著者
齋藤 康一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.614-630, 2014-05-20 (Released:2014-06-20)
参考文献数
146
被引用文献数
7

頭頸部におけるヒト乳頭腫ウイルス (HPV) 感染に関連した疾患の中で, 喉頭乳頭腫は, 特に再発性・多発性の強い, 喉頭気管乳頭腫症 (recurrent respiratory papillomatosis: RRP) と称される症例では手術も多数回におよび, 治療に難渋し, 医師・患者・家族を大いに悩ませる疾患の一つとなっている. 個々の喉頭乳頭腫で経過がまちまちであることも, 事態を複雑化させている. 本疾患は, 100以上の遺伝子型があるHPVの中でも良性型に分類される6型と11型が主としてその発症に関与しているが, その感染源に関しては種々の可能性が報告されている. 小児発症症例と成人発症症例での臨床経過の違いを含め, 疾患の臨床動態に影響する種々の背景因子に関しては, 慢性のHPV感染症という観点からも, 基礎知識として整理し, 把握しておく必要がある. 診断は, 病理組織学的診断によるが, 病変の広がりの詳細な診断には, 特殊光を用いた内視鏡での観察も有効である. 疾患を取り扱うに際しては, 経過中に悪性転化を来す可能性, 腫瘤の好発部位, さらには気管切開に関する考え方も知っておくことが要求される. 決して頻度が高いとはいえない orphan disease であることもあり, 絶対的な治療方法の開発が進まない現状において, 治療の基本は外科的切除であり, 再発・多発症例では補助療法を併用することとなる. 本稿では, 喉頭乳頭腫に関する疫学からHPV感染症としての背景, 診断のコツや疾患とかかわる中での注意点をまとめた. さらに, 外科的治療の基本的な考え方や種々の手技の特徴, 補助療法に関するこれまでの試みと今後の展望まで含めて, 欧米の報告を中心に概説する. さらに, 2006年6月以来, 60症例以上の喉頭乳頭腫の患者にかかわってきた経験をもとに, われわれが現時点で施行可能かつ有効と考え, 実践している, 診断・治療のポイントを挙げる.
著者
齋藤 康一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.12, pp.1342-1343, 2013-12-20 (Released:2014-02-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
齋藤 康一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.68-69, 2016-01-20 (Released:2016-02-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
加藤 泰奈 茂呂 順久 宮本 真 齋藤 康一郎
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.39-43, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
17

歯性感染症が原因で深頸部膿瘍を形成した症例は多数報告されているが,側頭部に膿瘍を形成する症例はまれである.今回我々は下顎の歯周炎が原因で側頭窩および側頭下窩に膿瘍を形成した1症例を経験したので,その治療と臨床経過について報告する.症例は63歳女性で,左側頭部痛,開口時痛,開口障害を主訴に当科を紹介受診となった.造影CTにて左側頭部に膿瘍形成を認め,同日左側頭部に皮膚切開を加えて外科的ドレナージを行い,抗菌薬による加療を行った.膿瘍の治療として適切な切開排膿が重要であるが,今回側頭部の皮膚切開を工夫することで全ての膿瘍腔を開放できたことが早期治療につながったと考える.
著者
齋藤 康一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.614-630, 2014
被引用文献数
7

頭頸部におけるヒト乳頭腫ウイルス (HPV) 感染に関連した疾患の中で, 喉頭乳頭腫は, 特に再発性・多発性の強い, 喉頭気管乳頭腫症 (recurrent respiratory papillomatosis: RRP) と称される症例では手術も多数回におよび, 治療に難渋し, 医師・患者・家族を大いに悩ませる疾患の一つとなっている. 個々の喉頭乳頭腫で経過がまちまちであることも, 事態を複雑化させている. 本疾患は, 100以上の遺伝子型があるHPVの中でも良性型に分類される6型と11型が主としてその発症に関与しているが, その感染源に関しては種々の可能性が報告されている. 小児発症症例と成人発症症例での臨床経過の違いを含め, 疾患の臨床動態に影響する種々の背景因子に関しては, 慢性のHPV感染症という観点からも, 基礎知識として整理し, 把握しておく必要がある. 診断は, 病理組織学的診断によるが, 病変の広がりの詳細な診断には, 特殊光を用いた内視鏡での観察も有効である. 疾患を取り扱うに際しては, 経過中に悪性転化を来す可能性, 腫瘤の好発部位, さらには気管切開に関する考え方も知っておくことが要求される. 決して頻度が高いとはいえない orphan disease であることもあり, 絶対的な治療方法の開発が進まない現状において, 治療の基本は外科的切除であり, 再発・多発症例では補助療法を併用することとなる.<br> 本稿では, 喉頭乳頭腫に関する疫学からHPV感染症としての背景, 診断のコツや疾患とかかわる中での注意点をまとめた. さらに, 外科的治療の基本的な考え方や種々の手技の特徴, 補助療法に関するこれまでの試みと今後の展望まで含めて, 欧米の報告を中心に概説する. さらに, 2006年6月以来, 60症例以上の喉頭乳頭腫の患者にかかわってきた経験をもとに, われわれが現時点で施行可能かつ有効と考え, 実践している, 診断・治療のポイントを挙げる.
著者
宮本 真 齋藤 康一郎
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.223-228, 2018 (Released:2019-04-05)
参考文献数
24

咳,嗄声,喘鳴といった上下気道の症状は,われわれ耳鼻咽喉科医が小児の患者を診察する際にしばしば経験する症状である。そのほとんどが鼻咽喉頭領域の感染症に関連した症状であるが,年齢により疾患も大きく変化するため患児の年齢にも注意が必要である。さらに身長や体重が大きくなる発育や知能や運動能力など機能が成長する発達を考慮しながら診断・治療にあたる必要がある。小児喉頭において,声門上の組織が脆弱なため吸気時に引き込まれやすいといった特徴があるため,吸気性の喘鳴の原因として喉頭軟弱症(喉頭軟化症)がもっとも多い。喉頭軟弱症のほとんどは2歳までに軽快するが,チアノーゼを伴うような呼吸障害や発育障害など重度の合併症があれば,Supraglottoplasty(声門上形成術)など外科的治療が必要となってくるため,そのタイミングの見極めが重要となってくる。