- 著者
-
齋藤 桃
岡田 洋右
鳥本 桂一
田中 良哉
- 出版者
- 学校法人 産業医科大学
- 雑誌
- Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.3, pp.301-306, 2022-09-01 (Released:2022-09-09)
- 参考文献数
- 14
症例は40歳女性.食後に生じる低血糖症状を主訴に当科紹介受診した.75g経口ブドウ糖負荷試験では,1時間後血糖245 mg/dl,2時間後血糖196 mg/dlであり耐糖能異常と診断した.しかし,6時間後血糖はインスリン遅延過剰分泌に伴い46 mg/dlと低血糖を呈しており,反応性低血糖と診断した.単純糖質を避けるなどの食事指導を行うとともに耐糖能異常・反応性低血糖に対してボグリボース0.6 mgの内服を開始した.低血糖症状の頻度は一旦減少していたが,徐々に低血糖頻度が再度増加した.詳細な問診により月経2-3日前に低血糖の頻度が多いことが判明したため,月経前後の血糖変動を確認するためFlash Glucose Monitoring(FGM)を装着した.FGMでは月経3日前より食後血糖の増悪とともに,反応性低血糖の出現を認め,一方月経4日後には食後高血糖は改善し,反応性低血糖も消失したことを確認した.月経前にはボグリボースの飲み忘れがないように服薬指導を行うとともに,月経数日前には昼食後の補食をするように指導を行い,低血糖出現頻度は減少した.これまで本例のように月経前に増悪する反応性低血糖症をFGMで評価し得た報告はない.反応性低血糖の診断や病勢評価,治療において,月経周期の血糖への影響についても考慮する必要がある.