著者
齊藤 彩 松本 聡子 菅原 ますみ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.74-85, 2016-07-01 (Released:2016-06-04)
参考文献数
48
被引用文献数
4 2

本研究は,児童期後期の子どもの不注意,多動性・衝動性を含む注意欠陥/多動傾向が,母親ならびに父親の養育要因,自尊感情を媒介して抑うつへと関連するかどうかを検討することを目的として実施された。210世帯の子ども(小学校5年生)とその母親,父親を対象に質問紙調査を行い,母親の評定により子どもの注意欠陥/多動傾向,両親の評定により養育のあたたかさと親子間の葛藤,子どもの自己評定により自尊感情,抑うつを測定した。母親については,注意欠陥/多動傾向と養育のあたたかさ,母子間の葛藤との関連が見られ,さらに養育のあたたかさは自尊感情を媒介して抑うつへと関連を示した。一方,父親については,注意欠陥/多動傾向と養育のあたたかさ,父子間の葛藤との関連は見られたものの,養育要因から自尊感情への関連は見られず,注意欠陥/多動傾向が直接自尊感情を媒介して抑うつへと関連することが示された。
著者
齊藤 彩 松本 聡子 菅原 ますみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.237-249, 2020-09-30 (Released:2021-02-18)
参考文献数
71
被引用文献数
5 6

本研究は,思春期の子どもの注意欠如・多動傾向と後の不安・抑うつとの縦断的関連に着目し,小学5年時の注意欠如・多動傾向の高さが学校要因および家庭要因を媒介して小学6年時の自尊感情の低さに関連し,さらに中学1年時の不安・抑うつの高さへと関連するメカニズムについて検討を行った。分析には,縦断質問紙調査により得られた201家庭の子どもとその母親のデータ(対象児が小学5年時,小学6年時,中学1年時の3回の縦断データ)を使用した。母親の評定により子どもの注意欠如・多動傾向,母親の養育のあたたかさ,子どもの不安・抑うつを測定し,子ども本人の自己評定により学校ライフイベントと自尊感情を測定した。パス解析の結果,小学5年時の注意欠如・多動傾向の高さは,学校でのポジティブイベントの少なさ,学校でのネガティブイベントの多さ,母親のあたたかな養育の少なさのすべての要因へと関連を示し,そのうち学校でのポジティブイベントの少なさおよびネガティブイベントの多さが,小学6年時の自尊感情の低さを媒介して中学1年時の不安・抑うつの高さへと関連することが明らかとなった。
著者
齊藤 彩
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.217-227, 2015
被引用文献数
5

思春期の子どもにおける不注意および多動性・衝動性に関する行動傾向が引き起こす二次的な内在化問題の存在が指摘されてきているものの, その発現メカニズムや具体的な関連要因についての十分な実証研究は行われていない。本研究は, 通常学級に在籍する中学生を対象とし, 不注意および多動性・衝動性から成る注意欠陥/多動傾向が学校ライフイベント, 自尊感情を媒介して内在化問題と関連するかどうかを検討することを目的として行われた。中学生826名と学級担任教員22名を対象に質問紙調査を実施し, 教員評定により生徒の不注意および多動性・衝動性を測定し, 生徒の自己評定により学業と友人関係に関するライフイベントの経験頻度, 自尊感情, 内在化問題を測定した。不注意, 多動性・衝動性, 注意欠陥/多動傾向の各変数と内在化問題との間には有意な正の相関関係が確認されたが, パス解析の結果, 注意欠陥/多動傾向から内在化問題への直接の有意なパスは見られず, 注意欠陥/多動傾向は, 学業ならびに友人関係の両イベント, 自尊感情を媒介して内在化問題へと関連することが明らかとなった。