを積極的に指導している。今回、反張膝を呈するACLR例において、術後のリハビリ経過に難渋した例と、その経験をふまえて積極的なアプローチを行い順調な経過を経た症例を経験したので、考察を交えて報告する。なお対象症例の患者様に十分説明し同意を得た。【症例紹介および経過】<症例1>17歳女性。左ACL損傷・内側半月板損傷。バスケットボール試合中に非接触にて受傷。術前より反張膝(伸展15°)があり、settingが不十分であった。受傷後3ヵ月後ACLR施行した。術後10日の時点で当院setting評価基準setting2(収縮はあるが膝蓋骨の上方移動を伴わない)であった。内側広筋の収縮が不十分で立位・歩行時に膝の伸展は得られず、膝屈曲位にて日常動作となるため、徐々に伸展制限が出現した。また、膝蓋骨の可動性も低下し、anterior knee painを生じてしまった。術後13週でsettig4(抵抗に抗して膝蓋骨を上方移動することができるが最大抵抗には抗せない)となり、伸展は0°、疼痛・立位・歩行も改善しjoggingを開始したが、以降のPTプログラムに遅れがみられた。<症例2>16歳女性。左ACL損傷・内側半月板損傷。バスケットボール試合中に非接触にて受傷。術前より反張膝(伸展10°)があり、settingが不十分であった。受傷後2ヵ月後ACLR施行した。術後、内側広筋に対し、早期から積極的にアプローチを行った。その際、反張膝にならないよう膝関節0°ポジションで膝蓋骨を上方へ引き上げることを目的としたsettingを指導し、筋収縮を学習させた。同時に反対側の反張膝に対しても同様のアプローチを行った。術後8週までを重視し、settingの獲得を行った。術後9週でjoggingを開始、以降のPTプログラムに遅れはない。【考察】今回経験した反張膝のACL損傷例は両者とも術前からsettingにおける内側広筋の収縮が不良であったが、術後のアプローチによって術後経過に差が生じた。当院では術後、setting指導を重視している。膝伸展域での内側広筋の収縮獲得は立位・歩行時の膝の安定性につながり、その後のjogging・運動時の動作の安定性にも重要であると考える。したがって、術前から内側広筋の収縮が不十分である反張膝例では早期に確実なsettingの獲得が望まれる。反張膝例では術後膝過伸展位で獲得することが多いが、正しい肢位でのsettingを指導し、学習させることで、術後の理学療法を良好に進めることができるのではないかと考える。
著者
齊藤 和快 安斎 健太郎 岡林 務 今城 栄祐 五十子 圭佑 竹内 真太 西田 裕介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.33-39, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1

〔目的〕JリーグのDivision 2に所属するサッカーチームで発生した傷害(外傷と障害)の実態を調査し,その結果を傷害予防の一助とすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は2017年から2018年に所属した選手57名で,傷害発生率,受傷状況,傷害のタイプ,受傷部位,重症度を調査した.〔結果〕2シーズンの傷害発生件数は83件であった.練習中の傷害発生率は3.1/1000 phで試合中は10.8/1000 phであった.下肢の傷害が全体の92.8%で,最も多い傷害部位は大腿部であり,筋損傷が多かった.競技復帰までの日数はsevere(29日以上)が最も多かった.〔結語〕サッカー競技において下肢の傷害予防は必須であり,特に選手特性に応じた個別の予防プログラムを確立するだけでなく,競技復帰までの基準を明確化する必要性が示唆された.